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英国のナチュラルライフ:田舎の村の暮らし編

ガーデンは田舎にあり!

私がイギリスで住んでいたところは小さな町や村ばかり。
なぜなら、ガーデナーという仕事は大きなお屋敷に使え、敷地内に住むことが多いからです。その大きなお屋敷は、家だけの話ではなく、エステイトと呼ばれるむ渡す限りの領地があり、その一部に邸宅があるということがほとんどです。
私が住んだ地域のほとんどは、このエステートが連なり切り売りがされていないため、昔ながらの美しい風景が残されている地域でした。

エステートごとに色が決まっていて、例えば私の仕えた ウォデスドン(waddesdon)エステートは紺色、ウエスト・ディーン(West Dean)エステイトは緑色、お隣のカウドリーエステイトは黄色にドアや窓枠が塗られているので、どの家がどのエステートに属していて、建物を見れば今どどこのエステイトにいるのかが道を通りながらわかります。
それらの色で分けられた家は、昔はお屋敷で働く人たちが住んでいた家だと聞きました。

イギリスの村暮らし

もちろん、小さな規模の家で数人でガーデニングをすることもあります。

最後に住んでいた村はフィトルワースFittleworthという人口は千人に満たない小さな村でした。
小さめな敷地で、ガーデナーズ・コテージ(社宅的な庭師用の家)は敷地内ではなく、村の中にありました。
お屋敷の外に住むのは、セキュリティーを通ったり、監視カメラにいつも写っているのを意識したり、お友達を呼ぶのに許可を取る必要もなく、とても気楽でした。

今まで住んだどの村も美しく、好きだったのですが、このFittleworthが一番大好きです。
この村はサウスダウンという丘陵地の森や川など自然に囲まれたとても美しいところでした。
村には郵便局を併設したヴィレッジショップ(萬屋)が一件、パブが一件あるだけ。
ヴィレッジホールと呼ばれる公民館が一件。

これを見ると、私の住んでいた地域は人よりも羊が多く、緑だらけなのがよくわかるかと思います。
紫の円が私の住んでいたWest Dean(左)とFIttleworth(右)。赤い円は近くの町。

近くには車で10分圏内にペットワースPetworthとプルバラPulboroughという小さな町があり、どちらもお店が10件くらいあって、お肉やお野菜や文房具など、最低限の小さなものは買うことができました。

車で30分くらい走らせれば、ミッドハーストMidhurstやチチェスターChichesterというそこそこ大きな町があります。といっても、まっすぐお店によらずに歩いたら20分もかからずに通り抜けられるくらいの規模です。
どちらも歴史的な風景が目の間に広がる、とても可愛く、美しい街です。
スーパーや洋服などの買い物、映画やボーリング、食事などの娯楽を楽しむにはここまで行きます。
なので、東京に住む今ではなんだかびっくりしてしまうけど、イギリス暮らしてお買い物に行ったり、友達に会いに行ったりするのに車で20−30分というと結構近くな感覚です。

チチェスターはこのマーケットクロスを中心に東西南北に商店街が伸びています。
後ろに見えるとんがり屋根はチチェスターの大聖堂。

そんな田舎で退屈しないの!?

とはいえ、わざわざ遠くにいかなくても近所の小さな町のスクエア(広場)では、サーカス、移動遊園地、ケーリーバンド(フォークダンスを踊るためのライブ)が来たり、マーケットが開かれたりと、田舎ならではの楽しみがたくさんありました。
特に夏はイベントが次々あって、ワクワクする季節。

私が一番楽しみにしていたのはケーリーと呼ばれるダンスパーティー。
初めて体験したのはアイルランドでした。
フィドル(バイオリン)、笛、太鼓などが奏でる軽快な音楽に合わせて、二人組になったり、輪になってみんなで踊るダンスです。
『タイタニック』の映画で貧乏な人たちがお酒を飲みながら陽気に音楽に合わせて踊っていたシーンのイメージです。
曲の最初にいくつかの動きを教えてくれて、みんなで動きながら確認し、それが1曲の間に繰り返絵されるので、初めての人でも簡単に楽しめます。
私はその頃はダンスは苦手だしやったこともほとんどなかったので、できなくて間違ってめちゃくちゃになることが面白くて、楽しくて、ずっと笑いながら動いていました。踊れるようになると音楽に合わせてステップが踏めて、パートナーチェンジも「こっちおいでー」と叫ばれなくてもスマートに移動できたりして、それはそれでまた違った楽しさがありました。

りんごのイベントでは、家にあるリンゴの木から取れたリンゴを持ってくると専門家が品種を判別してくれるコーナーもありました。私にはどこで見分けているのか、さっぱりわからず…

働いていたウエスト・ディーン・ガーデンズでは、ステージを組み上げて演劇を見るオープンエア・シアターで『真夏の夜の夢』や『ロミオとジュリエット』の演劇を見る日があったり、チリ・フィエスタ!という唐辛子とラテン音楽や文化のフェスティバル、トマトやリンゴなどその時の収穫物をお祝いするイベントがあったり、近くのペットワースハウスでは、トレイラーをステージにライブがあったり、クラフトショー(アートのマルシェのようなもの)を行ったりもしていました。


ライブをピクニックしながら見ているのは初めだけ、しばらくすると総立ちでダンスタイムに!

各村のビレッジ・ホールでは、季節ごとに家で咲いた花や育てた野菜を持ち寄り、品評会をするフラワーショーをしたり、村中のガーデン自慢が自宅の庭を一般開放するオープンガーデンもありました。
Petworthは文化的なイベントが多く、クラシックミュージックのフェスティバルがあったり、月に一度映画会があったり。

どのイベントに行っても思うのはコミュニティーをとても大切にしているということ。普段お仕事と家の往復しかしていない人も、この日は御近所さんと挨拶したり、立ち話したり、一緒にお茶を飲んだり、ケーキや軽食を食べたりする日なのです。
きっとテレビやインターネットのない昔から続く、娯楽や文化なのでしょう。

先に書いた映画のイベントは参加費は5ポンド。
初めて参加した時は衝撃だらけでした!

なぜなら、、、

参加者の人たちは手にワインや食べ物、贈答品などを持ってきていました。そして、入り口では映画のチケットとは別なチケットをみんな買っているのです。私は何やらよくわからないので「結構です」と通り過ぎました。
映画が始まり、楽しく見ていると、映画のいいところでブチっと切られて「休憩です!」という声を聞いたときはとても驚きました。映画会なのに最後まで見せてくれないの!?と。
この休憩、実はある意味一番のメインイベントです。
お茶とビスケット(日本ではクッキーと呼ばれるもの)が配られ、「あら、こんにちは」とお話が始まります。そしてしばらくすると「ラッフルチケットの抽選会が始まります!」と声がかかり席に戻ります。
司会が「34番!」とか「21番!」とか番号を読み上げます。
呼ばれてた人は前に行って、欲しいものを選んでガッツポーズをして席に戻ります。
入り口で買っていたのは、この抽選会のチケット。
みんなが持ってきていたものは、この抽選会の商品になるものだったのです。

後から聞いたところによると、いらないものを持ってきて賞品にしチケットをみんなで買って楽しむことで、チャリティーになり、集まったお金を寄付したり、村の大切なものを買ったり、建物を直したりすることに使うのだそう。
ワイワイ、ガヤガヤと抽選会が盛り上がり、ひと段落すると後半の映画が始まりました。

私が働いていたお庭のフラワーアレンジメント用の花を育てる花壇「カットフラワーボーダー」

平日の夜は毎週曜日ごとに同好会のようなものがお教室がありました。
私は水曜日のフラワークラブ(フラワーアレンジメント)とボールルームダンス(社交ダンス)に参加していました。
どちらも参加費は5ポンド。

ダンスは地元に住むブラックプールのコンテストで入賞したことがあるというご夫婦が先生でした。

フラワークラブではお花は家に咲いているものを持ち寄り、交換し、アレンジメントをしてみんなで品評会、先生からアドバイスをいただきます。
教会で結婚式があったり、式典があるときは有志が教会のフラワーデコレーションを行うとこともありました。
お花好き、ガーデン好きの集まりなのでみんなお庭になんらかの花があるようです。

どのイベントも、コミュニティーや仲間を大切にするために行われ、先生たちからは「コミュニティーに自分のスキルを提供し楽しんでもらおう」という気持ちを感じました。
イベントに参加するたびに、知り合いが増え、声をかけてくれる人が増え、村暮らしが充実して行きます。
イギリス人は外面はよく、でも内向的。観光客には優しいけど引越しをしてきた知らない人には冷たい、だけど仲良くなるととても暖かい人が多いという印象。

そんな田舎でほとんどお金を使わず、助け合いながら長いこと暮らしていた私が、東京暮らしで「お金を稼ぐ」というマインドになるのはなかなか難しく、今もなおちょっと苦戦しています(笑)

今住んでいるところでは、ご近所さんとすれ違ってご挨拶しても、変な顔されたり、下向いて無視されたりしますし、ちょっと駅の方に行くとすれ違う人に挨拶していたら前に進めないくらい人がいっぱいいたりします。

隣に住んでいる人の顔もわからないということに最初はとても気持ちが悪い思いをしていましたが、人間は慣れるものなのですね。
今はそんなことは全く思わなくなり、きっとご近所とお当番で何かしなくてはいけないと思うとなんとなく煩わしさも感じてしまいそうです。

それだけ今は気持ちにも、時間にも、余裕がない生活なのかもしれません。

この文章をイギリスの生活でお気に入りだった部分を思い出しながら書いていました。
どんな暮らしが理想なのか、改めて考える機会になりそうです。
皆さんはどんな暮らしがしたいですか?
イギリスの田舎の生活が何かのヒントになれば嬉しいです。


私を耕しながらココロとカラダを健康に導き、美しい花を咲かせましょう!
ナチュラルライフガーデナー Madoka