2023年11月8日 デカルト

ここ最近、17世紀の哲学者、ルネ・デカルト(1596-1650)関係の入門書をいくつか読んだので、自分のために、そしてデカルトの思想をちょっと齧りたい素人のために書き記す。

1.冨田恭彦『デカルト入門講義』(ちくま学芸文庫、2019年)

まず最初に読むべきなのはこれなんじゃないかしら。「講義」と銘打っていることからも分かる通り、全編ですます調で書かれ、かなり平易。デカルトの生涯、『方法序説』に説かれる方法論、『省察』に説かれる「私」の存在証明から神の存在証明、そして物体の存在証明の理屈が平易ながら事細かに解説されていて、デカルトの形而上学がよくわかる。さらにその形而上学が当時の自然学の理解をもとにして考えられている点を指摘して、そこにデカルト思想の矛盾を見出している。

2. 小林道夫『デカルト入門』(ちくま新書、2006年)

『デカルト入門講義』よりは堅い記述だが、それもきちんと読めばわかりやすい。より簡潔な解説に留めているから、『入門講義』の次に読んだほうがいいかも。とはいえ、より広い範囲について解説していて、デカルト思想の全体像を理解できる。方法論、形而上学だけでなく、『哲学の原理』における宇宙論的自然学、『情念論』における身体論と道徳論も解説されている。デカルト思想の全体像、およびデカルトが近代以降の科学に与えた大きな影響を感じられる。

3. 小泉義之『デカルト哲学』(講談社学術文庫、2014年)

1996年に講談社現代新書から出た『デカルト=哲学のすすめ』を文庫化したもの。元のタイトルの方が内実をよく表していると思う。というのも、この本はデカルト哲学の解説書とは一線を画しているから。まあ解説として読めなくもないのだが、デカルト哲学を「死にゆくものの思想」と読み換え、「神」を「宇宙」と読み換えてその神学や倫理学を読み直し、著者自身の新たな哲学を立ち上がらせている。使い方があっているかどうかはわからないが、「創造的な読み」というやつだろうか。これはこれで面白いし、理解が深まる面もあるのだが、純粋な入門書という感じで読むとびっくりするかも。

という以上3冊。加えてドゥニ・カンブシュネル『デカルトはそんなこと言ってない』(晶文社、2021年)も読んでみたけれど、訳文ゆえの読みづらさがあった。それから、これが最大の難点だけれど、この本はタイトルから分かるように、「デカルト哲学への誤解を解く」という建て付けで、章立てがそのままそれぞれの誤解、章の内容がそれへの反論という構造なので、デカルト哲学と、それへの世間の理解をちょっと細かめに理解してからでないとあんまりよくわからない。だから、一度デカルト本人の著書を読んでからでないとピンとこないような気がする(私も読んでないけど)。ちゃんと勉強する人(大学の哲学科とか)なら読むべきだろうけど、趣味でちょっと齧ってみたいだけなら難しいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?