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編集者って何をしてるの?|#01

年明けと同時にイースト・プレスに入社しました、書籍1部のKです。前職では、主にビジネス書や実用書を発行する出版社で働いていました。
新しい環境にワクワクしていたのですが、入社早々、「できるだけ在宅勤務!」ということになってしまいました。僕は出社しているのですが、何をすればいいものやら、とりあえずウロウロしています。
そんな様子を見かねたのか、上司が「イースト・プレスでは誰でも自由にnoteの記事を投稿できる」と教えてくれました。入社したばかりであまりやることもないので、「あいつは何してるんだ」と言われる前に書くことにします。

ノリスケさんは仕事をしていないのか

今回考えたテーマは、「編集者の仕事とは何か」です。
これを説明するのが難しい。読者の方々もイメージしづらいのではないでしょうか。
文章を書くのは著者さんやライターさんです。文章に間違いがないかをチェックするのが校正さん、本のデザインをするのはデザイナーさん、原稿を本の体裁に作り上げるのがDTPさん、イラストを書くのがイラストレーターさん、印刷するのが印刷会社さん、出来上がった本を書店にお勧めするのが営業さん。
出版に関わるほかの職種は比較的わかりやすいのですが、「編集」という仕事が何か、本人たちもよくわかっていません。

日本一有名な編集者といえば、「ノリスケさん」です。サザエさんのいとこですね。彼はいつも伊佐坂先生の原稿を待っているだけで、あまり仕事をしていないように見えます。ひどいときには、磯野家で昼寝しています。
なのに、家に帰れば美人の奥さんとかわいい息子がいます。タイコさんが働いている様子はありません。ノリスケさんの稼ぎだけで家計は成り立っているようです。

ノリスケさんを見ていると実にラクな仕事のように思えますが、全国の編集者の名誉のために急いで付け加えると、実際の編集者はもうちょっと頑張っています。ノリスケさんも、アニメでは描かれないけれども、見えないところでしっかり仕事をしているはずです。

編集者の仕事をざっくり言うと、著者探し、企画、構成、取材、原稿整理、デザインやイラストの発注、原稿訂正のやり取り。そしてそこに関わるすべての人を、数か月先の「校了(「これでOK! お疲れさまでした!」となること)」に向けてハンドリングしていくことです。細かな部分はジャンルによって異なり、コミック担当、文芸担当、実用書担当では、当然それぞれの業務が違います。
正直、一つひとつの仕事はとても地味で雑多です。こうした事情から、「これが編集の仕事だ」と説明できないんですね。

一方で、ベストセラーを連発するような編集者の方たちは、みんな自分なりの「編集」に対する定義を持っています。彼らに比べて僕はまだまだ実力不足で、わかったように語るのはおこがましいのですが、年の始まりと同時に転職という、これ以上ない再スタートの機会なので、ちょっと考えてみました。

編集者は著者にはなれない

「編集」の定義も、ジャンルや編集者によってさまざまだと思います。僕はこれまでビジネス書や実用書を扱ってきたので、その観点から考えます。うんうんと唸って自分なりに言葉にできたのは、こんな感じでした(また変わるかもしれません)。

「著者が持つ、著者自身も認識していないコンテンツを引き出して、最適化すること」

編集者は、著者にはなれません。本の内容そのものを、自分で生み出すことはできないわけです(自分で本を出す編集者もいらっしゃいますが、そのとき彼らは「著者」なのであって、別の編集者が同伴しています)。
できるのは、まず世の中に広く伝えるべきコンテンツを見つけることです。そのために著者さんを探すわけですが、すべての著者さんが自分の持つコンテンツの価値を認識できているとは限りません。「こんな専門的な話、読む人いるの?」と思っていたり、そもそも本人の気づかないところにコンテンツが隠れていたりします。
そこと読者との橋渡しをするのが、編集の仕事です。もちろん、何でもかんでも引き出せばいいということではない。世の中に広めるべきコンテンツ、読者にとって有益な情報でなければいけません。著者と編集者だけで盛り上がって、内輪ウケで本づくりを進める。これが売れない本の“あるある”です。

「編集者は最初の読者である」という言葉があります。著者さんの持つコンテンツを、編集者と読者両方の視点で眺めることで、正しい化学反応が起きる。それが本当の意味での「企画」になるわけですが、そのとき編集者は「自分でつくった」と考えてはいけません。あくまで、コンテンツを持っているのは著者さん。そこから何を引き出せるか、どのように加工できるかが、編集者の腕の見せ所です。
著者さんが「豚肉とジャガイモを持ってるよ」と言っていたとします。「じゃあ肉じゃがを作るかな」というのは編集者のすることではありません(とびきりおいしい肉じゃがをつくる、ということはありますが)。
「この人はほかにも食材を持っているんじゃないか」と仮説を立てる。実際に聞いてみる。すると、著者さんがアボカドを持っていることがわかる。それらの食材から新しい料理を作れるんじゃないかと模索する。あるいは肉じゃがにアボカドを入れてもおいしいんじゃないかと妄想する。そうした試行錯誤があって初めて、価値あるコンテンツを見つけることができます。

わかりやすさが第一

著者さんから引き出したコンテンツを本へと育てる過程が、「最適化」です。
ここで言う「最適化」は、ほぼイコールで「わかりやすくする」です。著者さんはその道のプロです。コンテンツは自然と専門的になる。だから著者さん本人は「こんな話、読む人いるの?」と戸惑うわけですが、それで当然です。
いまはたくさんの情報を手の平の上であっという間に集めることができます。「どこにでもある情報」にお金を出す人はいません。高い専門性は、おしなべて大きな価値です。編集者に求められるのは、その価値を損なわせることなく、わかりやすい形で読者へ届けることです。

当然、本にするためにはわかりやすいだけではダメで、読むという体験そのものが面白くなければいけません。読ませるための工夫も必要です。ただし、そのために嘘を入れてはいけない。誇張しすぎてもいけない。
いろいろな側面があるのですが、僕がこれまでかかわってきたビジネス書や実用書では、「わかりやすさ」が第一だと考えています。もっと言えば、価値のあるコンテンツをわかりやすく加工すれば、それがそのまま「面白い本」になるのだと思います。

では、著者さんのコンテンツを引き出すためにどうすればいいのか、最適化するにはどうすればいいのか。ここまでで長くなってしまったので、またの機会に書きたいと思います。
「編集者の仕事とは何か」。イースト・プレスのほかの編集者の投稿もあるかもしれません。興味のある人は少なさそうですが、よろしければ楽しみにしていてください。

編集者って何をしてるの?|#02

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