シャケおにぎりの人

2014年8月5日
職場のお向かいの不動産屋さんのおばちゃんTさん。
うちの事務所が大好きなようで、
1日5回くらい遊びにきます。
毎朝の(うちらの)出欠確認、
お昼にお弁当を持って、
3時のおやつに、
不動産商談に出かける前に、
鉛筆削り機を借りに、
万札を両替に、
美味しいお菓子をお裾分けに、
美味しくないお菓子を押し付けに、
夕方暇にな時に、
ひとり淋しくなった時に、
パソコンの操作が分からない時に、
「お腹痛いんだけどあたし癌かしら…」と呟きに、
「あなたガリガリじゃないの!もっと食べなさい!」とシャケおにぎり届けに、
「もう帰るわよ〜」と帰宅の報告に、
と、何はともあれ、頻繁にうちの事務所に通う。
ニューヨークに住んでたこともあり、
言いたいことは歯に衣着せず、
裏表なく何でも言うタイプ。
そんなTさんでも、私たち障害者には、
最初の頃はずいぶん遠慮してたらしい。
何を、どんな風に声かけすればいいか、分からなかったみたい。
でも、うちらも負けじと言いたいこと言いまくって、
「遠慮は要らねーぜ」って態度を前面に出してたら、今のような状況に(笑)
そんなTさん、
今日、ひとり事務所で残業してたら、
「あら!ひとりなの!?」と入ってきて、
しばらく何気ない世間話。
その内、弘法大師と話ができる人がいる、あの人は選ばれた人なのよ、
みたいな話に。
Tさんは、宗教的な、信仰的な話が大好きなのだ。
無宗教にも関わらずだ。
すると、ふと、
「あなたも、選ばれた人なのね…。」
と呟くではないか。
「…?え…?えぇ? なんですか??」
「あなたは、そうやって、あなたにしかできない仕事をやってる訳でしょ」
「いや…別に…。
私が死んだら、それなりに誰かが私のやってることを引き継ぐでしょ…(笑)」
「ダメなのよ…。違うのよ…。
あなたは身体は不自由でも、成し遂げるでしょ。
あなたじゃなきゃできないことなのよ。
私は、身体は動けても、不自由なのよ。
そういう人が、いっぱいいるのよ…。」
この会話はそれきりで、
「またおにぎり作ってくるわね。
シャケでいいの?」
と、帰っていきました。
Tさんが何を言いたかったのかはよく分からなかったけど、何となく、お互いの間の障害というものを超えた気がして、うれしい気分になりました。

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