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天邪鬼の眼☕️通信~登下校時は、学校の管理下か?~

登下校時が学校の管理下であるかどうかということは、教職員や管理職の間でも曖昧に認識されていることだと思います。慣例として、学校側で登校指導なども当たり前のようになされているので、同僚や管理職に尋ねても明瞭にその回答が戻ってくることも少ないのではないかと思います。
そんなわけで、これまでこの問題について調べたり尋ねたことを整理してみました。

正しい認識を持つことはとても大切なことだと考えています。
学校現場や先生方、そして保護者、学校を見守る地域社会の皆さんの正しい認識の一助になればと思ってまとめました。

学校安全に関する取組について、平成27年3月31日に「学校安全に関する更なる取組の推進について(依頼)」という文書を発出しています。その冒頭で、

学校管理下や登下校中に児童生徒等が被害に遭う事件・事故災害の発生は後を絶たず、児童生徒等への安全教育や学校等の安全管理等の一層の充実を図ることが求められています。
平成27年3月31日「学校安全に関する更なる取組の推進について(依頼)」

として、児童生徒等への安全教育や学校等の安全管理等の一層の充実を依頼しています。文科省が、「学校管理下や登下校中に…」としていることはポイントです。登下校中が学校の管理下であるならば、学校管理下として一括りに記載すればよい話だからです。こうした文書は、文言に齟齬がないかをきちんと精査して出されることが常です。そう考えると、文科省は、学校管理下と登下校中を分けて考えていると捉えることが妥当ではないかと思います。

また、学校の働き方改革について審議した中教審でも、登下校時の見守り活動は、基本的には学校や教師の本来的な業務ではないとしています。もし、登下校時が学校の管理下であるならば、登校時の見守りを本来業務から外すことはできないはずです。

社会通念上も、敷地外のことを管理下にするということもあまり考えられません。

こう考えてくると登下校中は、学校の管理下ではないということになります。
ただ、「登下校時は、学校管理下ではありません。」と明示した文書等は、これまでの長い教員生活で目にしたことはありません。ここらあたりは、教育行政のいやらしい面かもしれません。明瞭に否定しない中で、子どもたちの安全を気に掛ける学校(教職員)の心情として、実際に身を運んで、見守りをして安全確保に努める取り組みが業務化してきたのではないかとも思います。
こうしたことは推測ではなく、きちんと把握することが重要なので、然るべきところにも複数問い合わせましたが、「登下校時は、学校の管理下とは言えない。」とのことでした。

ただ、ややこしいことに、学校管理下のことを考える時に頭に入れておきたいことは、日本スポーツ振興センターの災害給付制度の給付対象として提示している学校管理下の例示です。

スポーツ振興センターのHPにある保護者向けの説明でも登下校時が学校管理下として示されていますので、保護者がそのようなに認識していくのは至極自然なことです。学校から災害給付制度を説明する際にも同じような内容で示されいることが多いと思います。実際に自分も勤務していた学校で、入学者説明会用の資料を読んでいると、スポーツ振興センターの説明がそのまま使われていました。新入児の保護者が数多く読む文書ですから、誤解を招かぬよう「ここでいう学校管理下とは、スポーツ振興センターが災害給付金を支払う適用範囲としての意味である」といった意味合いのことを付記するよう修正をしたくらいです。

この辺りが、登校時をめぐる学校管理下の解釈です。いずれにせよ、今までの流れを考えると相当丁寧に説明を繰り返していかなければ、「登下校時は、学校の管理下とは言えない。」という共通の認識になかなか至れるものではないと感じます。

先の依頼文書には、その具体的な取り組みとして次の5点を挙げられています。

1.学校安全計画の策定
2.学校安全計画及び危険等発生時対処要領(危機管理マニュアル)の定期的又は必要に応じた検証
3.通学路安全マップの作成
4.家庭や地域の関係機関・団体との会議の開催
5.災害時における保護者への児童生徒等の引渡しや待機方法に関する手順やルールの取決め

この依頼文書から読み取れることは、学校は、児童生徒等への安全教育や学校等の安全管理等の一層の充実を図ることを求められていることです。
言い換えると、学校が担う責務は、児童生徒等が安全に登校するための安全教育であって、登下校指導そのものではないというのが法令等に基づく解釈なのではないのでしょうか?

この観点で見た場合、朝の登校指導については、その在り方自体(給特法の絡みもありますが、それとは別に)も学校の責務ではないことを前提として考えてみる必要があると思います。特に、学校の責任者である学校長は、所属教委等に問い合わせるなどして、明瞭な認識を持って登下校指導の在り方を考えていくようにしていくことが大切だと思います。

何と言っても安全に関わることですから学校管理下ではないからと言って、スパッと切っていくことは、これまでの流れもあり、容易にはいきません。段取りを踏まないとそのハレーションは大変なものになることも考えられます。まずは、学校の管理下ではない(学校の本来業務でないことの共通認識は必要) 中で、どのように子供たちの安全を確保していくかを関係者ときちんと協議し、登校指導等の在り方を模索しないとならないと思います。教職員の働き方の問題、保護者の理解、地域社会との連携、本義的に交通の安全を司る警察との連携など調整が求められることになります。

依頼文書の4.には「家庭や地域の関係機関・団体との会議の開催」には、次のように書かれています。

学校においては、児童生徒等の安全を確保するために、児童生徒等の保護者との連携を図るとともに、当該学校が所在する地域の実情に応じて、当該地域を管轄する警察署その他の関係機関、地域の安全を確保するための活動を行う団体その他の関係団体、当該地域の住民その他の関係者との連携を図る必要がある。
平成27年3月31日「学校安全に関する更なる取組の推進について(依頼)」

こうした連携への取り組みも学校管理下の範囲を明瞭にした上で、どう連携を図ることが良いのかを協議していくことが重要だと思います。コミュニティースクールとして、学校運営協議会の設置も進む中、地域社会が、学校に通う子供たちの安全を確保するために話し合っていくなど学校が丸抱えしがちな状況を改める必要はあると考えています。

保護者、地域との連携には、それぞれの心情が加わり、なかなかセンシティブな面もあります。しかし、職員の勤務時間と矛盾も生じていることは大きな問題です。バランスをとって整理しながら、ステップを経ても最終的には、本来業務ではないという着地点に辿りつきたいものです。

参考:学校運営協議会



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