雷☆☇☆カウントダウン

天罰を落とそうと思われた。雷さま、雷神さまは。

100年も前には実に簡単、ニンゲンを蒸発させるなど容易いことだった。チリも残さず、痕跡も残さず、焼け焦げた大地だけを真っ黒く染め上げて、泡と化した人魚姫が如くニンゲンはすんつと消えるのだ。

ところが、ニンゲン、避雷針なるものを発明した。雷の被害を避けるため。

天罰なんですけど??

雷神はそれはもうご不満なのだった。雷を思い通りに操れない、ニンゲンに支配されちゃったカワイソウな神、なんて、親(神)族たちに同情されるありさまだ。

雷神は非常に遺憾であった。
天罰を避けるとは小賢しい。気まぐれを回避するなんて生意気な。八つ当たりも受けられないのか、軟弱もの!

近年、雷は落ちにくくなり、代わりに雷雲がゴロゴロしてどす黒い雲のなかでだけピカピカドカンとするようになった。近年の雷は落ちない。落ちる場所、ニンゲンが落とさせまいと、落とせる場所をとかく無くした結果。雷神さまはお怒りになって雲のなかで雷の龍を行ったり来たりさせるのだ。

ゴロゴロドカン、ビカビカ。

落とせない雷は、暗雲を内側から照らす。ニンゲンたちはそれを写真におさめてSNSなる電脳のそれを流布させる。雷さまはお怒りがますますつのる。

『大雷、八雲、伊勢、出雲、八百万の父にして母にして兄弟姉妹たち。この星すべてを雷にて溶かしてよいか!!』

『うーん。まだちょっと早い……それにニンゲンだけにするんだろう? どうやってニンゲンだけに当てるのさ』

『彼奴らはヒライシンなるものを創りました。我も、命中させる、ニンゲンだけに命中させる、目印となる印を新生児どもに植えつけましょう。姉妹よ、手伝ってくれ』

『はぁい』
『ほぉい』
『へーい』なんてざわざわ、する。神々たちの複数がため息を吐いた。

『ならば、保ってあと90年ほどか? 今の人類がいなくなり、印つきのニンゲンのみになるまでか。まぁ潮目も変わるときか』

『左様でござい』

『いいよ。うん。いいだろう。はい、承認、一票』
『あなた様がそう言うなら』
『賛成』

神々の投票結果は、およそ90年後、惑星を包んだ暗黒の雲が地上のニンゲンたちだけを焼くか、否か、そのときに判明するとしよう。

恐竜にせよなんにせよ。
絶滅とは、ある日の一瞬から、唐突にはじまる。


END.

読んでいただきありがとうございます。練習の励みにしてます。