働き方改革

古典で学ぶ働き方改革①(王道のマネジメント)

たまには古典を勉強しようと思い1冊の本を手にしてみました。『ビジネスに効く教養としての中国古典』(守屋 洋著・プレジデント社)という本をkindleでポチっとしてみました。

中国古典でパッと思いつくのは「孫子」や「論語」かなと思いますが、我々が知っている多くの中国古典の関心事は、高い成果を上げる集団をつくることにあったような気がします。ということは、働き方改革が叫ばれる昨今に聞くような先人達の知恵もきっとあるはずと思い、そんな観点でいろんな古典を読んでみようかと思います。

古典の読み方

守屋氏の著書の中に、『漢書芸文志』という前漢(紀元前206-8年)の時代の転籍を分類・記録した書物の中から以下の言葉が紹介されています。

短を舎て長を取れば、則ち以って万方の略に通ずべし

それぞれの短所を捨て、長所を吸収すればどんな事態にも対応することができるということですが、古典から何かを学ぶときの心構えだと思います。どの様に優れた知恵であっても、長所と短所があり、あらゆる状況に通用するような万能の答えは決してありません。古典として古来から今に伝わる知恵はとても優れたものであるから現在まで伝わっているわけですが、1つの書物に執着してしまうと痛い目にある場合もあります。適用できるシーン、適用できないシーンを考えながら先人の知恵を吸収していくのがよいのではないかと思います。

チームマネジメントの神髄は孟子にあり!

『孟子』とは、戦国時代の思想家である孟子(紀元前372?~289年)の思想を弟子たちがまとめた書物です。


力を以て仁を仮(か)る者は覇なり。徳を以て仁を行う者は王たり。

孟子は孔子の教えを受け継ぎ、儒教では孔子に次ぐ重要人物です。諸国を遊説するなかで、人は元々「仁(人を憐れむ心)・義(自分の不正を恥じる心)・礼(人に譲る心)・智(是非の心)」の四つの徳を持っているという「性善説」を主張し、「王道政治」を唱えました。

「王道政治」とは四つの徳のうち仁義を重んじるもので、思いやりを持って治める政治で、対義語が「覇道政治」、力で抑える政治です。孔子の教えを受け継ぐ荀子(紀元前313?~紀元前238年以降)は孟子とは対照的で、「人の性は悪、その善なるは偽なり」と性悪説を唱え、礼儀を重んじる「覇道政治」を主張しました。(荀子については、また後日紹介します。)

徳をもって治めることで自ずと治世は安定するという考え方ですが、働き方改革に置き換えて考えると、「王道」によるマネジメントが自ずと成果に向かうチームを作ると読み解くことができると考えます。では、チームマネジメントに効く孟子の言葉を以下に紹介していきたいと思います。


万物みな我に備わる。身に反して誠なれば、楽しみ、焉(これ)より大なるはなし。

全て(仁義礼智)は自分自身に備わっている。自分自身に目を向けて誠であるならば、それ以上の楽しいことはない。つまり、自分の本当の心に従って行動するとき程楽しい時はなく、その時人間は自分が本来持ち合わせている「徳」に従っているということです。生産性が高いチームとはメンバーが楽しみながら自分の力を十分に発揮できる環境にありますが、もし、自分の心を偽らなければならないような場所であれば人はもともと備わっている「徳」を発揮できず、手を抜いたり不正をしたりしてしまいます。昨今、日本企業の不正が頻繁にニュースになっていましたが、組織の論理を重んじるあまり本来の「徳」を発揮できない環境にあったのではないでしょうか。それとは対照的に”心理的”安全性”を重んじている企業は、従業員が楽しく働きながら高い生産性で成果を上げています。


為らざるなり。能わざるに非ざるなり。

能力がないからできないのではなく、やろうとしないからでないのだ。成果の上がらないチームメンバーの成果が上がらないのは能力がなく「自分にはできない」とあきらめてしまい取組めていないという場合が多いと思います。そういうメンバーを放置してしまうと、できないまま成長がないだけでなく、場合によっては思い悩んで心を病んでしまうケースもあります。高い成果を生めるチームを作っていくためには、そういったメンバーをどの様にサポートしていくかがとても大切な課題となります。リーダーはメンバーの悩みに寄り添いながら「諦めなければ必ずできる」という自己効力感を高める対話をし、根気強く育てていきましょう。


至誠にして動かざる君は、いまだこれあらざるなり。

こちらが至誠の心で接すれば、どんな相手でも動かすことが出来る。上述のように根気強く育てる時など、チームメンバーとの対話の際に常に心掛けておきたいですね。


自ら反みて縮(なお)からんずば、褐寛博(かつかんぱく)と雖も、吾おそれざらんや。自ら反みて縮くんば、千万人と雖も、吾往(ゆ)かん。

自分を省みてやましいことがあれば地位の低い相手に対してもひるんでしまう。省みても正しいと確信できれば、相手が千万人であろうと、立ち向かっていく。至誠の心とも通じることですが、チームメンバーに対話するとき、嘘があったり変な誤魔化しをしようとすればする程、自身をもって相手に伝えることができず、それは相手にも見透かされてしまいます。自分が筋が通っているものか考えを繰り返し問いかけ、自信をもって正しいと思えるのであれば、始めは意見の対立があったとしても、誠心誠意説明すれば、必ず伝わります。仕事の中では仁義が通ることでもあっても相手が受け入れがたいことは必ずあります。重要なこと程その様な対立があるものです。そこで対立を恐れて誤魔化しをするのではなく、正しく筋道を立てて説明し対話を繰り返せば、相手はどこかで理解を示してくれます。

私も昨年は従業員に大きな変化を求めました。従業員をより豊かにしていくためにはどうしても必要なことでしたが、当初は中々受け入れてくれませんでした。そこで、個々に従業員と対話し説得を試みました。結果として、全員の合意を得られたため、現在は不満もなくその施策は実施できています。


まとめ

以上は、孟子の思想のほんの一部ですが、ディール組織のような自律的に目標に向かうチームを目指すのであれば孟子の「王道」にはその真髄が含まれています。ですから孟子については更に勉強して近いうちに更に参考になる言葉をまとめていきたいと思います。では、荀子の「覇道」は読む価値がないかというと、そういうこともなく、とても参考になるシーンがあると思ってますが、そのうち荀子についてもまとめめていきたいと思います。

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