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全然合わないネット応募と就職支援コーナー

 さて、すっかり丸腰になってしまった私にはネットでちまちま求人に応募することにした。しかし求人サイトで検索した求人は別の求人サイトに登録しないと応募できないものばかりだった。

 二社ほど応募したが、分かったのはネットでの応募というのは私には全然向いてないということだった。書いているつもりだがどこか抜け落ちがあったりして大変だった。志望動機を書かない代わりに自己PRを欠かされたりするところなど、それまで履歴書で応募してきた分、未記入のところが一目でわからないことが原因である。自分の不注意ばかり棚に上げることもできないが、とても不便だなと感じたことが一つあった。負け惜しみついでに言うと登録すると電話がずっとかかってきて鬱陶しいのもある。


 ある求人に応募したがいつもどおり履歴書に不備があったので、求人サイトに載っていた電話番号に電話をした。すると返ってきた答えは「この電話番号は求人サイトのカウンセリングを外注で頼まれている会社であるので、求人サイトに連絡をしたい場合はメールで連絡してほしい」とのことだった。

 とても不便だと思った。書類を書き直させてほしい緊急時にメールを送って対応を待たされる。結局自分で企業に連絡することになるし、求人サイトが一手間かけさせてくるシステムがやはり好きになれなかった。

就職支援コーナー

 ネットでの応募(特にウェブ履歴書)に嫌気がさした私はハローワークのホームページを見ていた。すると就職支援コーナーなるものがあることに気づいた。何か話が聞けるかもと思い訪ねてみることにした。


 そこは使っていたハローワークからはしばらく歩いたところにあった。初めてそこに来た人はまず会員カードみたいなものを作らされる。その際にコーナーの説明と今までの職業や退職理由、そして現状の就職活動状況などの質問をされた。私が行った就職支援コーナーなるものはハローワークとはまた別の外注の機関であり職業のあれやこれやの斡旋を促すところではないとのことだった。では何をするコーナーかといえば向こうがあてがってくるカウンセラーと話しながらあれやこれやに書類を作成して応募していくところという説明を受けた。


 就職活動というのはここまでの私のやり方ではこんな感じだ。
1、 できることを見つける。
2、 求人を見つける
3、 書類を作成し応募する
4、 書類が通れば面接に進む
5、 合否発表
 説明ではこのコーナーはこれらでいう3番からをカウンセラーとともに行っていくだけだった。個人的には2番にありつけさえすれば自分で勝手にやるのにというのが本音であったし簡単に言うとこのコーナーは転職エージェントから2番の機能を無くしただけだった。しかしせっかく来たので物は試し、カウンセリングを申し込んでみることにした。
「ではシマダというカウンセラーを担当させます。」
「そのカウンセラーの方は何歳ぐらいですか?」
「五十、六十ぐらいですかね」
 ベテランそうな年代なので内心安心した。変に若い前の転職エージェントのような年代とは違うからだ。


 カウンセリング当日、少し早めにコーナーの待合について待っていた。しばらくするとシマダが私に声をかけてきた。聞いてはいたが見た目はもうお爺さんだった。コロナ対策用に立てられたアクリルの衝立を挟んでカウンターに座る。彼の側にはパソコンが一台あって前回来所したときに私が受け答えした内容の文書と照らし合わせながらこれまでのことを改めて彼に話した。

 そして彼に一番最初に決まった会社を蹴ったことを後悔してるということを伝えると
「最初に内定もらった会社の内定を蹴ったのは誰?」
あまりこういった詰め寄られる言い方をされるのに慣れていないため言葉に詰まった。
「自分やね?」
とても苦手な印象を受けた。言っていることはまともかもしれないが初対面の人とのコミュニケーションの取り方として不愉快だなと感じた。なんというかこっちが困っているのをいいことに勝手に図に乗っている感じである。

彼は続ける。
「私はね、前の会社では全然異業種やったんやけども定年迎えてからでもチャレンジしようと思ってこの職に挑戦してるんよ、嫁にも娘にも反対されたんやけどね」
嫁さんも娘さんもあんたのことよーわかってはるわとは言えなかった。もう少し嫁さんと娘さんには反対してもらいたかった。


 次に改めて今までどのぐらいの数の求人に応募してきたかの話になった。私が「四、五社ですね」と答えると
「祈られました?」
「(『祈られる』の意味が分からず)・・・?」
こういう専門用語でもないけどそういった「この業界」の言い回しをこすりつけてくる感じも悦に入っていて気に入らねぇなとなる。

 この時に黙っていたせいで『祈られ屋』判定をされた私の履歴書に彼は興味を持ち始める。
「今日その、あなたの履歴書を見せてもらえますか、でもあなたの通った訓練所の出力の仕方めんどくさかったですよね、前も来た人いるけど苦労したわ
訓練所のことまでディスり始める。

 たまたまデータが入ったUSBを持ってきていたのでカウンターに置いた。
「あーこれはダメなんですよ」
「(イマダのパソコンのUSBポートを指して)ここに差せばいいじゃないですか」
「規則でそれはできないんですよ」
それは、知らないですけど
段々この失礼な老人に腹が立って態度が悪くなってきた。結局履歴書は別の部屋にある共用のパソコンでなら良いとのことだったのでそこでプリントアウトすることになった。


 あくまでレイアウトなどのビジュアル的な面だが彼はアドバイスをくれた。この点だけは来てよかったかもしれない。


次は私の志望動機の書き方についてだったが、おそらく彼は読んでもいなかったと思う。あのレベルになると読まなくてもきっと程度が分かるのだろう。
「志望動機というのはなるべく純真無垢な時のエピソードから引っ張ってくるのがいい。『こんなんしてて楽しかったなぁ』みたいな動機の方が企業にとって聞こえがいいから」
「そーなんですか」
例えば中学の時の特異な科目は何やった?
「英語ですかね」
他には?
「美術ですかね」
他には?
「(七教科)全部言わせるつもりじゃないですか」
「美術が好きということは型にはまらない自由な発想をもっている人なのでそういうところから動機が書ける」
型にはめらるのが嫌と分かっているのにそういう型にはめてくるのは一体どういうこっちゃとは言えない。この人に「私はO型です」といえば「大雑把なんだね」と返ってくると思った。


 ベテランだと思って安心していたが話すだけでストレスを感じるジジイと当たってしまった。

 ではカウンセラーを変えたら変わるだろうか。隣の隣にも女性の利用者がいたがカウンセラーはやっぱり爺さんだった。ジジイに懐疑的にすっかりなった私はここは利用しない方が精神衛生的にもいいだろうと思った。


 結局その日は次回の予約を入れ、次の日にキャンセルの電話をした。その場で断ってもきっと私が腹立つことになる未来は目に見えたからだ。


 何というか就職活動一つでこんな目に合うのかと自分自身が情けなくなってきた。すっからかんの転職エージェントに残念な老人カウンセラー、応募先にまでコンプラ無知の社長との面談を受けさせられる私の持っている会社との『ご縁』とは。悪い方のことばかり考えてしまう。

結局考えるのも動くのも自分なのだから一人でやってる方が納得は行くよな、まだ、と思うようになった。

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