書籍紹介_ファスト_スロー_上_

みんなに読んで欲しい良い本~その2「ファスト&スロー(上)」~

最近読んでおお!となった本の紹介をいたします。どうもウチダです。
最近は学生の頃より、経済関係にも造詣の深い本を読むようになってきました。そんな中で特に読み応えもあり、学ぶことも多かった本の一つである、「ファスト&スロー(上)」に関して紹介したいと思います。
当然ながら下巻も紹介しますが、まだ読み切れていないです。申し訳ない。

■ファスト&スロー(上)

(著:ダニエル・カーネマン)

この本はダニエル・カーネマンというノーベル経済学賞を受賞した、心理学を主に研究していた先生のお話です。今や研究分野としても市民権を得てきている「行動経済学」という学問分野を立ち上げた先生の1人です。
心理学分野なのに経済学賞なの?という疑問もありましたが、この本を読めばスッキリします。
彼は、僕達人間が何か意思決定をする時にどのような心理の動きがあるのかについての研究のため、その端的な例であるギャンブルを題材にします。
このギャンブル研究が、後に消費研究へと発展し、ノーベル賞にまで上り詰めました。
以下では彼の本の面白かったところをピックアップして紹介してみたいと思います。


■システム1・システム2

彼は、僕達には思考は早いが、熟慮の足りないシステム1と、思考は遅いが、しっかり考えるシステム2という2つの決定機構が備わっていると言います。このシステム1と2こそが、題名にもなっているファスト(高速)・スロー(遅い)システムと言うそうです。
僕達人間は元来、物事を考える上で計算量が無限大にならないように、日々情報をうまい具合に圧縮して生きています。

この時情報圧縮に使用されるシステムが、高速システムであるシステム1です。
このシステム1にはいくらかの特徴があります。

1 完全に自動運転である
2 自動ゆえ省エネである
3 現在と過去の情報をもとに辻褄の合うストーリーを作る
4 ストーリーのもとに過去の情報を織り込むためバイアスがかかる
5 ストーリーに辻褄があっていれば、内容の真偽は問わない
6 平均化・典型化・一般化が得意である
7 見たもの全てを「真」とする
8 わかりやすいもの・思い出しやすいもの・頭を使わないものが好き
9 感情に引っ張られやすい

細かい特徴はまだまだありますが、上の特徴をまとめるとシステム1は「短時間で結論に達するための脳の短絡システム」と言えるでしょう。
実際に一つ一つの出来事を、真剣にウンウン考えていたら、時間がいくらあっても足りません。
仮に「そこの醤油取って」と頼まれたとして、「そこ」や「醤油」という単語の定義の吟味から始める人なんていないでしょう。そのあたりの定義は一般化・典型化で補っています。
頼みに対する答えとしては、せいぜい感情に任せて「嫌だ」とか「良いよ」なんて言ってみるもんでしょう。
そして、このような超速圧縮を行う時の仕様上のバグとしてバイアスが出現するそうです。

変わってシステム2です
システム2はいわゆる「理性」と言われるものに近いです。こいつの特徴は、システム1より緻密に言及されていませんでしたが、ざっくりいうと

1 ロジカルで論理的整合性を重視する
2 クソ燃費が悪い
3 疲れてすぐ停止する
4 頑張って起動しないと動かない
5 基本的にはシステム1を監視している
6 システム1を監視はしているが、ずぼらでセキュリティ甘々

こんな感じです。
僕達人間の論理性はとにかく疲れるもののようで、できることなら真面目に物事を考えたくないようです。口開けてぼんやり生きていたいのでしょうね。


■利用可能性ヒューリスティクス

ヒューリスティクスとは、心理学用語らしく、人間が楽をするためにやる思考の短絡だそうです。(ウィキではこうなっています)このヒューリスティクスには、ほぼバイアスがセットになってやってきます。要は雑な答えには、必ずその人の勘違いが付随するということですね。
コレは上で紹介したシステム1の仕業です。
で、彼が発見したヒューリスティクスで「利用可能性ヒューリスティクス」というものがありました。
こいつはある出来事の思い出しやすさが、その評価に影響を及ぼす特徴だそうです。

例えば最近テレビによく出るの芸人は面白く感じるし、テレビに出なくなるとつまらなくなったように感じるアレです。別に面白さは変わっていなくても、思い出しにくくなった結果評価が低くなったという例です。

逆に考えると、今僕達が大成功だと思っているものや、偉大だと感じている諸々が、実はそう語られ過ぎて思い出しやすくなっているせいで、評価が上がっているだけなのかもしれないなとか思いました。

■平均への回帰とバイアス・自信過剰

この部分が個人的に非常に好きなところです。
「平均への回帰」という言葉があるそうで、株式など相場の世界や、統計・確率の世界ではよく語られる言葉のようです。
簡単な話が、偏ったものは必ず平均に戻ろうとするということです。
世界の修正力みたいなもんかもしれませんね。

この部分の面白いところは、じゃぁ僕達人間が何かを選択するときは、きちんとこの平均確率に則って判断しているのかという疑問です。

答えから言うと、それはないそうです。むしろ大体はバイアスの影響を受け「自分こそは正しい」と自信過剰になり、常に平均以上の無茶をしては、大成功したり、大失敗したりしています。端的に言ってアホです。
この章では、たくさん学ぼうが、どれほど努力をしていようが、社会で評価されていようが、人の判断は常に世界を予測しそこねるという絶対的な絶望を示してくれています。だからこそ僕はこの章が大好きです。

自身の思い上がりを見つめられる良い章だと思っています。


■結局何が面白かったのか

色々話が散って申し訳ないですが、結局何が面白かったのかというと、僕達がいかにアホかということをコレでもかというほど、実験ベースで示してくれているところが、この本の興味深い点です。

ともすれば僕達はすぐにわかった気になって、若者や幼子にクソみたいな説教をたれ、他人を値踏みしますが、それこそがバイアスまみれのクソ判断にほかならず、むしろ世界の真実から最も遠い点に身を置く愚行なのだと言うことが良くわかります。

僕達はどれほどあがいても賢くならないし、明日も明後日も愚か者です。
だからこそ日々研鑽し、謙虚に生きて行くことがなんとなく幸せになれる方法の一つかもしれないということに気づけたことがこの本から僕が学んだことです。


っと、今日もアレな文章でしたが、ここまで読んでいただけた方々に感謝します。
おやすみなさい。

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