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エンジニアの私が、 「アート思考やデザイン思考」を学ぶ理由。

■まえがき「エンジニアリング」と「デザイン」。
精緻さと曖昧さ、効率と感性、計算と直感……。
そこには、一見相容れない価値観が流れているようにも思えます。
もう少しいえば、エンジニアの皆さんのなかには、
あえて「デザイン」という言葉を避けているという方も
いるかもしれません。

そんななかで、いまなぜ、日本のものづくりを支えるエンジニアの
リーダーたちは「広義のデザイン」を取り入れはじめているのか。
どんな危機感を持ち、何をめざそうとしているのか。
そして、どんな行動を実際に起こし、どう乗り越えようとしているのか。

多様な専門スキルを持つプロフェッショナルたちが
自身の活躍の場を拡げるために集い、
「広義のデザイン」を学びあう「DXDキャンプ」。
今回、さまざまな分野・エンジニアの方に向けて、
『エンジニアによる「デザイン」活用のリアル〜変化の谷を乗り越えていくために〜』と題したオンラインイベントを開催し、
特に、大企業の内側から「デザイン」の力で変革を起こそうと
活動している3人のエンジニアの皆さんに
プレゼンテーションを行っていただきました。

リアルな体験や気づきのエピソードを通して、
「デザイン」を知る意味を、皆さんと共有させていただければ幸いです。




『だから私は、 
アート思考やデザイン思考を学ぶ』

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パナソニックシステムデザイン
明石 太陽氏

プロフィール
立命館大学 理工学部土木工学科卒業。社会人になってから独学で情報処理領域を学びシステムエンジニアの道へ。2007年パナソニックシステムデザイン(株)に中途入社。現在は主にキャッシュレス決裁端末のシステムエンジニアリングを担当。アートシンキングファーム Bulldozer/NewsPicks NewSchool有志アルムナイ(RGN)/Panasonicデフ(deaf)会 運営メンバー。

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■なぜ日本企業は世界最高の技術や
ものづくり精神を持っていながら、世界で勝てないのか。

明石太陽氏(以下、敬称略):つい先日、世界最大のブランディング会社であるインターブランド社が「Best Global Brands」の2021年版を発表しました。有名ブランドだからといって、必ずしも良い製品・サービスとは言い切れませんが、ブランド力の向上はデザイン経営の中でも、企業競争力の向上に寄与する要因のひとつとしてあげられています。

そのランキングを見てみると、TOP100内にランクインした日本企業はたった7社。これはシンプルに寂しいですよね。日本企業が世界で勝てない理由については、私はこう思っています。

 <日本企業が世界で勝てない理由>
  ●日本の技術神話を猛進して殿様商売に甘んじている
  ●過去の成功体験に安住している
  ●デザイン/DXに対する取り組みが遅れている
  ●他国企業の邁進を過小評価している
  ●アジア新興国市場の台頭など世界潮流を見極められていない
  ●グローバル人材が少ない

明石:特に、戦後の大量生産大量販売で輝かしい復興を遂げた成功体験は、いまも日本人の潜在意識の中に根強く残っていて、既にコモディティ化してしまっている市場においても高性能高機能を追い求め、価格競争の波にいまだ飲み込まれてしまっているのではないでしょうか。

一方世界では、製品やサービスを構想段階から「デザイン」することで、「高性能・高機能以外の価値」を与え、その魅力を際だたせることが求められる時代へと変わってしまっています。

私は、エンジニアとしてそうした時代の変化に対応したいと考えるようになりました。製品やサービスを作る(カタチに落とす)エンジニアから、そのもっと上流の価値から「デザイン」できるエンジニアになりたいーーーそれが、自分自身のビジネスパーソンとしての価値を高める方法のひとつになる。そんな想いから2020年度にスタートした、デザイン思考やデザイン経営をベースに高度デザイン人材へと深化する実践型リカレントプログラム『高度デザインブリッジスクール※』に参加を決めました。
 ※『DXDキャンプ』の前身として2020年秋冬に開講。


■QCDを進めることが、エンジニアを不要にする?

明石:エンジニアとしてデザインスキルをアップさせていくためには、従来のエンジニアスキルを見つめ直す必要があると、日々感じています。

皆さんよくご存じの通り、エンジニアリングの王道は「QCD(Qullity/品質、Cost/コスト、Delivery/納期)です。実際には、「品質」への要求はどんどん向上し、「コスト」と「納期」だけがどんどん削減短縮されていっています。そして、その「コスト」と「納期」の究極の削減短縮手段は?というと、AIなどによる「完全自動化」なのではないでしょうか。

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だからこそ、この呪縛から抜け出し、クライアントの経営・業務課題の本質を見極める上流工程に着目し、それらの課題を解決するためのシステムのデザイン、企画設計力をアップさせ、新しい価値を提供できるようになることで、差別化が図れるようになるのではないでしょうか。
ここに必要なのが「デザイン」というスキルだと考えています。


■すぐには結果は出ないのが、現実。

そういった新しい分野、領域に挑戦するには、自分たちだけ、自社だけでは困難です。そこで私は社外講師の方をお招きし、社内でアート思考やデザイン思考を学べるさまざまな勉強会やワークショップを計画し、開催してきました。

その一つひとつ、一回一回は、確かにとても学びがありました。参加メンバーにアンケートをとっても、そうしたワークショップや勉強会の直後は、新しい気づきや前向きな声などが多く寄せられました。

しかし、本当に身になっているでしょうか。デザイン思考、アート思考といったものは、従来型の手順が明確な手法やツールの導入とは異なり、すぐには結果が出にくいというのが「現場のリアル」です。
また、単発ではなく、継続的に取り組んでいかなければ、社内に文化として浸透させていくことは難しいことも理解しました。

そこで、私は文化を醸成する仲間を増やすために「コミュニティデザインスキル」も重要だと考え、次のステップとして社内のワークショップ参加者以外も含め、自由に意見交換ができるアートシンキングチャネルを開設しました。

また、「コミュニティデザイン」の実践を求めて、パナソニックグループに在籍されている聴覚障害者コミュニティの運営メンバーになるなど、社内・社外を問わずさまざまなコミュニティにも積極的に参画。そこでの経験を先のチャネルを通じて発信していくことで、文化の醸成につなげていこうと考えたのです。
実際は、毎日投稿してみるものの、当初はほとんどノーリアクション。社内文化を醸成するには、かなりの労力と時間がかかる、というのがリアルな状況です。

コミュニティづくりとは別に、新規事業のビジネスデザインにも取り組みました。これはクライアントの経営課題や釈迦課題を、ビジネスで解決するシステム構想という、上流家庭への挑戦でもあります。
社外のビジネスプログラム・コンテストなどにも積極的にエントリーしましたが、落選も多々経験しました。とはいえ、最終的にビジネスまで結びつかなくとも、挑戦し続けることで、従来の業務だけでは不足している「デザインスキル」の重要性を自覚することができたと思っています。


■「デザイン」を定着させるには、
「デザイン」以外も変える必要がある。

明石:このように自分のめざすエンジニア像を実現するために、さまざまな学び・活動を行ってきましたが、従来の型を抜けださなければならない時には、社外の力を積極的に活用するというのも有効な手段だと思います。

その一つが、今回の『DXDキャンプ』だと思います。
 ●広義のデザインレクチャー
 ●ワークショップ
 ●フィールドワーク
 ●参加者コミュニティ
といった「理論」と「実践」と「共有」がそろったプログラムだと思いますし、まさに私が「デザイン」を学び、文化として会社に根付かせるために必要だと考えたスキルが網羅されていました。

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■最後に。

明石さんからのメッセージ

与えられた仕事を、早く、正確に、こなすエンジニアから、
アーティストが作品を創り出すように、
自分が熱中できる仕事を、「デザイン」できるエンジニアへ。

アーティストのような独特の感性と
広義のデザインスキルを持ったエンジニアになりたい。

だから、私はアート思考やデザイン思考を学ぶ。

(おわり)

DXDキャンプより
エンジニアとして、ジブンの力を最大限発揮し熱中する仕事を生み出すため、様々な学びと実践を進める明石さん。穏やかで優しい語り口とうらはらにパワフルさがみなぎる発表内容に、視聴のみなさんからは「エネルギーをもらった!」という声も寄せられました。
「文化を変える」ことには大きなエネルギーが必要そうに見えますが、明石さんを見ていると、実はたったひとりのアクションこそがそのスタートになっていくのだと実感します。
この記事は、2021年11月24日に行われたオンラインイベント「「DXDキャンプ」エンジニアによる「デザイン」活用のリアル。変化の谷を乗り越えるために」を書き起こし、再構成したものです。イベントアーカイブはこちらから https://www.youtube.com/watch?v=0sYpRD5h3Xw 

DXDキャンプ 

公式サイト https://dxdcamp.com/

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