見出し画像

わけなどなにもない

10月の雨の朝に僕は
君と出会ってしまい
それからなにも手が
つかなくなったんだ

君の黒い髪から花の
ような香りが流れる
君の少しだけ茶色い
丸い瞳が悪戯っ子の
ようにのぞきこんで

笑う君のバラ色の唇
邪気も屈託もない声

それを向けられた男
整った鼻梁に眼鏡を
かけたいけ好かない
あいつは君を大切に
していないとそんな
噂もあったのだけど

君はあいつに夢中で
あいつだけ見ていた
あいつの声だけを唯
信じて君は誰からの
忠告も聞かなかった

僕はやっと君の友達
そんな仲になれた頃
あいつが別の誰かを
妊娠させたと愚痴を
話しているのを知る

君は信じないだろう
君はあいつを愛して
本当に一途に思って
そんな君だからこそ
僕は君をこんなにも
大切に大切に思って
君の過ごすこれから
今も未来も何もかも
幸せであって欲しい

だから僕は決心した

闇夜に、息を潜めて
鼓動は誰かに届くか
耳には雑音が響いて
目の前はすでに赤く
染まって見えたんだ

その亡骸を僕は運ぶ
誰にも気づかれない
僕だけの秘密の場所

あいつが君を悲しい
思いをさせることを
僕は許せない、絶対

長い黒髪が広がった
花の香りが包み込む

君の瞳は薄く開いて
もう僕を見つめ返す
ことは二度とないが

君があいつに微笑む
姿を見ることもない

この恋の結末に僕は
満足しているんだよ

わけなどなにもない
ただ心が騒いだだけ

生涯一度きりのこの
恋に、罪に溺れよう

僕も君を、追うから

そこに君が待つ筈が
ないと分かってても





【自己お題】

TMN REASONLESSの歌詞を使って

訳など何もない
心が騒ぐだけ



この記事が参加している募集

私の作品紹介

忘れられない恋物語

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?