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夏目漱石「倫敦塔」「琴のそら音」

漱石の主要な作品は読んだのですが、全作品を読んではいません。
ポツリポツリと未読の作品を読んでゆきたいと思っています。

今回は、初期の短編小説「倫敦塔」、「琴のそら音」を読んでみました。

物語の概要は以下のとおりです。

倫敦塔
漱石が英国に留学しているときに訪れた倫敦塔から受けた印象を幻想的に描いています。
王侯の権力闘争の結果として、留置場や処刑場でもあった塔の陰惨さが感じられます。
詩情はありますが、漢文調なところもあり重厚さを感じます。

琴のそら音
インフルエンザに罹患した友人との会話で幽霊のことが話題となります。
自分の婚約者が熱を出していることもあり、土砂降りのなか家に帰り、心配して翌日彼女の家に行くとすっかり良くなっていました。
友人との会話、家での下女の婆さんとの会話、婚約者との会話など軽妙さを感じます。

この2作品は、明治38年に「吾輩は猫である」を執筆中に発表されています。
まったく作風の異なるこの2作品ですが、その後の漱石の作品をすでに読んでいるので違和感はありません。
しかし、「吾輩は猫である」も含めて3作品を読むとこの作者は、いったいどのような小説家になるのか、この時点では計り知れないように思われるのではないでしょうか。
たぶん、この3作品は小説家としての素質のカタマリのカケラなのかもしれません。

わたしの個人的な趣味としては、「琴のそら音」の人物の描き方が面白く、特に婆さんの描き方などリアルで目に浮かぶようです。

漱石の幼児期の環境が垣間見れるようで興味深く読みました。


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