鋳物オープンイノベーション その2
前回までの振り返り
前回、「鋳物オープンイノベーション」についての記事を投稿しました。この記事を書いてみたことで、いくつかの課題が明らかになりました。それは以下の点です。
オープンイノベーションで何を引き起こすのか?
オープンイノベーションを当社のビジネスとしてどう活かすのか?
今回の記事では、上記の2点についてさらに深掘りしていきます。一回では書ききれない内容ですので、数回に分けた連載として投稿いたします。お楽しみに!
鋳物オープンイノベーションとは?
鋳物オープンイノベーションとは、鋳物メーカー、業界の顧客である機械メーカー、鋳物メーカーの下請けである模型メーカー(当社を含む)、中子メーカー、鋳造業界団体、鋳物を愛する消費者など、鋳物に関連するステークホルダーが共にイノベーションを創り出す活動です。
MISSION
駆け引きから共創へ。
鋳造業界にイノベーション・エコシステムを実現する。
VISION
鋳造業界がものづくりの楽しさと自由、完成の喜びを体現した最先端のイノベーションプラットフォームとなる。
VALUE
分かち合う
未知に飛び込む
支え合う
日本の鋳造業界の現状
中小企業の比率が高い
日本の鋳造業界の93%は従業員数100人未満の事業所です。鋳造業は、中小企業比率が高く、下請け産業的要素が非常に強いです。そのため、技術革新やIT化が遅れているのが現状です。
取引コストとプロセスの複雑さ
企業間の折衝、交渉や事務処理などの取引コストも大きいと考えられます。実際、新型の鋳造部品の立上げプロセスは以下のようになっています。
鋳物メーカーが、模型メーカーと中子メーカーに案件を依頼する
金型メーカーが、鋳物メーカーと要件定義を行う
金型メーカーが、中子メーカーと要件定義を行う
金型メーカーが、中子メーカーの要件を鋳物メーカーにフィードバックして全体の仕様をまとめる
金型メーカーが、鋳物メーカーに見積もりを提出する
中子メーカーが、鋳物メーカーに見積もりを提出する
鋳物メーカーが、模型を発注する
金型メーカーが、主型・中子型を製造する
金型メーカーが、中子型を中子メーカーに納品する
金型メーカーが、主型を鋳物メーカーに納品する
中子メーカーが、中子を試作する
鋳物メーカーが、鋳物を試作する
試作の結果を受けて、金型メーカー、中子メーカー、鋳物メーカーが調整する
鋳物メーカーが、鋳物を量産する
鋳物の製造には模型が必要です。鋳造の模型は主に外形を決める主型(おもがた)と、中空構造を作るための中子型(なかごがた)の最少で2つの型が必要になります。
このように、ステークホルダーが複雑に関連して一つの鋳造品目を開発しています。
中国の鋳造業界
中国ではこのように、15,000社から10,000社への明確な集約の方向性が示されています。
ギガキャスティングの台頭
テスラは、自動車のフレームをギガキャスティングによって一度の鋳造で成形する技術を実現しました。アメリカが先行し、中国の鋳造業界が追従しています。日本ではトヨタが2026年に発売予定の新型EVの車体下部を一体成型とする計画が進んでいます。
ギガキャスティングの導入には巨大な設備投資が必要であり、単独での対応が難しいため、日本の鋳造業界にとって大きな挑戦となっています。
今回のまとめ
日本の鋳造業界は、約93%が従業員数が100人未満の中小企業であり、技術革新やIT化が遅れています。また、中小企業による分業によって一つの製品を開発する産業構造となっています。
このような背景の中、テスラによるギガキャスティングが実用化され、対抗を余儀なくされている状況です。しかし、ギガキャスティングは工場全体の設備投資が必要なため、日本の鋳造業界の構造上、各社単独での対抗が難しいという現実があります。
次回は、「金型メーカーのジレンマ」や「鋳造業界の課題」について取り上げます。乞うご期待ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?