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図書室

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俳句に関する書籍の紹介だけでなく、事務局長が出逢った書籍の感想などを思いのままに綴る、個人的な図書室です。好みに偏る傾向があります。
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記事一覧

五味川純平『人間の條件』

『ぼくの命は言葉とともにある』の中で福島智さんが、「光と音のない世界」で生きるご自身の状…

朝井リョウ『生殖記』

『正欲』から3年半を経て、念願の朝井リョウさんの新刊『生殖記』が発行されました! 推しの…

江國香織『更級日記』・川上弘美『伊勢物語』

川上弘美さんの『三度目の恋』に絡んで知った河出文庫「古典新訳コレクション。古典が人気作家…

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』原卓也訳

松本潤×長澤まさみ×永山瑛太の初共演で話題の舞台、NODA・MAP『正三角関係』を観に行く前に…

夏井いつき・ローゼン千津『五七五と出会った子供たち』

副会長の新刊は、「俳句と出会い、言葉を育て、心を育て、生き抜く力を手にした子供たちのノン…

福島智『ぼくの命は言葉とともにある』・福島令子『さとしわかるか』

「盲ろう者として世界で初めて大学教授となった」東京大学の福島智さんの実話を小雪さん主演で…

志賀直哉『暗夜行路』

高校一年生の『現代の国語』に収録されている「城の崎にて」。授業で扱うたびに、脚注の解説に出てくる『暗夜行路』を、まだ一度も読んでいないことがずっと気になっていました。ようやく読了! 『暗夜行路』は、志賀直哉の唯一の長篇ですが、11年の中断の時期も含めて草稿の段階から26年後に完成した作品です。発表までの経緯について詳細が記されている「あとがき」には、作品についても、次のように言及されています。 主人公時任謙作の人生を襲うのは、母と妻の過失に影響される事件だけではありません

山本文緒『自転しながら公転する』

年末に放送された松本穂香×藤原季節のスペシャルドラマ『自転しながら公転する』。評判が良い…

せきしろ×又吉直樹『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』

せきしろさんと又吉直樹さんの自由律俳句本2冊。『カキフライが無いなら来なかった』が第一弾…

川上弘美『三度目の恋』

背表紙には、次のように紹介されています。 『伊勢物語』の六段、「鬼一口」で知られる芥川の…

森博嗣『トーマの心臓 Lost heart for Thoma』

萩尾望都さんの『トーマの心臓』が、森博嗣さんによって小説となっていたことを今さらながらに…

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

すでに続編となる完結編も刊行されている話題の一作目を、やっと手に取りました。新潮社の書籍…

出久根達郎『漱石センセと私』

直木賞作家である出久根達郎さんの『漱石センセと私』。月刊『パンプキン』に連載された「いと…

松浦寿輝『花腐し』

11月10日公開、綾野剛×柄本佑×新井晴彦監督の映画『花腐し』の原作が、第123回芥川賞受賞作だと知って手に取りました。映画のHPに、 とあった通り、映画のあらすじとは(職業も、相関関係も)登場人物たちの設定となっていて、映画とは別物として読んでいくこととなりました。 降り続く雨を背景に、生きることにまつわる欲望に淡白な栩谷の「俺もどうやら腐りかけてきたか」との想念が底辺で鳴り続けているような小説でした。タイトル「花腐し」は、小説の中では以下のように登場します。 「卯の