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【君からの手紙】新マスク文庫|「拝啓」七田苗子

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新マスク文庫の「拝啓」七田苗子×ジユンペイ こちらの小説へのお返事となる、「君」からの400字のお手紙。 採用作品は「拝啓」の裏に印刷します。
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#ラブレター

「ラヴレター」【EATALK MASKさん「新マスク文庫」お手紙募集参加記事】

「ラヴレター」【EATALK MASKさん「新マスク文庫」お手紙募集参加記事】

お手紙、確かに受け取りました。
……なんて、改まって言ったら君は笑うかな。

二度と会えない「サヨナラ」が私たちを引き裂いて、あんなに傷付いたはずなのに、おかしいね。
君の心を、以前より近くに感じるの。

最期の日、君は私を連れ去って、ホットコーヒーを片手に連れて行ってくれたよね。
私たちが青春時代を過ごした、あの丘へ。

夏休みの補習を二人で抜け出して、丘の上にある大きな木の陰に逃げ込むと、ウォ

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あなたへ【拝啓への返信】

あなたへ【拝啓への返信】

私は、水の粒子になって空気に溶け、雲になって大地を覆い、時のくびきから自由になったの。
私たちがあの木のそばで寄り添っていた頃、私は側にいたんだよ。
私たちがあの家で笑い合い、コーヒーを飲み、歌をうたい、台所で食事を作っていた頃、どの瞬間にも私は側にいたんだよ。

現し身だった頃、私は木に耳をつけて、水の循環する音を聴くのが好きだった。
あなたに出会ってからは、あなたの胸にもたれて、あなたの鼓動を

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拝啓、空の上より。【400字の手紙】

拝啓、空の上より。【400字の手紙】

ねえ、知ってる?
雲の上には、音も匂いもないんだよ。

夏になると、
私は風に乗ってあなたに会いにいく。

ねえ、ここにいるよ。
って風に教えたけど、聞こえた?

あなたの淹れる、コーヒーの穏やかな香り。
片耳のイヤホンから聞こえる、大好きなあの曲。
葉っぱが揺れて囁く、優しいメロディ。
風が運んでくる、ほのかな夏の匂い。
あなたが毎年出してくれる、麦わら帽子の焼けた匂い。

ぜんぶ、届いてる。

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