「女性とともに学ぶWell-being×DX勉強会」第2回テーマ「働き方改革」
地域の企業がDX化に向かい、変革を果たすために、女性の視点事例紹介やニーズの探求を行う「女性とともに学ぶWell-being×DX勉強会」を3回シリーズで第2回は2024年2月2日(金)に開催しました。
第2回は、「働き方改革」をテーマに、ワークシェアの仕組みづくりで女性が働きやすくなる環境を築いている株式会社ケイリーパートナーズの鷲谷恭子さんを迎え、郡山市での実践について伺いました。
【ゲストプロフィール】
鷲谷 恭子(株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役/COO)
1977年郡山市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、1999年にJR東日本に就職。転勤を重ねながら顧客サービス、商品企画、CRMなどを担当する。2007年、第一子の育児をきっかけに退職して専業主婦となり、2009年に郡山市へUターン。2011年の東日本大震災以降は子育て支援や通訳ガイド、まちづくりなどのボランティア活動を行う。2019年5月、1日2時間からの自由度の高い働き方で生産性とスキルを上げるビジネスモデルを構築し、『2hours(トゥーアワーズ)』を開業、同年10月には、税理士法人三部会計事務所とのジョイントベンチャーである『株式会社ケイリーパートナーズ』を設立した。「誰もが調和の取れた働き方で社会とつながっている未来を作る」ことを自らの存在意義(パーパス)として、行政、地域企業と協働し様々な活動にチャレンジしながら、高2と中1の娘を持つ母親として親育ち真っ最中の日々を送る。
働く現場に復帰できないという課題
郡山市で株式会社ケイリーパートナーズを率いる鷲谷さんは、ご自身も郡山市出身で、進学・就職で地元を離れたのちUターンを果たし、専業主婦としてお子さんを育てます。学生から社会人になり、職業人としてのキャリアやスキルを増やした女性が、一度家庭に入ると、職場への復帰に困難を伴うという課題があります。
家庭と仕事の両立という、長らく語られてきたはずの問題は、まだまだ十分な解決が図られていません。今回の勉強会では、「M字カーブの変遷と女性の働き方」と題し、エイチタスからこの課題について基礎的な解説を行いました。
M字カーブ
「M字カーブ」という言葉をご存知でしょうか。働く女性の比率を年代別でグラフに描いたとき、出産から子育てに向かう20台後半から30代後半あたりまでの女性が労働市場から消えることで、その年代が大きくへこんでしまうことで、M字型のグラフになることから、「M字カーブ」という言葉が生まれています。
このM字でへこむ部分を労働力と期待すると、2030年にはおよそ102万人の労働力を得ることができるはずだという予測もあります。
人手不足の社会
一方、労働市場全体を見渡すと、あらゆる領域、地域で人手不足が深刻な問題となっています。過去においては、フル専従で労働時間を提供し、さらに残業時間も提供できる人たちによって、仕事が支えられてきました。
しかし、そもそも人が足りなくなることで、そうした多くの時間を提供できる人だけでは労働力が補えなくなり、時短で働ける人たちを多く活用する形にシフトしないと、仕事が回りにくくなるという状況に変化をしていきます。
育児・介護で時短勤務を望む人や、前回も触れた不妊治療中の人、パートタイマ―、副業人材など、多様な背景をもつ人たちと仕事をシェアしていく、いわゆる「ワークシェア」の発想が求められます。
「1日2時間」の仕事づくり
鷲谷さんは、この課題に「2hours」というビジネスを生み出すことで解決を目指します。子育てなどで忙しい女性が、もともと培っていた職業的なスキルを1日2時間から、可能な時間だけ提供することで、地域の企業の仕事を請け負うというモデルです。
このモデルをベースに、株式会社ケイリーパートナーズを設立。起業のパートナーには、郡山で多くの地域の企業を支援している税理士法人三部会計事務所が加わります。
地域の企業の課題
ケイリーパートナーズでは、経理などの間接業務やオフィス収納などの業務の支援で、地元企業の仕事を請け負うようになりました。地域の企業にとって、これまでは自社の専従スタッフが行ってきた仕事を、他社に切り分けることができるのは、大きな変化につながる体験です。
仕事を他社に切り分けるには、業務の範囲や責任などを明確にして、切り出せる仕事をはっきりと定義づける必要があります。集団で集まって仕事をしていると、お互いの仕事の境界があいまいなままカバーしあったり、その人だけのやり方で処理の仕方が確立させるなどの状況が生まれます。
このスタイルは、多くの企業にとって、成長・発展の足かせにもなります。また、そもそもフルタイムで働ける人材が少なくなっている時代において、そうした仕事の仕方に依存をすることは、現状維持さえも難しくしてしまいます。
ケイリーパートナーズに部分的に仕事を切り分けた企業は、その成功体験をもとに、さらにワークシェアを進めていくことができるという点も、大きなメリットです。切り分けられた仕事であっても、請け負ってくれるのは地元の女性たち。人と人の信頼関係も築きながら安心してワークシェアが進められるのも、ケイリーパートナーズの魅力のひとつです。
デジタル活用に一緒に挑む
地域の企業がDXに挑むには、デジタル活用の経験値も地道に積み上げる必要があります。自社もつ情報・データのデジタル化や、デジタルツールの活用なども、経験の少ない自社スタッフだけでは足取りが重くなりがちなのも事実です。
ケイリーパートナーズでは、そんな企業に向けて、女性スタッフが一緒に学びながらツール導入やデジタル化などを支援する取り組みも進めています。その取り組みにより、鷲谷さんは「こおりやま産業博2022」内で開催された「こおりやまDX大賞2022」で優秀賞を獲得。地域の企業のDX化に向けて、はじめの一歩をけん引する存在としても広く知られるようになりました。
課題と課題をぶつけることで新たな解決を目指す
フルタイムで働くのが困難な女性に働き機会をつくることで、地域の企業の人手不足やDX化に踏み出せずいるといった課題の解消も目指すことができる。社会課題の解決には、こうした複数の課題を同時に解消できる取り組みが有効です。
DXの変革を目指すには、自社の課題のほかに、社会全体の課題を解決の範疇に取り込むことも大切なのではないでしょうか。
次回は、「女性のニーズから生み出すWell-beingと新サービス」と題し、株式会社フードコミュニケーションのなぎさなおこさんを迎えます。
宮城県内で活躍する地域の企業が、今後も成長を図りながら生き残っていくために、「地域のDXを加速させるみやぎコネクトプロジェクト(略称: みやぎコネプロ)」では、引き続きみなさんと一緒に未来を創る活動を続けていきます。
*本イベントは宮城県「令和5年度異業種連携促進支援事業業務」にて実施したものです。
宮城県では、DXに取り組む企業やサポート企業が参加するイベントを開催しており。ICTポータルサイト「オープンイノベーションみやぎ」では、県内に拠点をもつIT企業を検索できます。
宮城県の支援制度や、団体・自治体からの情報も公開中です。
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