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烙印を押された者の末路


ハードボイルド作品というと、殆どが欧米が舞台である。
原作に基づくと仕方がないのは尤もだが、かつて日本も大きな野望を抱き挑戦した事がある。
特に鈴木清順 監督監督作品「殺しの烙印」は海外からも非常に票が高い。
クエンティン・タランティーノやジム・ジャームッシュやジョン・ウーといった、名だたる映画監督からも支持される作品でもある。

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物語の主人公である花田五郎は殺し屋としてNo 3である。
こういった作品にありがちな、主人公特有の癖というのがこの花田五郎にもある。
それは炊き立ての白米の香りを嗅ぐ事である。

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花田の信条として任務中は酒を一切飲まない。
酒と女は仕事に影響を及ぼすという観点からだろう。

簡単にあらすじを紹介すると、花田五郎の妻、花田真美の夫婦が旅行先から帰ってくるシーンから物語が進む。
帰ってきて早々、花田の前に仕事の依頼が入る。
その内容とは、ある男を守る事が使命だと伝えられる。

花田と知人のかつての殺し屋と同行する。
途中、同業者と思われる数人から攻撃に合う。
依頼された男に傷をつける事なく、無事任務が終わるはずだったのだが、知人が命を失う事になる。

仕事を果たした花田はNo 3から2へと階級が上げる。
これを機に花田は有頂天となる。
我を忘れた花田は妻の真美と激しいセックスを繰り返す。

当時からすると相当激しい描写だと思う。
因みに、後日談で花田五郎を演じた宍戸錠は、撮影に入る前に監督から三枚の裸婦画を手渡され、「こういった感じで…やってほしい…」と抽象的な事を言われたそうだ。
よく理解しないまま「はい」と答えた宍戸錠が演じたシーンに、監督は満足しそのままOKとなったらしい。

話は戻り、次の仕事の依頼が入る。
その内容は数人を殺す事だ。
仕事は難なく済ませたが、逃走中に突然の雨に見舞われる。

そんな雨が激しく降る夜、花田の前に一台のオープンカーが止まる。
花田は迷わず乗り込むと、運転席に乗っていた人物は無表情ではあるが、男に対し媚びを売らない様なタイプの魅惑的な女性であった。
しかも激しい雨の中、オープンカーを運転するなんて花田はややおかしいと感じていた。

言葉をかけない女性に対し、花田から話しかける。
「結婚しているのか?」花田は口説き文句から入った様だ。
やや沈黙が続いた後、女性は「私は死にたいの…」と怪しげな言葉を花田にかける。

その女性の名は美沙子演じる真理アンヌだ。
それにしても、この頃の真理アンヌは確かに妖艶な雰囲気を醸し出している。

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数日後、雨の日に出会った美沙子が花田の家の近くに訪れる。
なぜ場所を知っているのか、花田は不審に思った。
すると美沙子の口から「ある人物を殺して欲しい」と仕事を依頼される。
しかも、仕事の依頼は非常に困難と言える内容であった。
その理由は、ほんの数秒の隙を狙って仕留めなくては足が着くという事柄だった。
この家業は足が着くという事は命取りにも繋がりかねない。
それだけに慎重に行わなくてはならない。
一旦は仕事の依頼をためらうも、花田は美沙子に抱く野心を拭いきれなかった事もあり、結局依頼を受ける事となる。

仕事当日、緊張なお面持ちを隠すかの様に花田は仕事に集中する。
標的となる人物を花田は捉えた。

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だが、ライフル銃のスコープに優雅に舞う蝶が仕事を邪魔をするかの如く、花田の気持ちを揺さぶる様に動揺させる。

大きな銃声が鳴り響く。
しかし、自体は大きく傾く。
あろう事に、銃弾は標的の人物ではなく、赤の他人に命中し誤殺させてしまうのだ。

それからの花田の運命も大きく傾く。
殺し屋としてNo 2を剥奪され、次に訪れるのは、同業者から命を奪われる運命に急転換してしまうからだ。

花田は目に見えない恐怖と、これから先の不安が足を引っ張るかの様に撹乱させる。

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正気を失った花田は酒を浴びる様に飲む日々が続く。
胸に刻まれた信条を忘れてしまった花田は、日々を怯えながら過ごさなくてはならない。

時が過ぎ、とうとう花田の前に同業者が現れる。
埠頭に呼ばれた花田を待ち受ける殺し屋達が容赦無なく拳銃を向ける。
一方の花田はただ一人だ。
車を止めて花田は心理戦に出る。
車の下に入り、予め二本のロープを先頭部分に括り付けて、匍匐前進する体制を保ち、徐々に先頭付近に相手を仕留めようと試みるのだ。

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このアクションシーンはよく考えられたと思う。
今はCGなどで誤魔化しが効く時代なので、この様なアクションシーンは関心が薄いと思われがちだが、1960年代に考えられた事を考えるとかなり優秀なトリックだと、個人的には感心してしまう。

修羅場を潜り抜けた花田だが、一難去ってまた一難となる。
それは今まで正体が明かされなかったNo 1が花田の前に現れたからだ。
しかもこの男は、No 2になった時に依頼された時に守った男であったからだ。

その時以来、No 1は花田をいたぶるかの様に執拗に迫る。
簡単には殺さない代わりに恐怖を味わえといった、目に見えない不安を煽るのであった。
時には花田の部屋に入り、紳士協定を結び銃をテーブルに置き数日過ごす厄介というべきか、奇怪な生活を数日間送るのであった。

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果たして花田はNo 1を倒し、No 1と成り得るのだろうか…
またはNo 1に命を奪われ、無惨な姿となるのだろうか…

モノクロームで緊張感漂う設定なので、飽きずに鑑賞できる作品だ。

この作品は後に「ピストルオペラ」へと繋がるなどと、鈴木清順ファンには知れた事だったりスル〜♪

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