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昭和14年のイギリス料理レシピ”ケゼリ(魚飯)”

◆主婦之友 花嫁講座 洋食と支那料理 昭和14年(1939)

 この本は戦前に出版された、主婦之友花嫁講座というシリーズものです。
料理だけでなく、裁縫、園芸、お作法など全20巻も出版されている人気シリーズです。
 いくつか持っていますが、どれもクオリティが高い。今このまま再販しても通用しそうな料理本です。出てくる知識、料理内容のクオリディが高すぎて花嫁講座の域を超えています。いま出版されたら、花嫁にいったいどれだけの家事を課すのかと炎上しそうなほど。

 さて今回紹介するのは、洋食と支那料理。
どちらも本格的です。

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支那料理の料理名は基本的に中国語です。雲片鶉蛋湯。如意巻。四喜燒賣。などが並び本格的です。もう読めません。
洋食も凝ったものも多いですが、左のページをみるとアテチョークとあります。当時手に入ったのでしょうか、今でもなかなか売ってないですが本格的なメニューが並びます。

でも本の中を読んでいくと、さすが主婦之友。家庭料理である前提で料理を語っています。

西洋料理の常識という項目があるのですが、そこには

贅澤すぎる家庭料理
 日本の洋食は、料理屋の料理そのままで家庭に入ってきたという感じがございます。従って家庭料理としては非常に贅澤なもので、欧米の上等のお客料理とされているものばかりです。
 西洋料理だからって、何も西洋の材料を使わなくてはできないというものではありません。もっと手近にいくらでもある材料を使って、もっと手軽に作ることを考えて頂きたいものでございます。
(中略)
 あるものを上手に生かして使うところに面白味があり、主婦の教養がうかがはれて嬉しいものでございます。

とってもいい話です。西洋料理をただただ教えるだけではなく時代と家庭に合わせたアレンジがされている、実用的な本になっているというわけです。
またどんなにお料理が上手でも、経済を離れたものでは家庭料理にはなりません。ともありました。主婦之友さすがです。

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◆ビーツと新生姜のピクルス

とっても美味しそうなピクルス。生姜の甘酢漬けなのでいわゆるガリになりそうだけど、ビーツをつかって一気に西洋料理な気配がしてきます。果物のシロップいれるといいとか書いてあって、ちゃんと美味しいピクルスができそう。

当時ビーツが手に入りやすいかどうかは、ちょっとわかりませんが日本には江戸時代からビーツは来ていたそうです。
ボルシチに使う真っ赤なものか、、それともカブに近い赤い渦巻状のものかわかりませんが、きれいな仕上がりが想像できます。

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◆ケゼリ(魚飯)

レトロ料理本を読んでいると、知らない単語にでくわすことが多いのですが、今回出会ったのは”ケゼリ”です。
料理を要約すると。。

ケゼリ
芝海老を茹でておく、魚(鯛など白身)も茹でて骨をとってほぐしておく。
卵をゆでて、黄身と白身に分けて裏ごししておく。
みじん切り玉ねぎをバターで炒めて、魚を入れてカレー粉をいれて炒めます。
そしてご飯を入れて塩、胡椒、味の素、仕上げにエビとグリーンピース。上に裏ごした卵をかけて出来上がり。

カレー風味魚のチャーハンといった感じでしょうか。。
いったいこの料理はなんだろうか。。。この本はとてもちゃんとリサーチして書かれている本なので、きっと元の料理が外国にあるはずです。

ということで色々調べた結果。みつけました!

◆Kedgeree ケジャリー

この料理はイギリス料理でした。もともとはインドにあるキチュリという料理がイギリスにやってきたものです。ずいぶんと歴史もあって伝統的なイギリス料理となっているもの。
これを日本語にするときに”ケゼリ”としたんですね。

主婦之友は当時影響力の強い雑誌でした。もっとも売れたのが1941年で163万部売れたそうです(wikipedia調べ)
このころ紹介された料理は、一般に広まると現代まで家庭料理の定番として残っていた可能性もあります。

ケゼリも一歩なにか違っていたら、給食にでたり家庭で食べたりする日本の定番になっていたかも、、、と想像してしまいます。
もしかしたら「うちのおばあちゃん、ケゼリ作ってた」という家もあるかもしれません。

◆肝臓のご飯

ちなみにケゼリのページの左にのっている、肝臓のご飯は、イチ・ピラフ(iç pilav)というトルコ料理なんじゃないかと予想してます。


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