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ポメラで日記34/母が倒れた日編

2023/08/11 19:08

母の意識が戻った。

弟から怒濤のようにLINEが来て

「ああ、不安だったんだな」

と思った。

母が倒れたのは昨夜。

「すぐに来なくていいから」

と弟が言ったのは、彼が母のそばを離れて片道2時間の、私の家まで迎えには来れなかったろうし、また、とうに汽車は終わっている深夜。

どうしても、というなら、北にお願いすることも出来たが、弟の言葉に素直に頷き、私はただ連絡を待っていた。

Kindle本の校正を進めていく。

ブログ代行を受注しているお店の、お盆特別メニューが好評のようで、予約のお客様に確認メールを送る。

あさんぽもした。

朝食はさすがに食べれなかったが、昼は食べた。適当だけど。

その合間に、私が思っていたことは。

「母が弟の父を残して先に死んだらどうなる」

「家事をする人間がいなくなった実家はどうなる」

「連れ戻されるのは絶対嫌だ」

「私には、負の遺産にしか感じない家土地はどうなる。遺言書を作ってくれとあれほどお願いしたのに」

というものだった。

合間に、親友からLINEもくる。

親友と母は当然知り合いだが(というか、親友の勤めている病院に入院している)、私は母のことは話題にあげなかった。

夕方、13日Kindle本を出版するための最終確認をして、思った。

「礼服がないな」

実の母の葬儀なのだから、レンタルでも喪服を着るべきだろうが、この暑いのにそれは嫌だ。

母があつらえてくれた着物は、訪問着と小紋だけだし。

葬儀となったら、絶対家族葬にさせるから(叔父が未だに葬儀屋の嘱託社員なので面倒だが)、礼服でいいだろう。

礼服ってどこに売っているんだろう。

仕方なく、10年ほど前、甥っ子を亡くした北に聞いた。

「母が倒れて、喪服がいるかも。どこで買えばいい?」

「ちょっと混乱してる。君は大丈夫?」

「大丈夫」

そんなLINEの合間に、弟が

「目を覚ました。きっと大丈夫」

と、連絡をくれた。

そのまま、北に伝えた。

「よかったな」

「そうね」

「君はお母さんに対して距離を置いていたけど、動揺してる様子だね」

動揺?

まあ、したな。

「そうね。母が亡くなったら出てくる問題の多さに、動揺したよ」

「それでも、心が動いたんだ。やっぱり他人じゃない」

「こんな動揺なら、あなたのお母さんでも、ネットの向こうのひとのお母さんでも、私は同じように動揺するよ」

LINEから通話に切り替え、様々な話をした。

北からこんなに気持ちが離れている私。

北に頼って生きていくしかない私。

そのことの、不自由さに、改めて動揺する。

今すぐ行こうか?と行ってくれたが、断った。

しかし、日付が変わる頃には来てくれるらしい。

なんだか、とてもめんどくささを感じるが、明日の夕方には帰るようなので、来てもらうことにした。

きっと、北が来たら、なにもなかったように、甘えられるんだ、私は。

明日はあさんぽは無理だな。

車で、神社までは連れて行ってもらおう。

「母のため」

と言ったら、北は嫌がらず動いてくれる。

感情が死んでしまったようだ。

昨日ピアスを開けたかったのは、それが堂々と出来る自傷行為からなんだって分かってる。

こんな日も、書くことしか出来ないのか。

北に触れて、においをかいだら、気持ちは生き返るだろうか。

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