瀬戸内寂聴『夏の終り』
瀬戸内寂聴さんの初めての私小説『夏の終り』。「あふれるもの」「夏の終り」「みれん」「花冷え」「雉子」の連作5篇で、2篇目の「夏の終り」は女流文学賞を受賞しています。昭和38年に瀬戸内晴美名義で発表された小説集で、どの作品も、8年間続いた妻子ある不遇な作家との生活、夫と娘を捨て身を崩す生活を始めるきっかけとなった年下の男との恋と再会と別れ、という作者の実体験が元となっています。
前半の4篇は、染織家の主人公知子と、知子と妻の間を規則正しく往復する作家慎吾、再会するかつての恋人