ひいばあちゃん
夢中になって川遊びをしたあの場所は、大人になってから行ってみると、儚さが漂っていた
そこは片田舎の山中で、子供の頃の自分にとって、とても神秘的な場所だったから、大人になってしまった自分への、戒めのようにも感じた
最後にお墓参りをしたのは、中学生の頃だったか、お葬式の記憶は、しっかりあるけれど、それは小学生の頃だから、今から30年前だ
18歳で上京して、24歳で結婚したのち、関西や九州に定住していたので、すっかり子供の頃の記憶も、薄れてしまった
10年ぶりに、関東に引っ越してきて、地元に帰る機会が増え、小学生になった子供たちを、「あの場所」に連れて行きたいと思った
それは、ふとしたときに何となく、ひいばあちゃんに、『おいで〜』って呼ばれてる様な気がしたのだ
母に、場所を尋ねたら、びっくりされ、実は、ひいばあちゃんのお墓参りは、すっかり足が遠のいていた様だ
近くに滝があることは覚えていた
人生で初めて見た大きな滝が、今でも、人生で一番好きな滝だ
私は、母が連れて行ってくれたのだと思っていたが、実は、母の両親である、じいちゃんとばあちゃんが連れて行ってくれたと教えてもらい、嬉しかった
それで今でも、大切な思い出として、ずっと心に留めていたのかもしれない
あれから30年ぶりに訪れた滝は、全くもって記憶の中の光景そのままで、淡い記憶が色濃くなり、胸がいっぱいになった
これから先の人生で、大切な人に教えてあげたい場所の一つになった
滝から少し行ったところに、ひいばあちゃんの家と、お墓がある
夢中になって遊んだ川を渡った先に家があって、渡らずに、そのまま進んで行ったところにお墓がある
近くに来れば、ちゃんと記憶が蘇る
お葬式の時、母と母の兄弟たちはたくさん泣いていた
ひいばあちゃんはいつも笑顔で迎え入れてくれたことを覚えているし、大人があれほどまでに泣いている姿を見たのは、初めてだったから、子供ながらに、しっかり見届けようと思い、記憶に残っているのだと思う
棺桶をみんなで担いで、ひいばあちゃんの家からすぐ近くの、木の生い茂った場所まで歩いた
棺桶はそのまま地面に埋められ、初めて見た埋葬は、今では珍しい土葬だったことは、大人になってから知った
大きな木の下の、すぐ隣
久しぶりに行ったけど、すぐに分かった
「ひいばあちゃん、来たよ〜呼んでくれてありがとう」と、手を合わせた
ここは私のルーツ、大好きな場所だ
また来るねと、想いを馳せた
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