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教育委員会が「自律的」な学習を推進していくには、何をすればよいか?

 学習の主体である子どもが「自律的な学び」をしているのか「他律的な学び」をしているのかよって、個別最適な学びや協働的な学びの在り方も変わってきます。

 多くの授業は「他律的」に学習が仕組まれています。
 教師が学習内容や学習方法を決定し、教師の決めた指導過程に沿って、子どもたちは自分のペースで学習することになります。
 この場合、個別最適な学び(個に応じた指導)を決めるのは教師自身になります。教師が子どもたちの実態を見ながら学習形態も決定していくことになります。

 授業力の高い教師は、子どもたちにとって適切な学習内容や学習方法の選択や、学習形態の切り替えを行うことができるようになります。
 これまでは、どちらかと言えば、その精度を高めるための授業研究を行ってきました。このような「他律的」な学習においても、子どもたちが意欲的に取り組む授業は見られます。

 各教科等の学習内容によっては、「他律的」な学習が適切な場合もありますし、教師の敷いたレールの方が効率よく教えたり、考えさせたりして目標を達成できることもあるのも事実です。
 「他律的」な学習で成果を出してきた先生方は「自律的」な学習に抵抗があるかもしれません。

 なぜ、自律的な学習(自由進度学習等)に抵抗感があるのか。
 
 先生方の中には、子どもたちに自由に任せて授業が成り立つのか、活動あって学びなしにならないか、学力はつかないのではないか。そうであれば、子どもにとっても「他律的」な授業の方がよいのではないかと考えている人がいます。

 そのような中、「子どもは有能な学び手である」「授業観を変えることが必要だ」と言われても、「それは大事なのはよく分かるけど、実際の学校現場では・・・」「今まである程度うまくいっているし・・・」と思う人がいるのは当然だと思います。

 先生方にそのような思いをさせている要因は教育行政にもあると考えます。メディアの影響もありますが、全国学力・学習状況調査の「学力」の部分が主にクローズアップされ、都道府県順位が付けられ、その点数や順位変動に一喜一憂する雰囲気がつくられてしまいました。いまだに多くの自治体、学校の学力の指標が全国学調の結果になっています。

 点数や順位が下がれば、議会でも質問が出ますし、教育委員会の学校への指導も始まります。もちろん、学力の指標を全国学調の点数だけに設定していない自治体、学校も出てきていますが、まだまだ少数派です。

 そのような中、「自律的」な学びを取り入れることに抵抗があるのはある意味当然のことであると考えます。

 それでは、どうすればよいか。まず、やるべきことは、教育委員会が学力に関わる「指標」を変更することと考えます。

 全国学調等の学力だけではなく、児童生徒質問紙の内容、つまり、子どもたちはどう思っているか等を学力と同じレベルで「指標」に取り入れることが必要と考えます。全国学調等を活用せず、独自の指標を作成することも考えられます。

 全国学調の児童生徒質問紙には、学力に関わる以下のような質問項目があります。
 「自分にあった教材や学習ペースで学習できていますか。」
 「先生は授業やテストで間違えたところや理解してしないところについて分かるまで教えてくれていますか。」
 「自分の考え方うまく伝わるように資料や文章、話の組み立てなどを工夫して発表していましたか。」
 「授業では、課題の解決に向けて自分で考え、自分から取り組んでいましたか。」
 「友達との間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり広げたりてできていますか。」などです。

 「自律的」な学びにつながる項目も複数あります。
 これらの項目の中から重点化するものを選択し、レーダーチャートで示し、その変容を追っていくなど「点数以外」の学力に関する内容を点数の学力と同等に扱っていくという流れをつくると「他律的」な学びに挑戦する雰囲気も生まれてくると思われます。

 先生方の意識を変えるためには「指標」を変える。
 1つの有効な手立てと考えます。

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