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悪しきもの、汝の名は《女》。

とても歪んだ幼少期の環境と、交際相手たちのせいか、自分の中の、女の部分が好きでありません。

見た目は大変女らしい女である私が、フェミニズムを語ったところで本気にはされませんし、そんな気概もありません。

男装もしませんし、また、男装した女性も好きではないです。

女である事が苦痛だからといって、男になりたいと思ったことはありません。

JUNEで少年愛を知り、その世界にハマりましたが、自身が少年になって男性に愛されたいと思ったことはありませんでした。

性自認はつねに女でしたし、恋愛対象は男性です。
インターセックス、DSDとは違います。

性のない存在でいたい。

突き詰めれば、そういう願望がありました。

無性でいたいのか、両方を兼ね備えた完全体でいたいのか、よくわかりません。

女は汚れたものという強迫観念があります。

イメージシンボル辞典では両性具有を


合一した純粋な幸福を表す、性は地上では男女に分裂し、悩みと不安に陥っている。

とあります。

しかし、両性具有を扱った作品には、そんな純粋な幸せを見てとることはありませんでした。

もうタイトルも作者の名前も忘れましたが、母の持っていたマンガで、半陰陽を扱った作品がありました。
男の子として生きてきた主人公に、ある日突然生理が来て、自身が半陰陽だと知る。
女性化が進み、もう女としてしか生きるしかなく、そのための手術を受ける。

小学生の私には不思議な話でした。その頃は生理の知識もなかったので。

その作品では、ずっと男として生きてきた主人公が、女の自分を受け入れるまでの苦悩が描かれていました。

女になるのは、嫌なこと。

そんな芽が植え付けられた作品でした。

意識的に両性具有の話を読み出してのは、15歳くらいです。

たまたま書店で見つけた、タニス・リーの死の王。


呪われた女王と死者との間に産まれた主人公は、両性具有でした。
それは、相手に合わせて自身の性別を変えることの出来る能力で、それによって複雑な恋愛関係を築き、結局は自身を滅びに導きます。

倒錯と退廃。

平たい地球シリーズの一編ですが、物語の魅力が詰まっていました。


JUNE出身の榊原姿保美の青月記の中の、奈落の戀では、かつて半陰陽として産まれ、男性として生きている青年が描かれています。

このモチーフは作者が好きなのか、繰り返し他の作品にも出てきました。

萩尾望都のマージナルは、女のいなくなった地球を舞台に、象徴としてのマザ、男同士の性的関係、その中に異物として外界からやってきた少年が、表現体は男ですが、卵子を持ち、心を開いた相手だと身体の作りを変えて子供を作る、複雑な話です。

萩尾望都のA-A'の中のX+Yには、性転換をした母から産まれた少年が、やはり性的に安定せず、女性化したり男性化したりする話です。

マージナルでも描かれていた、母の呪いがモチーフで、深刻でありながら少しコミカルな所が好きな作品です。

萩尾望都の銀の三角は、両性具有ではありませんが、クローン体に、男と女の記憶を植え付けられた青年が出てきます。

萩尾望都は11人いる!でも、無性の少年を描いてますし、スター・レッドでは、主人公の少女の魂を受け入れたことで女性化し、妊娠する少年を描いてます。

竹宮惠子は、イズァローン伝説で、成長するまで性が未分化のアーキタイプが出てきましたが、私の知る限りで、竹宮惠子が両性具有を描いた作品は他にはない気がします。

野阿梓は他にも好きな作品がたくさんありますが、両性具有を扱った作品はこれだけかな。

依代にされ、死んだ少女の霊を無理矢理受け入れさせられた少年は、両性備えた肉体を、少女の兄に犯されるというシーンがあります。
これまた複雑な話で、それがメインテーマではないのですが、なかなか凄まじい。

山藍紫姫子は、ハードなセックスシーンが売りですから、あまり好まないのだけれど、両性具有の世界というタイトルに惹かれて買いました。

巻頭の冬の星座はなかなかすごい設定で、自分を憎んでいる男に無理矢理性転換手術されて、戸籍も新たに作られて、その男と結婚させられる青年が主人公です。

しかし、この人の作品は、やはりハードだなー。この世界を書ききる力はある意味すごいと思います。


他にも両性具有を扱った作品を読んできましたが、私に一番納得がいったのは、SFマガジンのフェミニズム特集にあった1作でした。


リサ・タトル「きず」。

アンソロジーにまとめられていたので、改めて買いました。

男性しか生まれず、恋をすると女性化するという世界で、一度は恋をさせて相手を女性化し子供までもうけた中年男性が、若い男に恋をして女性化する様を描いた作品でした。

むろん、女になるということはひどいことだった。
《中略》
「とてもやさしくしてあげるよ。そんなに痛くはないよ」
それは彼の嘘の、ほんのはじまりだった。
きず リサ・タトル アザー・エデンより

まだ10代で、一方的な性的悪戯しか受けておらず、まともな男性経験のなかった私に、ストンと落ちてきました。

女になるということはひどいことだった。

その一節に全てが集約されています。

私は跡取りとして男の子であることを望まれた子供でありました。
しかし私は女で、弟が生まれるまで、婿をとって家を継ぐことが当然として生きていました。

祖母は私を溺愛してましたが、人との会話で、

「男の子だったら不足はないのに 」

と話してました。

その上で、心ない人たちからの性的虐待。

女として生まれたことは罪であり、呪いでした。

そうして早熟な体は、奇形的な乳房を与え、さらに私を苦しめました。

それは50になる今でも、カインの印のように私の胸にあります。

男になりたいわけではけっしてありませんが、この、生まれながらにして汚れた身体をどう扱っていいのか途方に暮れます。
宗教すら、女は救わないのに。 


いつまで女であることに惑い傷つかなければならないのだろう。

生理が終われば?ダイエットで胸がなくなれば?性的なふれあいがなくなれば?

それでも、答えは多分出ないんでしょうね。

難しい問題です。

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