幽霊になったら見えた

霊感があるとばかり、昔は思えた。けれどいつからか幽霊たちに顔はなく、もしかするとこれは、私の妄想だったのか?

あるときから、見え方が変わる。
ままあることだ。

でも受け入れがたいものだった。

(霊感少女でいさせてよ。そうじゃなきゃ今までのあたしがバカになるだろ。前提を今さら覆すだなんて……)

誰でもいいから、なんにでもいいから、文句を言いたくなる。
なのに、これは1人しか知らない世界での話だ。

まだ、幽霊が見える霊感少女であれば、外部との繋がりもあるのに。
妄想の少女なら、内部のみの話になる。
今までの私の苦痛はたんに私がおかしかったから、それだけの話になってしまう。

そんなの、認めない。
認められない!

だから、答えた。

「いいです。わかりました! 除霊もできると思います、だってアナタの後ろにいるやつら、はっきり見えますもの」

大嘘だ。いや、ううん、ウソじゃない。ウソにさせない。

(騙し切ることができれば……)

詐欺師になったとしても、アタシは、アタシのまま、アタシでいることができる。

アタシは、霊感のある、霊能力だ。
ウソなんてない。認めないかぎり、ウソになんてならない。ウソになんてしない。

ただ問題は、本当に『みえる』世界がどんな恐ろしいものか、知らなかったことだ。
人魚姫が陸にあがりさえすれば王子様と結ばれる、そんなふうにおそろしく軽く、世界を見ていたこと。矮小な目線。

知らなすぎることって、死すらをも招く、罪であること。
アタシはそれを知らなかった。

死んでみて、わかる、ことだ。
今みたいにね。
今みたいに。

アタシは、思い出のなかの幽霊になった。


END.

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