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みちらんが選んだイッてみたい海外の道ベスト3 #3スペイ川 ウイスキートレイル

最後はちょっと渋め。スコットランド北部ハイランド地方を流れるスペイ川に沿ったトレイル。
地肌が剝き出しとなった岩山と渓流、大きな樹木はなく、起伏に富んだ牧場の緑が続きます。

この道にはビクトリア王朝時代、鉄道が敷かれていました。現在は廃線となりましたが、一部の廃線跡が駅のプラットホームや駅舎、鉄橋はそのままトレイル客向けに開放されています。
スペイサイドウェイは、野を越え山を越え、蒸気機関車が似合うのどかな雰囲気が漂う道です。

線路が外された駅舎 画像提供:geograph

裏テーマは蒸留所めぐり

ところで、スぺイ川と聞いてピン!と来た人は、なかなかのウイスキー通。

鉄道開通と前後して、スペイ川やその支流には数多くの蒸留所が建てられました。わずか160キロの流域にスコットランドの全体の約半数が集中するスコッチウイスキーの「聖地」といえる一帯です。

その秘密はスぺイ川を流れる水。
泥炭層(ピート)から染み出す伏流水は薄い褐色を帯びており、独特の香りがウイスキー個性を引き出すのに一役買っています。「生命の水」とも言われる所以です。

グレンフィディックやザ・グレンリベットといった有名銘柄のほかにも多くの蒸留所があり、トレイルの途中で見学や試飲を楽しむことができるのです。

長距離自然歩道

イギリスにはロング・ディスタンス・ルートという長距離自然歩道がいくつかあり、スペイサイドウェイは、スコットランドの公式ロング・ディスタンス・ルートのひとつです。

線路を外し、そっくりそのままその上を歩けるようにしたので、他のコースと違いアップダウンもほとんどなく、歩きやすいことから人気です。

因みに、ロング・ディスタンス・ルートのシンボルマークは、スコットランドの国花でもあるアザミ。ハイランド地方に広範にわたり群生しています。

スコットランドアザミ 画像提供:wekipedia

ダフタウン・ループへ

ダフタウン・ループは、スペイ川の中流域アヴァロワから南に分岐してダフタウンへ向かい、クライガルヒに戻る迂回ルート。

もともとスペイサイドウェイのルートでしたが、フィディック川の浸食が激しく通行に注意が必要なことから、現在はサブルートとして運用されています。

スぺイ川に沿って真っすぐ行けばわずか2マイルの行程を10マイルかけて遠回りするトレイルです。
しかしそれだけの価値が十分に味わえる道です。厳しい自然と侵略に耐えたスコットランド魂。そして、ウイスキー。

古い詩に「ローマは7つの丘の上に築かれた。ダフタウンは7つの蒸留器の上に築かれた」と詠われています。
現在、ダフタウンには9つの蒸留所があり、モルトウイスキーの首都とも言われています。

ダフタウンの街並みと時計塔 画像提供:geograph

ダフタウンのシンボル時計塔を訪ねたら、グレンフィディック蒸留所に向かいます。
ゲール語で「鹿の谷」を意味するグレンフィディックは、世界でもっとも売れているシングルモルトウイスキー。英国で初めてシングルモルトを販売した蒸溜所としても知られます。
世界的ブランドとなった現在も、創業者ウィリアム・グラントの子孫が経営しています。

近くのバルヴェニー城は19世紀後半に建てられたスコットランドでもっとも古い石造りの城の一つ。
15世紀半ば以降、要塞からルネサンス様式の邸宅へと変貌して以降、廃城となったが、現在はヒストリック・スコットランドによって管理されています。
A941号線を北上すれば、キース&ダフタウン鉄道の出発駅ダフタウン駅に到着です。

ダフタウン駅 画像提供:geograph

キース&ダフタウン鉄道

キース&ダフタウン鉄道は、英国最北の遺産鉄道として知られています。「ウイスキー古道」と呼ばれるかつてウイスキーを運び出した道に敷かれた鉄道です。
全長11マイルの路線には、アイラ川やフィディック川といったその世界では名の知れた渓谷のほか、森林、農地、湖、城、蒸留所の車窓が楽しめる人気路線です。
7~9月の週末(金土日)のみの運行。
キース&ダフタウン鉄道公式HP

スペイサイドウェイは、上流のアヴィーモアからスペイ川に沿って河口まで約160キロ、スコットランドの魂、スピリッツに触れる道です。
今回ご紹介したダフタウン・ループはそのハイライトともいえる区間で、ウイスキー好きの方ならその魅力は倍加することでしょう。
私もその一人。今宵も静かにグレンフィディックを味わいながら、彼の地へ思いを馳せています。

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