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やさしくなりたい

絵本作家として日々いろんなストーリーを考えています。

ありがとうのお話。歯医者さんのお話。不思議な国のお話。
おうちの中でドタバタするお話。クジラの親子のお話。

文章にしたものや、テーマだけでまだ書けてないものもありますが、
いま一番書きたいテーマがあります。

それは発達障害についてです。

そのことを考えるきっかけは息子が保育園の年長のころにありました。

今回この記事を書くことで子育てが大変だと感じている親御さんのお役に少しでも立てればなんて思っております。
また発達障害と聞くと少し構えてしまう人もたくさんいると思いますが、どういうものかを少しでも知ってもらうきっかけになれば良いなとも思っております。


本当に小さい頃からヤンチャで、なんにでも興味を持って、いつも全力で、いつも目をキラキラさせて、遊びも友達にも常に本気の彼が
「さいきんオレだけ怒られる」
と言い出したんです。

それと同じころ、先生からは「友達とケンカして殴った」とか「発表会の練習中に他のことに気がいって集中していない。しかも友達を巻き込む」などトラブルのことで話をされることが多くなりました。

僕たち夫婦としては、ケンカすることも言うこと聞かないことも子供にはよくあることなので、迷惑をかけてしまったときは謝ろうと話していたのですが、息子が話してくれる経緯と先生が話してくれる経緯とに食い違いが出てきたんです。

立場が違えば言い分が変わるのは仕方がないし、子供は怒られたくないのでやっぱり言い訳が多くなりがちなんですが、どうも何かが違う。
先生から聞くエピソードが息子の中ですっぽりと抜け落ちていました。


例えば
・遊んでいるときに息子が友達に嫌なことをしてしまった
・友達が後から仕返しをする
・それに腹を立てた息子が友達を殴る

これだけみると発端は息子だし、殴ったのも息子なので怒られて当然です。
だけど息子の中では遊んでいるときは『楽しい!』が一番にあるので、そのときに起こったことは気にしてなくて、嫌なことをしてもされても覚えていなかったんです。
なので友達からは仕返しではなく急に嫌なことをされて怒って殴った。というわけなんです。
だから「オレだけ怒られる」と。

そういうことが何度もあり、お迎えに行っては注意される妻が悩むようになり、出産から子育てのことでずっとお世話になっている助産師の先生に相談してみると、
「ADHD(注意欠陥多動性障害)の子は衝動的に動いてそんな風になることがあるよ。みんながそれに該当するわけではないけど気になるならそういうセンターへ行ってみるのもいいかもね!もし違ってたら気にせずに済むし、一度受診したらそういう苦労をしている母の会に参加できるようになるから、色んなエピソードを聞いて安心できると思うよ!」
と教えてもらいました。

ADHD。調べてみると確かに当てはまることが色々あります。
・落ち着きがない
・記憶とは違う部分で忘れっぽい
・すぐに気が散る
・夢中になりすぎて周りが見えない
・面と向かって話しているのに聞いてないように見える
・しゃべりだすと止まらない
・思い立ったらすぐ行動に出る
・怒ると手や足が出る(怒りやすい)

どれも子供らしい部分と言えばそうなんですが、なにか改善できるならと考え保育園の先生とも相談して受診してみることにしました。

その結果、少し多動性の可能性があるとのことでした。

がっつりではなく少しなので、このまま様子をみていく方向でもいいのですが、早く対応したいならADHDのお薬も処方することができるとのことで、悩んだ末、一応処方してもらうことに。

だけどそのお薬が錠剤で、息子はなかなか飲むことができずそのまま登園する日々が続きました。
発表会の日が近づくなか、先生からは「何とか飲ませてもらえませんか?」と言われます。
だけど家では上手く飲んでくれないので薬を持って登園させると、本人が覚悟を決め、なんとか飲めたようで、その日のお迎えの時は
「今日はすごく集中して、練習も先生のお話もしっかり聞いてくれました。お薬のことは知っていましたが、飲んだ効果を見たことがなかったのでこれだけ効くなら明日からもよろしくお願いします」

とのことでした。クラスでの息子は良くも悪くもなかなか影響力があるポジションらしく、その日は本当にスムーズで褒めてもらうことばかりだったそうです。
だけどお薬の反動か一日集中したせいか、いつもなら帰ってきても全開で遊ぶ息子が「つかれた~」と倒れこむように大人しくしていました。
顔にも覇気がありません。

その姿ははっきり言って息子らしくない。
いくら保育園で集中できたとしても、トラブルもなく過ごせたとしても、これを続けるのは大丈夫か?という疑問が浮かんできます。
あまりにも違う姿に次の日からは飲まさずに登園させました。

するとやっぱり注意されることも多く友達とも言い争いになったりで、先生からはお薬を飲ませるように言われます。
だけどあの日以来いくら飲ませようとしても息子は錠剤を飲むことができずにいました。

それでもなんとかお願いしますと先生に言われるうちに
「先生が楽したいだけなんじゃないか?保育園の先生なら悪ガキをなんとかするのも仕事だろ?」
などと考えるようになり、飲んだ日の息子の姿が頭から離れず、妻が副作用について検索すると
〈大人しく集中するようになりイライラやケンカも無くなりますが、感情表現が苦手になるかも知れません〉
という記事を見つけて、これはヤバい(その記事が真実かどうかはわからないけど)。
ヤンチャで喧嘩っ早いけど喜怒哀楽がはっきりしていて表情が豊かなのが息子だ!それがなくなるのは嫌だ!と思い、飲ませるのをやめることに決めました。

そのことを園の先生に説明すると残念そうに
「初めはしんどいかもしれないけれど、慣れてきて怒られることも少なくなれば園での生活をもっと楽しく過ごせるんじゃないかと思います。でもお薬のことは分からないので、そう決められたのなら」
と返事をしてくれました。

確かにそれも分かります。
家でもいろんなことで注意することが多いので、それがなくなれば親としても楽だし、息子にとっても怒られなくて良いかもしれない。
だけどそれを薬に頼るのは正解なのか?親として逃げてることになるんじゃないか?ネットで見た副作用が本当なら息子の感情はどうなる?
夫婦で話し合いますが、どうしていいのかわかりません。
そして悩んだあげく助産師の先生が子育て支援の先生でもあるので、もう一度話を聞いてもらうことにしました。


出発の時、夫婦の中にあった強い想い
「薬は飲ませない」「息子らしさが大切」「成長を信じる」
この三つを抱え先生に話しはじめたのですが、5分もしない間に考えを改めることになりました。

「それは親が勝手に思い込んでる息子らしさじゃないのか?」

と言われたんです。
「でも小さいころからですよ」と返すと
「だからこそよ!本当はいつも動き回りたくないのに体が動いてしまってるとしたら?本当はイライラしたくないのにケンカしてしまってるとしたら?
それが小さいころから嫌だと感じているのに、表現することが出来ないせいで親や周りに勘違いされたままだったとしたらどうする?
そのことで怒られることが多ければ多いほど、自信を無くしていくかもしれないよ」と。

そんなふうに考えたことはありませんでした。
それから先生の知っている子供さんを例にあげていろいろ話してくれました。

ある男の子が小さい頃、うちの息子と同じように落ち着きがなく常に動き回っていてよく怒られていたそうです。何度注意されてもなかなか治らなかったその子も、大きくなるにつれどんどん落ち着いてきて高校生になった今、彼にそのころのことを聞くと
「自分の意志では抑えれないときがあった。ダメだとわかっていても嫌だと思っていてもじっとしていられなかった」
と答えたそうです。
今でこそ発達障害という言葉があり、そういう可能性も考えれるようになって来たので色々と対応できるけれど、その頃はただただ言うことを聞かない子として親からも周りからも見られていたんじゃないかと。

この話の中で大切なことは、
・年齢を重ねれば普通の子供より遅くても相応になってくるということ
・発達障害という言葉を使うと悪いことのように聞こえてしまうけど、発達する過程に凹凸があり不得意な部分が目立つだけだということ(凹はちゃんと埋まってきます。経験や対応で)
・子供のことで「なんで?」と思うことがあれば、そこにはなんらかの理由があること
・その理由を親がしっかり把握してあげること

そして理由を把握するためにもうひとつ知っておかなくてはならないのが
感覚過敏というのがあることも教えてもらいました。

発達障害の子に多いのか、それとは関係なく感覚がほかの人より敏感なのかは分からないけど、それで苦労しているケースが多いということでした。

・聴覚過敏のせいで、周囲の音が全部同じボリュームで入ってくるので
先生が話している間も他の音に反応してしまい、集中力がない子に思われる。

・ある特定の音が異常に大きく感じるため、友達と遊んでいるときなどに嫌な気持ちになって怒ってしまう。

・肌の感覚が敏感で少し触れられるだけでも強く感じてしまうため、攻撃されたと勘違いし怒ってしまう。

・嗅覚過敏により周囲がいい匂いだと感じていても気分が悪くなり、ひとりだけ浮いてしまう。

・食感や味がどうしても苦手で、泥を食べているような感覚だったとしても「美味しいから。皆が食べてるから」と無理強いされて食べることが嫌いにってしまう。

他にもいろんな感覚過敏があるんだけど、生まれてずっとその感覚だったとすれば、子供にとって自分がどう人と違うのか分からないだろうし、感じていてもどう言っていいかもわからないだろうと。

そんななか、こんな例があるんだよ。と教えてもらったのが

本も読めるし字も書けるのに、授業になるとノートに上手く書けない子供さんがいて、学校でふざけていると思われたそうです。
だけどその子のお母さんは怒らずにその理由を探しました。
そしてたどり着いたのが【白いノートがまぶしくて書けない】だったそうです。

普通ならそんなことは考えないだろうし、ノートは白くてあたりまえと思っている人が大多数のなか、そこに気づいてあげれたお母さん。
子供をちゃんと見てあげるっていうのはこういうことだよ!
感覚のことは本当に人に伝わりにくいし、気づくのも難しいことだけど、理由が分かれば対処法はあるし、そうなれば子供さんが自信をもつことに繋がってくるんだから。
そしてその対処法に薬という選択肢があるなら試してみるのも大切。効きすぎるなら種類を変えることだってできるし、量を調節して飲めるものもある。そこで違うと思うならやめればいい。
親が手探りで子供に合うものをひとつひとつ試してあげればいいんだよ!
そこは親しか頑張れない。



子供はずっと自分のことで頑張ってるんだから!


胸に突き刺さる言葉をたくさん頂いた帰り道
夫婦で心に決めました。
しっかりとみてあげよう。と。
そのためにも息子と話をしよう。と。

それまで思い込みで怒ったこともあったかもしれない。
勝手に大丈夫だと決めて寄り添わなかったかもしれない。
わがままなんて言ってなかったかもしれない。
気づけなかっただけでヒントはあったのかもしれない。

いろいろと考え、その日から少しずつゆっくり息子と話をしていくと、

「オレほんとうは、イライラしたくない。友達をパンチしてしまう自分に腹が立つし、発表会の練習もちゃんとやりたいんや」

と言ってくれたのです。
正直驚きました。
「しょうがないやん」とか「だって○○やから」とかの言い訳の答えが返ってくると思っていたのに、息子自身が悩んで、それが嫌だと感じていたなんて。
それと同時に、その年の七夕の願い事を思い出しハッとしました。

上の写真にありますが

『やさしくなりたい』

と書かれた短冊。

まだ字が書けなかった息子が、先生に書いてもらった文をなぞって書いた願い事。

僕はてっきり怒られたくないから、
「人にやさしくせなあかんよ!」って言われるから書いたものだと思っていたのですが、心からの願い事だったことにこの時はじめて気づきました。

ずっと悩んでたんやなぁ…

ヤンチャやから仕方がない。
と思い込んでたのは親だけだった。
気付いてあげられなくてごめんよ。

それから色んな話をし、息子にどうしたいかを尋ねると

「ちゃんと出来るなら、お薬を飲んでみる」

っという言葉が息子の口から出てきたので、
僕たちはまた薬を飲ませることにしました。
違うと思えばやめればいいと。

ADHDで処方される薬は錠剤かカプセル。
そのどちらも飲めなかったので3つめに処方されたのが、ADHD用ではなく気分を落ち着かせるために飲む液体の薬で、大人も処方されることがあるものでした。

これを0.2㎜リットルから始め調整していく。

園でのお話を聞き、家でのようすを見て、本人の言葉を聞く。
増やす日もあれば減らす日もあり。
それを何度も繰り返しながら、発表会は大成功。
友達とも仲良く過ごし、卒園式も無事に終えることが出来ました。

その卒園前に息子が書いた目標

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「ひとのきもちをわかるようになる」


相変わらずヤンチャだし、落ち着きがないこともあり、まだまだ大きな声で怒ることもありますが、息子なりにいつも考えてる。
今は薬も飲まない状態で、小学生として頑張ってます。

クラスの先生からは
「話しかける言葉も、友達への態度も、クラスで一番優しい男の子」
と言ってもらえるほどです。

あの日の七夕の願い事が叶ったのかな?
いやいや元々が優しい子だったんだよ。


結局息子がADHDだったのか、その他の発達障害があったのか、今でも何かしらを抱えているのかは分かりません。
匂いに敏感で食べれるはずの食材を食べなかったり、
言葉や笑い声に敏感で少し気落ちしたりするときもあるので、
感覚過敏はあるのかもしれません。
息子には見られなかったですが、自閉スペクトラム症(ASD)、アスペルガー症候群、学習障害(LD)、チック障害、吃音症など発達障害にはいろいろあり、個人差もかなりあります。

だけど親がどうみてあげるかで、
少しでも対応できるかどうかで、
子供の成長は変わっていきます。

そのためにも子育てに関する知識を知る必要がある。
でも当事者にならないと、自分からアンテナを張っておかないと、
それを知ることは難しい。
僕自身、息子のことがないと「聞いたことはあるよ」ってぐらいだったと思います。

だからこのことを絵本にしたい。

そうすれば、親が、友達が、先生が、周りの人が、少しずつでも知っていけると思うんです。

あたりまえのことを、
あたりまえじゃなく感じてる人が、
近くにいることが、あたりまえだと。

そして今は発達障害と言われている症状も
特有発達とか、のんびり発達とか、優しい言葉になっていくといいなぁ。


このきっかけをくれた息子への感謝と
この内容の絵本をいつか絶対に作るという決意を
ここに記します。

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