バーベキュー適性 前編
一年以上前から子供が「家族でバーベキューをしてみたい」と言っていた。
「バーベキューねぇ…」
私だって若い頃に何度か参加したことがある。
子供が幼稚園の時にママ友さんから「家でバーベキューをするからおいで」と誘われ親子でお邪魔したこともある。
食材を買いに行ったり、皿やコップを配ったり、焦げてしまいそうな肉や野菜を取り分けたり…
終わったらゴミを集め、洗い場で使った器具の汚れを落とすなど、参加メンバーとしてできる限り協力してきた…と思う。
だがしかし、主催したことはない。
バーベキューについてのボンヤリしたイメージはあるものの、何が必要で、どうやって火を起こし、焼き始められるようになるまでにどのくらいの時間が必要なのか…細々したところがサッパリわからない。
おそらく夫も似たような感じだ。
子供に言われた後、目がうろたえている。
様子を見る限り、そうと判断して間違いない。
日頃から人を喜ばせよう、人の役に立とう、という意識が乏しい夫が、若い頃であってもバーベキューを主催するとは到底思えない。
きっとリーダーシップのある、人の良い友達が主催したバーベキューにヘラヘラと参加して、手は動かさず、同席している女の子達にバーベキューのウンチクでも語っていたのではないだろうか。
(そしてそれを聞かされている女の子達は目が死んでいたのではないだろうか。笑)
そもそも夫は潔癖症ぎみ。野外でご飯を食べること自体が苦手なのだ。
外でピクニックするのも毎度嫌そうな顔をしている。
日頃なかなか意見が一致しない私達夫婦だが、バーベキューに関しては意見が一致した。
バーベキューをやりとげる自信がない。
どこから手をつけたら良いのかわからない。
一度やって二度とやることはないであろうことのために道具を揃えるのか?
できれば子供にバーベキューがやりたい気持ちを忘れてほしい。
「まだ暑い」「値段が高すぎる」「場所が遠すぎる」…お互いに協力して(←確認したことはないが)のらりくらりと先延ばしにしてきた。
しかし、子供は一向に忘れない。
数週間おきくらいに真っ直ぐな目で言うのだ。
「家族でバーベキューがしてみたい!」
そんなある日、リビングで寝転びながらスマホを触っていた夫が言った。
「ここのバーベキューなら行ってもいいぞ?」
珍しいこともあるものだ、とそのサイトをのぞき見ると大きな字で
『手ぶらでBBQ!』
と書いてある。
画像には小綺麗な屋内バーベキュー施設、屋外でもバーベキューができるようだ。
食材も用意されているらしい、追加購入も可能。
オプションでフリードリンク、ソフトクリームの機械などもあるようだ。
なるほど、夫が重い腰を上げた訳がわかった。
「手ぶら」
バーベキュー初心者になんともまぶしく心強いワードだ。
しかも少しアクセスの悪い場所にあるせいか、手ぶらでオッケーな割にはリーズナブルな価格設定だ。
子供は願いが叶い大喜び、私達も後ろめたかった心の重荷下ろすために、車で1時間半ほどの場所にあるその施設に向かうのであった。
後半に続く…
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