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ボトルチェーンの法則

東京で働いていた時代の昔話である。ITエンジニア発、なれの果ては営業というのがこの業界の常なのだろうか。中にはフェローみたいな超ヲタク系の人を除いて、年を取ると営業に回される。

「IT業界の人ってコロナでも自宅で仕事できるからいいね」と言われることが少なくないが、そんなことは決してない。IT業界の営業はスマートなイメージがあるのかもしれないけれど、基本的にはその多くが「ドブ板営業」である。

かといって、「ヘタな鉄砲数打ちゃ当たる」みたいなことはあまりなくて、プレセールス部隊があって、新規の見込み客の掘り起こしはそちらが担当し、そこから営業が繋いでゆくみたいな分業制になっているのは少しマシな気がする。

何社か法人営業を担当してきたけれど、基本的には新規顧客開拓や新規の販路開拓ばっかりやらされてきたので、売上を安定して上げてゆくのには本当に苦労した記憶しか無い。とはいえ、自分は営業に向いてないなとずっと思っているところがあって、そこが個人的に詰めの甘いところだったのかもしれない。

営業と言えば接待?

営業と言えば接待と相場が決まっている。一時代はこの業界もいわゆる「呑ませ食わせ」の接待漬けの時代があって、ある意味「既得権」的な要素が強かったのは事実である。

私自身は技術畑出身ということがあったからなのか、そういったシーンはそれほど好きではないというか、馴染めないところもあったけれど、とはいえ接待すらできない営業というのも芸がなさすぎるので、それなりに努力はしていた。

まず、自分自身のポリシーとして「契約していただいたお客さま」を接待することを徹底していた。商談を獲得していないのに接待する営業も少なくないが、実際会社にお金を振り込んでくれるお客さまにならなければ接待はしない。

当たり前といえば当たり前の話だが、つい売上欲しさに接待してしまう営業も少なくないのである。

身銭を切って店を開拓する

あるあるの話なので、あえて言うことでもないが、馴染みの店を作っておくほうが何かと融通が利いて良いことが沢山ある。自分で開拓することも多かったが、一番役に立ったのはクラブなどで知り合った女性からお勧めの店を聞き出すことである。

そして、お勧めの店に一緒に行ってもらい、店長を紹介してもらったり、お勧めのお酒、料理なども教えてもらう。気に入ったらお客さまを招待してみて反応を確かめる。そうやって自分のバリエーションを少しずつ増やしてゆく。

東京は山手線の駅毎に町が開けているので、事務所からの距離、町の特性、などなど色んなシーンを想定しながら自分の飲み屋マップを形作ってゆく。

どうしても避けられない2軒目のお店

最初困ったのは、1軒目のお店はともかく2軒目のお店のこと。当然、お客さまによっては無心するので、何かネタを持っておかねばならない。2軒目のお店というのは、当然「女の子のいる」お店のことである。

ところで、女の子のお店を取り巻く経済圏というのが存在する。少し考えれば分かることだが、例えばキャバクラの周辺には、必ず「寿司屋」「焼き肉店」がある。理由はわかるだろう。そういうお店同士が互いにお客さまを融通し合いながら小さな経済圏を確立しているのである。

1軒目のお店を開拓しながら、そこから2軒目のお店の紹介をいただいたりして、次第に経済圏を広げてゆきつつ自分なりの「夜のマップ」を作って行った。今思えば懐かしいし、久しぶりに東京に行けば今でも顔見知りのお店は少なくない。

ボトルチェーンの法則

さて、本日の本題である。2軒目のお店に通うようになると1つの問題が発生する。つまり、お店の女の子と顔見知りになるところまでは良いとして、その子がそのお店を退店すると、連絡が入るのである。新しい店の紹介があって、そちらに顔を出してみる。そこでボトルを入れる。

気がつくと、女の子がどんどん店を変わるたびに新しい店にボトルを入れる羽目になる。これが続くと無用に散財が続くこととなりキリが無い。

アンチ・ボトルチェーンの勧め

ということが分かったので、この連鎖を断ち切るためにはどうしたら良いか考えてみた。答えはすぐわかった。

「店の経営者に就く」

ということである。わかりやすく言えば、その店のママと仲良くなるということ。初めて行った店では必ず経営者と話しをする。そこで店のポリシーやコンセプトなどいろんな話を教えてもらう。そのうえで経営者の考え方が見えてくる。

また、経営者と話が通じると、常連客を紹介してくれることもあってお店を通じて人脈を広げる機会にも恵まれるようになった。

こうして私は「ボトルチェーン」の連鎖を断ち切り、投資したお金に見合った恩恵を受けることができるようになった。

とはいえ、銀座などに出入りしていたわけではない。もっと下町っぽい人情あふれる町での思い出である。


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