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独りでも生きられるけど、だから?

だいぶ前の番組だが、'ALONE' というアメリカのリアリティ ショー (Season 1) を Amazon prime で観ていた。

バンクーバーの自然たっぷりの場所で、自分で選んだサバイバル道具 10 個を持ち込み、自給自足で生活するという番組。

10 人が同時に参加し、お互いに隔離された場所を与えられる。お互いに行き来することはできず、通信手段もないため誰かと話すこともできない (リタイアするための衛星電話のみ保有)。


カメラマンもいないため、大量の機材とバッテリー (トータル 20kg あるらしい) を渡され、それぞれが自分で生活の様子を撮影しなければならない。

またこの島にはブラック ベア 1,000 頭、クーガー 7,000 頭、オオカミ (頭数失念) などが出没するというかなり危険な環境である。


期間の設けはなく、ほかの 9 人がリタイアするまで自分がリタイアしなければ勝ち (勝者は 1 名のみ)。
また、参加者には他の参加者のリタイア状況は知らされない。だからあと何人が残っているのか、みんなどうしているのかは一切分らない
結局は自分との闘いとなる。

勝者には 50 万ドルが贈られる。勝者以外に報酬はナシ。

(Season 2 までは Amazon prime で配信中! 字幕あり。3 以降は hulu で配信中)


火の熾 (おこ) し方やテント (シェルター) の張り方、罠の作り方などサバイバル予定はなくても大変参考になる。

「無人島に持って行きたい一冊は?」 などという悠長な質問があるが、もうこれを観たあとは ↓ こういう本一択だろう。

『ロビンソン・クルーソー』とか言っている場合ではない。



私はこういったリアリティ ショーが好きである。

一番好きなのはナショジオの 'Wicked Tuna' という、複数のマグロ漁船でそれぞれがシーズン内に捕獲したマグロ (本マグロ) の金額を競い合うというものだ。
(文字にするとすごく地味だ (^^;))

どうやらここで獲れた質のいいマグロは日本にも送られてくる模様。

なかばドキュメンタリー要素もあって面白い。人生でマグロ漁船に乗ることはこの先もほぼないだろうと思うので疑似体験ができて良い。

途中から hulu で放送しなくなってとても残念。やはりここでも 「好きになるものが人気ない」 という残念さが遺憾なく発揮されてしまった。


あとは 'ANTM (America's Next Top Model)' という番組。タイラ・バンクスまたはリタ・オラが司会を務め、文字どおりアメリカの次なるトップ モデル (候補) を決める番組である。

参加者には色々な課題 (マネキンになりきって撮影とか、ランウェイを歩く練習とか、モデルとして必須のものからお遊びのようなものまで多岐に渡る) が与えられる。

その課題の出来不出来で毎週誰かが脱落していく。勝ち抜き続けて優勝したら、世界規模のモデル エージェンシーとの契約と、ファッション雑誌の表紙に掲載されることが約束される。


これが結構、面白い。
女性特有 (なのかな?) のドロドロドロドロドロドロドロドロ (しつこい) した世界で、みんなのし上がりたいから結構エグい。
だって優勝した場合の報酬が凄い!!
雲泥の差どころではない。

現実ではこんな人間関係に絶対陥りたくないけど、怖いもの見たさで観てしまう。
参加者も多国籍でそれぞれの美しさがある & 課題が面白いので、そういう意味でも観る価値がある。

しかし、この番組も終ってしまったらしい。残念だ。



前置きが長くなってしまったが、下記ネタバレ含むためご注意願いたい。






Season 1 しか観ていないが、それだけでもサバイバルって本当に大変というのが分った。
人類がどのような変遷を辿って今の暮しになったのかの片鱗も見えたような気がした。

脱落した理由は主に下記。
なお、このバンクーバーの島はかなり湿度が高く、火を熾 (おこ) すことがかなり難しかったようだ。

  • 就寝中にクマが近距離まで来た (身の危険を覚えリタイア)

  • 火打石を紛失し、火を熾せない (低体温症の懸念、水も消毒できないためリタイア)

  • 水を消毒せずに飲み、体調不良

これだけでも自然が人間にとってかなり厳しいものだと分った。


火が熾せない。
それだけで寒くて死んでしまうし、寒くなくても飲み水が作れなくて死んでしまう。

川の水をコケで濾過して飲んでいた人もいた。しかしコケだけでは濾過が不十分だったのか、海水が混ざっていたからなのかは分らないが、ひどい腹痛や幻覚、悪寒などに襲われていた。そしてこの人がリタイア。
(消毒しない水は寄生虫などがいて、それもまた死のおそれが出てくる)

人は 4 日くらいまでなら水なしでも生きられるようだが、それ以降は死んでしまうらしい。
食べ物は 2 ~ 3 週間なくても、体に脂肪や筋肉があるからすぐに死ぬということはないようだ。


人間には下記のものが必要らしい。なお、(観ていた感じでは) 上から順に緊急度が高い。

  • 安心して安全に寝られる寝床

  • 飲み水

  • 食べもの

  • 仲間

  • 社会

ほとんど 「マズローの欲求 5 段階説」 をなぞっていると思って間違いないだろう。


後半、残り 4 人くらいになると、やはり強者が残っているのでみんな何とかして飲み水や食べ物をゲットしていた。
家 (テント) もグレード アップしていたり、カヌーや調理場を別途作る参加者もいた。

しかし、安定的に毎日食べ物を得られるわけではない。みんな次第に 「どうにか労力をかけずに安定して食べ物を得られないか」 という思考にシフトしていった (食べていないとカロリー不足で動けないため)。

これが狩猟民族から農耕民族への移り変わりか……。
と、リアルにサバイバル活動しているのを見て、大変勉強になった。


さらに生活が安定してくると、(みんな家族がいるので) 孤独が堪 (こた) えるようになってくるようだ。

他者を蹴落とす訳ではなく、みんな自分との闘いだから自分から諦めたくない。
どこまでやれるのかやってみたい。

そんな想いで参加している参加者が多いようだった。


でも、だから?
2 ヶ月程度、なんとかサバイブできた。
自給自足ができることも分った。

一人でほぼ丸腰で放り出されても、ちゃんとやっていけることが分った。

でも、だから?
それが何?


ロケ地は自然が多く、海に面していて、干潮で景色が変わるし、とても美しい朝日も夕日も見られる。

でも、だから?


毎日起きて、食べ物が網やワナにかかっていないか見に行く。
かかっていれば料理して食べる。かかっていなければ落胆してテントへ戻る。

またワナを仕掛ける。

天気の悪い日や寒い日は、食べ物の様子も見に行けないから、体力を温存するためにじっとしている。
24 時間じっとしている。
風がうるさくて眠れない。


また日が昇って、沈んで、いつまで経っても自分一人で。
食べ物を食べる。テントにいる。
また明日になれば、食べ物を見に行って……


文字にしただけでも結構地獄かもな、と思う。かいつまんだ映像で観ていた私にも、少なからない虚しさは伝わった。


独りでも生きられるけど、だから?

その先に何がある?


無人島でただエサを取って、食べて、寝て……
それだけを毎日繰り返すには、あまりにも人生は長すぎる。

昨日はエサが鮭だったけど、今日は水鳥だ。

その違いを分かち合う人もいない。大切な人は 「現実の」 世界で時を刻んでいる。
自分だけが、時が止まっている。


とにかく時間があり過ぎるので、参加者は自分の家族や自分の過去 (特にあやまち)、のことを考えるようだ。

そこで何かが吹っ切れて 「自分との闘いが終った」 ことを理由にリタイアする人もいた。


優勝者が最後に 「大切なのは愛だ。子供や友人への愛はいつまでも残る。それ以外は無意味だ」 というようなセリフを言うのだけれど (言わされているのかもしれないが)、そうなのかもしれない。


独りでも生きられるけど、だから?


人は孤独を感じると精神的な病に陥ってしまうそうだ。
'ALONE' を観ていると、どれだけ他者との関わりが重要なのか分る気がする。


生きていくのに必ずしも家族や恋人が傍にいる必要はないのかもしれない。

けれど、「想うだけでも心があたたまる存在」 というのが自分にあれば、ひとりでは生きづらい人生がだいぶ緩和されるのかもしれない。

私にとってかつての愛猫がそんな感じだ。もう 2 度と会えないけれど、本当に出会えてよかった。
(ソックリなぬいぐるみがいるので淋しくない & 保存用にもう 1 匹買った!)


'ALONE' でも、ペットがいたらだいぶ違うだろうな、と思った。

クーガーはかわいいけどやっぱりペットにはムリか……。
死ぬまで戦い続けるらしいし……。
じゃあ最終的にこっちが間違いなく死ぬよね。


お読みくださりありがとうございました (^^)


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