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地域のDMOが抱えるデータ利活用の現状

これまで現広域連携DMOの職員として、訪日旅行におけるタビマエ~タビナカでのエリア内のコンテンツとそのアクセス手法(回り方)、予約導線をプランニングサービスという形で提供するとともに、地域のDMOや行政に対してデータ利活用環境の整備や訪日インバウンドの動向データ分析サービス等を行ってきました。
 
ここでは、これまでの経験を踏まえ、地域のDMOにとって必要なデータ利活用の現状と課題、対策について論じたいと思います。
 
現在、経産省のDX補助支援も受け、管轄するエリア内にある12の地域連携DMO(主に都道府県域のDMO)に関して、データ活用のためのBIツールの整備、およびそれらを利活用しながら、それぞれの課題認識に合わせた知見・ノウハウに関して、OJTを行い、地域のDMO職員のインプットを進めています。
その活動を通し、DMO組織の中で主に3段階のフェーズがあることが見えてきました。
 

中央日本観光データプラットフォーム

見えてきたデータ利活用フェーズの段階


①  組織としてデータ起点の取り組みの文化や知見がなく、適切なターゲット設定ができてないフェーズ
②  ターゲティングなど、戦略レベルだけデータ起点となっているが、戦術・施策の実行についてのPDCAは回わせていないフェーズ
③  戦略・戦術ともにデータ起点で駆動しているが、施策レベルでなんらかの観光振興上の課題や事業の継続性の観点から課題が見られるフェーズ
 
①については、DMOであることから形成計画などを作成しているが、ターゲットや戦略の方向性は過去からの踏襲となっており、マーケティング自体が形骸化してしまっている状態です。CMOも本来の役割を果たせていないと言わざる得ない状況になっており、組織体制自体の見直しが必要になっていると感じます。現在、このフェーズの団体には、CMOと事業の実務者に既存の統計データから、地域特性の把握、中長期の変化、ターゲットセグメント分類を行い、また、旅行者の訪問動機の調査等の支援やデータから見られるエリアとしての課題を抽出する支援を行っています。
 
②については、戦略の方向性として、重点ターゲット等はデータを起点として決められているが、戦術レベルでのターゲットのカスタマージャーニーの細分化や施策レベルでの実施する事業の選定と実施後の効果検証ができていない状態です。旅行者がそのエリアを来訪するインサイト(潜在的な動機)はもちろんのこと、タビナカの顧客動向の詳細が把握できていないことで、来訪を阻害するボトルネックが分析できていません。そのため、現在、このフェーズの団体には、カスタマージャーニーの整理とジャーニー上の各段階での数値化、タビナカでの動態の正確な把握を進めています。
 
③については、データドリブンをしっかり理解し、個別施策に至るまで、データ起点での取り組みが進んでいます。カスタマージャーニーの整理や来訪上のボトルネックも概ね分析が進んでおり、やるべき課題が明確になっています。しかし、一方で、多くは優秀なマーケター/CMO等属人の知見に依存しているケースが多く、CMOが交代した際に、ナレッジの継承が課題になってくると推察します。また、仮にボトルネックが、
「旅行者が来訪する動機が弱い=より魅力的なコンテンツ造成が必要」
となる場合、具体的なコンテンツを生み出していくような地域の事業者が存在しない、ないしは、熱意のある若手や担い手が不足しているという問題も散見されています。
 

DMO登録制度の設立から、約8年。その間、パンデミックも重なり、観光振興が一度立ち止まりました。しかし、ほぼ収束しつつある中、今後の国内における観光振興を進める上で、地域のDMOに求められる期待値は高くなります。
人口減少の歯止めはかからず、過疎的な地域の労働生産人口減少に伴い、地域経済は、破綻を余儀なくされる中、唯一の光は、過疎的な地域こそ、地域のオリジナリティが眠っていることです。この眠れる資源を有効活用し、誘客に結び付け、地域経済に潤いを与えられるのは、地域を立て直したいと考える地域の担い手であり、地域のDMOであると思います。
 
ここで論じた地域連携DMO(主に県域DMO)は一般的な地域DMO(市町村DMO)より、財源が豊かであり、組織体制の見直しや戦略策定の見直しは比較的容易であると考えています。今回、10を超える地域連携DMO(主に県域DMO)での支援を通して、大小さまざまな組織課題、地域課題に相対していますが、マーケティングのアプローチ手法は画一的ではないものの、押さえていくべきポイントや観点には、ある程度の「型」があると感じています。それは、データを適切に収集し、現状を正確に把握し、課題を抽出して対処していく。あるいは、仮説を立て、誘客に資する取り組みを試行し、検証しながら改善策を講じていくことです。
 
漏れ聞こえる先鋭的な欧米のDMOに比べ、国内のDMOはまだまだ発展途上ではあありますが、パンデミックを経て、取り組みを振り返る時間があったことで、本質的な取り組みに向き合うDMOも増えてきていると感じます。昨今、世界的に見れば、日本の観光資源には羨望のまなざしが注がれています。まさにDMO起点での日本の観光躍進の機会を迎えています。





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