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推しって奴に、焦らされて(エッセイ)

例えば漫画。例えばTwitter上の絵師。全てのものにおいてそうなのだが、自分が好きになるモノや人は、更新が遅くなる。

あ、この絵いいな、フォローしよ、と思ったが最後。あれ、あの人最近更新してないな、と思ったら雲隠れしている。この曲いいな、このバンド覚えとこ、と思ったが最後。しばらく見ないな、と思ったら活動休止。何故なのか。キングボンビーなのか?俺は。

好きになったら活動が遅くなる訳ではなく、最初から活動がスローペースの人もいた。何せ、人生最初にファンになったのが、小沢健二と小山田圭吾だ。それが2012年末だったので、あの頃は大変だった。何にもリリースしてくれない。小沢に関しては、どこにいるかさえ分からない。今、普通にTwitterで姿を見せてくれるのは、奇跡に近いと思う。

もうこうなってくると、自分が好きな人は、活動ペースが遅い人、作品なんじゃないかと思う。つまり、ちょっと焦らしてくれる存在に快感を覚えるのではないか、と仮説を立ててみる。

「世界で1番の調味料は空腹 愛に1番の調味料は乾き切った心」これはRadwimpsのサイハテアイニという曲の歌詞を編集したものだ。手元に歌詞カードがないので正確ではないが、まあこんな感じの歌詞を歌っていた。つまり、野田曰く乾いた心に愛が注がれると、最高にハイになるという事らしい。確かに、2014年に小沢健二がいいともに出た時、物凄く嬉しかったのを覚えている。あれは、小沢健二を観れるという気持ちに加えて、ようやく!という気持ちも入っていたに違いない。

禁止されるほどやりたくなるし、焦らされるほど燃え上がる。世の中の鉄則だ。今年から子供達に配られるipadは、フィルタリングがかけてあるにも関わらず、それを皆必死に突破してゲームをしているらしい。筆者も、本人がリリースをしていなくても、それにまつわる話を聞いて、熱を高めていた。自分でも、呆れるくらいお熱だった。

でも、じゃあ今はそんなに好きじゃないかと聞かれたら、そういう訳ではない。2人の新曲はチェック済みだし、コロナが終わったらライブにも行きたい。熱の種類が違うだけだ。燃え上がるような炎と、暖かいカイロ。熱量は違うが、双方に必要とされる場面はある。それに、いつまでも炎を持って生きてはいけない。それが、大人になるという事だから。

今後は、焦らされる事を待つ事はあまりしないのだろう。そこまで体力がある訳ではないし。けれど、焦らされて、燃え上がったという経験は確かに自分の中にある。それを持って生きていくのだ。エル・フエゴ(ザ・炎)。小沢健二さんの新曲で、とても静かなけれど力強い曲です。今日はこれを聴きながら、昔の事を思ってみたりします。

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