まだ日曜日だったわ(神うっかり)

「まだ終わるには早いです」

使徒のうさぎがそう告げた。主たる白装束の黒影は、くすの葉を手にしたきり、それからしばし動かない。

うさぎは追撃を緩めなかった。伊達に神に仕える身上ではない。

「西暦でいうところの日曜日。まだ月曜日ではありません。あちらの神は7日後と約束したでしょう。まさか、またお忘れになってました? トシですかね」

「うさぎ、火を焚べるぞ」

「ははは。神なるブラックジョーク。あまり面白くないです」

うさぎが原初の火を運んだと、そんな神話もある。まさに使徒と神との神話ジョーク。あたりには冷え切った空気が空虚にただよった。

くすの葉を黒影の神が取り上げる。さて、と仕切り直しを合図した。

「おや。日本、終わらせてしまう? 同じ星のソラになったらすると約束が」

「ちがう。私は今から踊る。葉っぱがあるし」

少し、間をはさみ、うさぎは応えた。
なるほど。

それから、神様はくすの葉を手によいしょよいしょあソーレそれそれっ、掛け声とともに飛び跳ねて葉を揺すらせた。神の恵みたる雨がやさしく地上に降ることだろう。

「ふぅーん。いじわるなお人好しなんですから。だから日本人にニホンの神は易しいなんて舐められるのです」

「私は親しまれてるんだよ!」

「まさか、他の神との約束、破る気じゃないですよね?」
「さぁな。知らん知らん」

神様はくすの葉を鳴らして踊る。うさぎは、喉のなかでため息をして、そして主を密かに誇りに思った。

うちのカミサマが、西洋のなんたらどもの言うなりなんて、うさぎは信じていませんよ。

そう、思った。
葉がこすれてシャリシャリと鳴っている。


END.

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