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財前ぜんざい@オリジナル小説
2017年2月28日 01:02
誰も動こうとはしなかった。まるで時間が止まったかのように、道場の隅で審判をしていた清水も、その様子を見ていた圭も、目を見開いたまま動かなかった。雅臣は面の中から私をじっと見つめていた。彼の瞳に、もう攻撃の意思はなかった。ただ、何が起きたのか、頭の中で今までの試合の流れを反復しているようだった。 止めていた呼吸を、私は再開する。粗い息遣いが道場の中に響き渡った。もう、決着はついた。審判である清
2017年2月16日 20:48
私はメンを狙う。私の身体はスネを打った時の前傾姿勢を保つのが、今の筋力では難しい。そのため、雅臣にスネを狙われた時、防御も回避もできず、生身を打たせる結果となった。ならば、無駄な体力を使う必要はない。執拗にメンを繰り出せばいい。そして、おそらく、雅臣も私の動きを見て、私がスネを苦手としていることに気がついた。「そうだ紅羽! 生意気な雅臣をぶっ潰せ!」 応援にしては汚い言葉で圭が私に叫ぶ。
2017年2月5日 21:56
私は頭を働かせる。彼との今までのやり取りを、私は分析する。 ある程度予想はしていたが、彼の力は私とは比べものにならないほど強い。想像より遥かに打撃が強かった。なるべく彼の技には触れたくない。薙刀で受けるのも危険だ。あの重たい一撃を薙刀で受けたとして、もし連続技で立て続けに違う場所を狙われたらどうする? 重い一撃を受けてから彼の速い攻撃を防ぐには、今の私では防御が追いつかない。彼のペースにはま