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男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 3. じゃあ、ずっとアタシだけ見てくれる? (電撃文庫) 著 七菜 なな

【未来の夢と今の恋、どちらの為にこの身を捧げよう?】


【あらすじ】
かつて永遠の友情を誓ったある男女が、それぞれ自分の本当の気持ちに向き合った結果――夢か恋か、究極の二択に突き当たり悶え苦しむ……!!

「そういえばゆーくん、そういう面倒くさいこと言い出すタイプだったね……」

凛音にじとーっとした目を向けられながら、近づく夏休みに浮かれる気分を隠せない悠宇と日葵、だったのだが――。

「“ずっと離れない”なんてエゴだよ~?」

あの雲雀ですら恐れる榎本家長女・紅葉の帰省によって、二人の運命の夏が幕を開ける。

「未来の夢と、今の恋……アタシたち、どっちのために生きるべきなのかな?」

果たして恋の罪を犯した日葵は〈永遠の運命共同体(しんゆう)〉にサヨナラなるか?

Amazon引用


登場人物紹介

紅葉の到来で悠宇達に試練が訪れる物語。


現実を生きていく中で、ある種の命題である未来の夢と今の恋。
いつまでも、この温もりに満ちた時間が続く筈は無く、究極の二択を迫られる。
紅葉の帰省によって、日葵を東京に連れて行く合否を、悠宇のアクセ作りの勝敗で決める。
二人の選択と情熱が試される中で、運命共同体として歩む事を決意する。
どちらかを切り捨てるのでは無く、どちらも大切に未来に持っていく為にこの身を捧げる。
花はいつか枯れ、永遠など存在しなくとも。

運命共同体という名の親友である悠宇と日葵である訳であるが、その想いは果たして本当に隠せるのか、隠し通せるのか。
ずっと離れない、なんて本当にできるのか。
彼女の人生も、彼の人生も、極論してしまえばそれぞれの物である。
そんな物を交わらせずして、本当にこのまま並び立っていけるのか。
まだまだ揺らぐ、もっと揺らぐ二人の関係。
その第一ラウンドが終了していき、大人の横槍が彼等の決して強くない等身大の心を揺さぶってくる。

過去に投げられたその問いかけに対し返した約束、それは悠宇の心の中に今もずっとある物で。
だがしかし、中学生であればまだ友情で済んだかもしれないその気持ちは、大きくなるほどに変質していく。
変わらぬ想いなんて本当は無い、と言わんばかりに。
更に彼等の関係を揺らす影がまた一つ。
その名は紅葉。
東京で人気モデルを務める女性であり、日葵を東京へ連れに行こうとやってきた「大人」である。

しかし、夏の思い出を探し凛音も共に色々と奔走する中、日葵の想いは更に大きくなり、暴発の時を迎えていく。 

親友であろうとした、 運命共同体であろうとした。
だが、自分の心はそう簡単に騙せるものじゃない。大人であればつける嘘は、子供には簡単につけるものじゃない。

親友の証を外し、踏み出したその一歩。
けれど皮肉な事に、その一歩は悠宇の心を揺らし決壊させ、最悪の結果を招く事になってしまう。

容赦なく下される判定を覆せる材料も、反論する力もなく。
決まってしまう勝負、離ればなれになりそうになる二人。

だけど、いくら隠そうとしても心に嘘はつけない。例え、この恋が罪だとしても。
多くの人を傷つけるだけだとしても。
手放したくない執着がある。

だからこそ、今は心をさらけ出して強欲に。
若者の特権、それは全てを賭けて何でもできる事。大人の思惑なんか関係ない、自身と言う駒を動かせるのは自分だけ。
故に踏み出し、否定を告げる。
頼れる兄の後押しを背に、己の意志を。

新しく結ばれたその関係、名付けるならばなんとつけよう。運命共同体と言う名の共犯者。
恋人よりも深い関係で繋がった二人の関係は、しかし恋の色をしていない。

大人としての含蓄ある言葉に揺らぐ心。
だが黙って日葵を連れていかれる訳にはいかない。
紅葉の提案による、「夏の思い出」という題材の本気のアクセサリー勝負。

彼女との日葵を賭けたアクセサリー勝負。
そして「親友」「恋」「将来」「クリエイター」といった要素が一緒くたになり、フィナーレへとストーリーを突き動かす。

その中で紅葉を通じて、悠は自分のクリエイターとしての欠点を指摘され、日葵も自分を見つめ直すきっかけになり、その間隙をついて凛音が仕掛けるという予想外の出来事もあった。

夢と恋、どちらを選んでも正解であって。
凛音の姉・紅葉の到来により、悠宇と日葵の"友情"はその永遠の命題を迫られる事となる。
恋に囚われて情熱が霞んでしまう。
あの頃の夢にこだわって嘘をついてしまう。
二兎追う者は一兎も得ず、とは恋も欲しくなった二人によく当てはまる。
何度も諭されて発破かけられて。
そして助けられて、二人は未熟な一面を色濃く見せた。
夢を見直して、不滅の想いを打ち明けたことは進歩だが、それらに対する二人のこれからこそが肝要だ。
どう転んでも運命共同体を貫くなら、そのままで全部叶えてしまう未来を期待してしまう。

紅葉との勝負の過程で悠宇が自分のアクセ作りの夢に真剣に向き合っていないことを姉に見透かされたシーンは心に響く物があった。

未来の夢と今の恋。
天秤にかけられた重大な選択肢に揺れ動いていく。将来設計はやはり大切かもしれない。
目的地がなければ人はどこにも行けないのだから。けれど、若き日に目指した場所に固執しては取りこぼしてしまうものがあるという事。
過去に交わした約束、未来に掴む夢。
それでも一番大事なのは、今だから。

未来か今か、恋か夢か。
プリズムのように視点に依って見え方が変わる大切な物に、悠宇は答えを出せるのか?

恋の残骸の上、夢の花を咲かせることは本当に正しいのか。
果たして、秋の空のように心は移り変わっていく中、二人は変わらずにいられるのか。

未来と恋、避けられぬ選択の中で、二人にとってのハッピーエンドを掴めるのだろうか?





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