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読書感想:エリート (MF文庫J)   著 三月みどり

【壁にぶつかり忘れかけた想いを、もう一度、取り戻そう】



【あらすじ】
『グッバイ宣言』に繋がる、優等生な青春の1ページがここに!


あたし、綾瀬咲は真面目だった。

小さい頃からママの言うことをきちんと聞いて、練習も一生懸命にして、みんなが演技を褒めてくれた。

勉強も頑張って、誰もが認める“優等生”になることができた。


あたしはもっともっと上手くなって大人になったら大女優になるの!

そんな夢も絶対に叶うと思っていた。

でも、“優等生”な演技で面白みに欠けると言われ、子役としての仕事は段々と少なくなっていった。

ファンレターを励みに諦めずに努力を続けていたけど――。

七瀬レナの演技を見て分かってしまった。あぁ、これが“天才”なんだって。

悩めるエリートがもう一度前を向くための青春が始まる!

Amazon引用

真面目な演技を続けた少女がもう一人の天才と出逢う物語。


芸能界は、純粋に才能を数値化する事は出来ず、人気という不透明なパロメーターに左右されがちである。
小さい頃から、親の言いつけを守り、大人に認められようと真面目に型にはまった演技を続けてきた咲。
しかし、歳を減るごとにそんな咲の演技に魅力を感じる人が少なくなる。
苦悩と葛藤の中、数少ない応援を頼りに、もう一人の天才、レナと出逢う。
彼女と切磋琢磨する中で、立ち塞がった壁を乗り越えて。

さらには、心の傷となる悔いや後悔、越えられない壁などを分かち合っていく。

人生は苦しむ為にあるのではない。
人生は好きな事を楽しむ為にあるのだと信じて。

天才子役として持て囃されながらも、成長と共に才能の壁にぶち当たり、優等生として生きる事を選ばざるを得なかった彼女の葛藤の苦悩と痛み。

刺々しくて誤解されやすい性格も己の夢に真剣に向き合ってきた故の物で。
思いもよらない人からの励ましによって本当に自分がやりたいことを見つけながら、ブレない自分の軸を確立していく。
周りになかなか評価されなくても、他人に理解されなかろうが、ひたむきに自分の信じた物に向けて努力し続ける姿は、やがて苦悩に打ち沈む者達の生きた希望の光となる。

諦める事なく、弛まぬ努力を続けた果てに待つ歓喜の結実。
しかし、皮肉にも、そんな咲の大女優への夢を絶ったのはレナの演技。
圧倒的な才能を前に心折れる咲。
しかし、今まで歩いてきた足跡に助けられる。
子役時代からのファン、幼馴染、マネージャーといった周りの声援や想いが、再び立ち上がる為の活力を与える。

彼女のストイックに稽古に打ち込む姿やオーディションで辛辣なコメントを言われてもへこたれないメンタルの強さは、それでこそ養われる。

世間の荒波に揉まれ、心無い誹謗中傷に晒されて、いつの間にか、見失いかけていた本当に大切な物を再び見出してゆく。
諦めかけていた夢である、女優の夢を取り戻す。

夕凪のオーディションでの七瀬との出会い。
文化祭での裏側の一幕。
ファンの熱のこもった応援。

けして、一人だけでは辿り着く事が出来なかった境地。
大人や母親の操り人形としてしか生きる事が出来なかった自分の本当にやりたかった事。
大きな挫折を経験したからこそ、その痛みや経験を演技として還元できる。
見る者を魅了して引き込んでいく演技の深みと説得力が醸し出される。

何度でも諦めない咲と才能を見せつけるレナ。
対照的な二人だからこそ、光と影のように、お互いがなくてはならない存在となり、それぞれの壁にぶち当たった時に背中を後押ししてくれるような拠り所となる。

違うからこそ、惹かれ合う物があり、リスペクト出来る部分を見出す事が出来た彼女達。

夢はいつだって、自分達を待っている。
夢から逃げ出すのはいつだって自分自身。
夢を夢のままで終わらせはしない。
いつか、本物に叶えてみせる。

そんな決意と覚悟の元で、目も眩むような輝きを放つ青春を追いかけていく。


再起と情熱をかけて、もう一度チャンスを掴むのだ。











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