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せきしろ×又吉直樹『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』

せきしろさんと又吉直樹さんの自由律俳句本2冊。『カキフライが無いなら来なかった』が第一弾。『まさかジープで来るとは』が第二弾です。どちらも、500句以上が掲載されていて、自由律俳句&散文&著者二人の撮影写真で構成されています。

お二人らしい、シュールで楽しい自由律俳句が掲載されているのですが、個人的には、自由律俳句、というよりも、むしろ、一行詩的な味わいが強いのかな……という思いで読みました。それぞれの作者らしさ……個性を味わう、という意味では、俳句と認識するよりも、一行詩として読んだ方が、より深く楽しめるようにも感じました。

「俳句」として読む場合には、私自身が、有季定型の俳句に親しんでいることもあり、やはり自由律であっても、季語が生きている句に心動かされました。そして、季語への焦点の当て方、という意味では、一冊目よりも、二冊目『まさかジープで来るとは』の句をより面白く読みました。

以下、勝手に私個人の「俳句」的フィルターから面白く読んだものをいくつか。(もちろん、自由律俳句なので、季語にこだわる必要はない訳ですが……。)

すべては布団の中で考える
怒った貼り紙にさえ雪
痩せた子猫に逃げられる
水よりクラゲの方が多い
こいのぼりの多い農家だ

せきしろ『まさかジープで来るとは』より

人間がいて夕焼け
花火消えて笑い声だけ聞こえてる
筒の蓋を抜く卒業の音
結露した窓の中にいる
流れるプールと兄弟が戦っている

又吉直樹『まさかジープで来るとは』より

桜の花びら踏んでも音はしない
知らない人だけど春菊買いすぎだろう

せきしろ『カキフライが無いなら来なかった』より

ブランコの止め方を教わって無かった
カキフライが無いなら来なかった

又吉直樹『カキフライが無いなら来なかった』より


もちろん、「一行詩」として読むならば、お二人の個性が際立つ、全く違う作品を選ぶことになるわけなのですが、今回はあえて個人的「俳句」フィルターで抽出を。おそらく、作家又吉さんや芸人又吉さんファンの方ならば、又吉さんらしさが色濃く表れたつぶやき的な作品に軍配を上げるに違いありません。

となればやはり、俳句という概念を離れて、一行詩的に味わい楽しむことができる、というのが、自由律俳句の面白さの一つでもあるのかもしれません。(八塚秀美)

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