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[9月第1週] DAOレポート Vol.35 | 今、バリデーターが注目される理由とは? 4つのタイプとCosmosの「Governator(ガバネーター)」というアイデア

イントロ

2023年7月、ウィーンでブロックチェーン・インフラストラクチャー・フォーラム(BIF)が開催された。世界中からトップクラスのバリデーターやインフラ提供会社、DeFiやDEXのコアチーム、規制の専門家などが集結し、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)チェーンにおけるバリデーターの役割について議論し、先週末、そのレポートを公開したブロックチェーンのエコシステムにおけるバリデーターの役割が大きいことを認識し、「Governator(ガバネーター)」の導入などガバナンスの部分で役割を再定義する流れを支持した。

なぜバリデーターが大きく注目され始めているのだろうか?PoSチェーンにおいてバリデーターの役割として広く認知されているのは、コンセンサスに基づくブロックの生成とネットワークのアップグレードという役割だろう。実は上記に加えて一部のチェーンにおいてはバリデーターにはガバナンスへの参加という大きな役割が課せられている。とりわけCosmosのチェーンにおいてバリデーターは、上記の「コンセンサス関連の投票」と「ガバナンス関連の投票」の2つをこなしてしまっているケースが少なくない。ただ、問題は全てのバリデーターが上記2つを実施することが望ましいかどうかだ。

バリデーターは、第一義的にはインフラの専門家だ。そのため、ネットワークのアップデートなどコンセンサス関連の投票を任せるのは筋が通る。問題は、ガバナンス関連の投票だ。例えば、Grant(助成金)に予算をいくら割り当ててどの領域を重点分野にするかに関する投票があった場合、バリデーターが適任だろうか?答えはYesでもありNoでもある。現状では両方できるバリデーターは両方やり、できないバリデーターはどちらか一方をやる、もしくは両方やらないというように、バリデーターによってスタンスがバラバラだ。

  1. ユーザーにステーキングサービスを提供する取引所・・・法的な責任に対する懸念等からガバナンス投票に参加しないケースがほとんど。

  2. 企業やリキッドステーキング提供者の代わりステーキングを行うバリデーター・・・的な責任に対する懸念等からガバナンス投票に参加しないケースがほとんど。

  3. 50以上のチェーンで運営する大手バリデーター・・・管理するチェーンが多いことが目的であるため一つ一つのチェーンのガバナンス参加には消極的な傾向。

  4. アクティビスト・バリデーター・・・どのチェーンのバリデーターになるか熟慮しガバナンス参加にも積極的なバリデーター。チェーンの長期的な安定やポテンシャルについて興味があるトークン保有者がトークン委任をするケースが多い。

上記のように少なくとも4つのタイプのバリデーターがあり、3つがガバナンス投票参加に消極的だ。この現状を打破しようと生まれたコンセプトが「Governator(ガバネーター)」だ。

「Governator(ガバネーター)」の役割とは?

Cosmosチェーンの中でもとりわけOsmosisにおいてガバネーターの議論は盛んに行われている。著名バリデーターのNotionalが書いた「The governator manifesto」は必見だ。

ガバネーターは、ガバナンスのスペシャリストだ。ノードを立てて運用する技術的なスキルは求められておらず、ガバナンス投票を主に生業とする新たな集団だ。バリデーターはガバネーターにトークンを委任してガバナンス投票を「丸投げ」できるし、ガバナンス投票を引き続き自分たちで行うことができる(上記のアクティビスト・バリデーター)。ガバネーターの仕事として挙げられているのは以下の通りだ。

  • グラント(助成金)の差配

  • 今後の方向性の話

  • 各タスクへのインセンティブの付与

  • 他のチェーンとのパートナーシップ

  • インフラ運用に直接関係ない新たなイニシアチブ

ガバネーターの概念は新しく実施しているチェーンはまだない。ただ、ステーキングをする際に、短期での利回りだけでなく、長期的なトークンのポテンシャルを見る上で重要な要素になるかもしれない。また、ガバネーターへのインセンティブ作りが課題だが、誰がガバネーターに適しているのかの議論も今後重要になるだろう。

注目のDAOトピック

  • 💬 dYdX - V4 ローンチインセンティブ提案

    • Chaos LabsはdYdX v4のローンチインセンティブプログラムを提案。v3からv4にユーザーを移行するためには追加でインセンティブを設けることの重要性を主張。

    • 同プログラムの目的は、V4への資金と流動性のユーザー移行を奨励すること。

    • $DYDXトークンの20M USD相当をV4の初期利用者に分配することを提案。

    • プログラムの期間は約6ヶ月。

  • ⚡ Arbitrum - Arbitrumのガバナンスにおける時間管理

    • この提案は、Arbitrum DAOの投票プロセスの合理化を目指している。

    • すべてのSnapshot投票は、毎週月曜日に開始されるよう提案されている。

    • 提案の目的は、DAO内の効率と組織を最適化すること。

    • 提案の公表に対して一貫した周期を確立することで、DAO内の効率と組織を最適化することを目指す。

  • 📝 OptimismがBaseとのパートナーシップの詳細を公表

    • Optimism Foundationは、Baseとのパートナーシップの詳細をブログで公表した。

    • 米国上場の取引所であるCoinbaseがOP Stack上でBaseを構築し、利用者数が急増している。

    • OptimismとBaseとのコラボは、共有のプロトコル管理原則に焦点を当てており、財務的な取り決めとして、Optimisumの「Collective」に向けた手数料の分割や、Baseに対して「Optimism Governanceのシステムで意味のある声を持つ」ための長期トークングラントが提案されている。

    • このパートナーシップは、最近導入されたChainsの法則がどのように機能するかの具体的な例を提供している。Chainsの法則は、「Optimism Governanceが、OP Stack(Baseを含む)から生み出された複数のOP Chainsを監督する方法を進化させるために提案されたフレームワーク」である。

  • Aave: TokenLogicの提案

    • TokenLogicをAaveコミュニティのサービスプロバイダーとして採用することを提案している。Aave DAOの財務管理および独自ステーブルコインGHO採用の促進が主な任務となっている。

    • 2020年半ばからAaveプロトコルへの貢献の歴史があり、財務報告の改善、GHOの流動性/インセンティブ管理のサポートを目的、Safety moduleの改善を目指している。

    • 初期の6ヶ月間に350,000USDの予算を要求。

    • この提案は、9月7日に86.57%が「yae」に投票して承認された。

  • 📝 AaveやCoinbaseなどRWA推進に向けてTokenized Asset Coalitonを立ち上げ

    • RWA(現実資産)と呼ばれる伝統的な金融資産をブロックチェーンに載せてトークン化することが大きな目的。

    • 金融教育、資産のトークン化、機関投資家のDeFi(分散型金融)利用でサポートすることを目指している。

    • 参加企業は、Coinbase、Circle、Base、Aave Companies、Centrifuge、Credix、Goldfinch、RWA.xyz

    • RWAのトークン化は、「次の数兆ドルの資産」になると見られている。

話題のTweet

先週韓国で開催されたKBWにdYdX FoundationのCharlesとHisashiが参戦。Keplrをはじめ韓国の優秀なCosmosプレイヤーに会えたみたいです!

トレジャリーデータ

DeepDAOによると、9月11日時点でDAOトレジャリーの総額は182億ドルと前週比で1.62%減少した。内訳は、流動性のある資産(Liquid)が155億ドル、権利が確定していない資産(Vesting)が23億ドルだった。
ガバナンストークン保有者は730万人で、アクティブDAOユーザーは260万人だった。

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