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気候危機を解決する! COP28の成果

文:萩谷衞厚(アースデイ ジャパン ネットワーク共同代表)

2023年11月30日から12月13日まで、アラブ首長国連邦(UAE)で、国連気候変動枠組条約 第28回締約国会議(COP28)が開催されました。

COPとは、国連気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties)の略称です。地球温暖化による世界的な危機的状況を抑制し、適応するための国際的な枠組みです。毎回、190か国以上の国と地域が参加し、今後の取組を決定する場として、毎年開催されています。

今回のコラムでは、そのCOP28でどの様なことが議論され確定したのか、その概要をお伝えしましょう。


グローバル・ストックテイク(GST)の決定

GSTとは、パリ協定に基づいて各国が定めた温室効果ガスの排出削減目標(NDC)の世界各国での進捗状況を評価する仕組みのこと。

今回の合意文書では、1.5℃目標達成のための緊急的な行動の必要性、2025年までの排出量のピークアウト、全ガス・全セクターを対象とした排出削減、各国ごとに異なる道筋を考慮した分野別貢献(再エネ発電容量3倍・省エネ改善率2倍のほか、化石燃料、ゼロ・低排出技術(原子力、CCUS、低炭素水素等)、道路部門等における取組)が明記されました。

現在、各国が占めるNDCでは、世界全体の1.5℃目標を達成できないと言われています。2023年11月、世界気象機関は、2023年の世界の平均気温は、観測史上最高になり、10月までの気温は、産業革命以降、1.4℃程度上昇したとの発表しています。つまり、私たちはすでに0.1℃程度しか残されていないという危機的状況におかれています。

今回の決定は、各国が気候変動対策をより強力に推進するためのガイドラインとなります。まさに気候危機対策待ったなし。世界各国のより野心的で積極的な取組みが期待されます。

ロス&ダメージに対応のための基金の決定

今回のCOP28では、昨年のCOP27で設置が決定されたロス&ダメージ(気候変動の悪影響に伴う損失及び損害)に対応するための新たな資金措置に関し、基金の基本文書を含む制度の大枠について、CO開催初日に合意されました。

各国が表明した基金への初期拠出額は、以下の通りとなります。

  • EU:約2億4,500万ドル(ドイツの約1億900万ドル含む)

  • アラブ首長国連邦:1億ドル

  • UK:約5,100万ドル

  • US:約1,750万ドル

  • 日本:1,000万ドル。

合意に至ったことは喜ばしいことですが、現在の危機的な状況を解決するには、数十億ドル規模での基金が必要で、今回の拠出額は、そうした想定額を大幅に下回ると言われています。また産油国などでは毎年、化石燃料産業にはそれを大幅に上回る補助金が拠出されているのが現状です。先進国を中心に、基金へのより多くの拠出が求められています。

2030年までに再エネ容量を3倍・エネルギー 効率を2倍に

最後に、今回のCOP28での注目すべき合意事項として挙げられるのが、118カ国が2030年までに世界の再生可能エネルギーの容量を3倍に拡大することを宣言したことでしょう。

ここで、現在の再生可能エネルギーの状況を共有しましょう。2022年時点での世界全体での再生可能エネルギーの発電量は、27.3兆kWh、2021年と比較すると9.6%の増加傾向になります。その内訳は、太陽光発電が12.6兆kWh(46.5%)、風力発電が10.3兆kWh(37.7%)、水力発電が4.4兆kWh(16.2%)、バイオマス発電が0.1兆kWh(0.4%)となっています。

増加傾向を支えるのは、主にアジア地域であり、中国では、太陽光発電と風力発電の両方で新規設備容量の増加が大きく、世界全体の増加量の約8割を占めました。

IRENA(国際再生可能エネルギー機関)は、地球温暖化を1.5℃に抑えるためには、2030年までに再生可能エネルギーの年間発電量を現在の3倍に増やす必要があるとしていますが、今回のCOPでは、その提言に沿った合意がされたと言えます。

そして、日本政府がエネルギー基本計画で掲げる2030年の再生可能エネルギー導入目標は、36%~38%。2030年に向けて、基本計画の目標とどう整合性をとるのか、その取り組みに注目しましょう。


来年のCOP29はアゼルバイジャンでの開催が確定しました。アースデイジャパンネットワークでは今後も定期的に気候変動や再生可能エネルギーに関する情報を提供していきます。私たちの活動にご期待下さい!








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