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【翻訳】ターヤ・トゥルネン、Nightwish脱退後の活動を満喫

どうも、弾青娥だん せいがです。今回の投稿は音楽関係の話題です。インド出身のメタルバンドのBloodywoodに触れて以来の音楽関連の記事です。

ピックアップするのは、私がメタル音楽に目覚めるきっかけをくれたフィンランド出身のバンドNightwishで初代ボーカリストを務めたオペラ歌手ターヤ・トゥルネン(Tarja Turunen)のインタビュー記事です。

Nightwishを初めて知った方のための参考に、こちらのボーカリスト在籍時のベストライブをNightwishの公式チャンネルの動画から紹介いたします。「オペラ座の怪人」のカバーです(よろしければ、こちらの圧巻のパフォーマンスを通じてNightwish沼にはまってくだされば幸いです)。

さてさて、今回の本題はそのインタビュー記事の試訳です。以下に掲載いたしますが、大意が伝われば幸いです。

オリジナルの記事は、ヘヴィメタルの情報ウェブサイトのトップスリーに数えられるBlabbermouth.netにおける記事で、David E. Gehlkeによる取材になっています。


Nightwish脱退後の活動を満喫するターヤ・トゥルネン

「度胸をつけなくても良かったのです」

世界中から閲覧可能な公開書簡をもって、ターヤ・トゥルネンがNightwishから荒々しい形で解雇されてから17年が経つ。この歌手が最初に抱いたショックと落胆の思いは新たな道を追求するチャンスに変わり、ソロキャリアと、クラシック音楽に関わるサイドプロジェクトとにつながった。トゥルネンはNightwish脱退後、相対的に安定した成功に恵まれたキャリアを謳歌してきた。それゆえに、ソロアーティストとしての16年間をカバーする、複数枚に及ぶ新作の"Best Of: Living The Dream"がリリースされるのは当然のことだ。シンフォニックメタルは永久にトゥルネンの得意とする分野であり続けるだろう。一方、ロック音楽の他の分野に挑戦できるのもトゥルネンが長期的に活動をつづけられる別の理由であるかもしれない。それに加えて、非常に粘り強い姿勢もその要因だろう。

Blabbermouth.netに対して今回の新作とソロ活動について語ったトゥルネンは思慮深い様子であれば、達観したような様子でもあった。順風満帆というわけではなかった(2018年に発作に襲われることもあった)。とはいえ、男性優位のメタル音楽シーンにおいて1990年代後半と2000年代前半に躍動したトゥルネンは話したいネタをたくさん持っている――さらには、お披露目したいアドバイスも、である。

Blabbermouth:ソロ活動を始めたのは2006年でしたね。これまでで一番の教訓は何でしょうか。

Tarja:なるほど、学んだ教訓のなかで一番大きなものですか。ベストアルバムに取り組んで自著(2021年10月に刊行された'Singing In My Blood'のこと)を書き始めた頃にありました。私の暮らしをたくさん写した写真に目を通し、自分がすっかり忘れていた出来事を思い起こしました。この頃に作業をともにした方々と、また今も協力してくれる方々とインタビューをしました。面白かったですよ。自分の人生は本当に波乱に満ちたものだと実感しました。ちょっとしたトラブルも経ましたが、回復を果たせば、自分の道を見出し、それが何であるかを理解しました。苦境にもぶつかってきました。今もこうして活動していますが、幸せですし、ある意味では今までよりも簡単に動じなくなった感じがしています。そのベストアルバムはそういうことでした。書籍の'Singing In My Blood'ですが、感染症の流行のなかで書きました。おかげでベストアルバムのための創造力の翼を得られました。こうした写真を見て、自分が今も活動していることと、夢を叶えてハッピーなことを実感しています(笑)。

Blabbermouth:仮にあなたの経歴がこのような道をたどっていなければ、違う人たちと仕事を一緒にするのもチャンスとして捉えるでしょうか。

Tarja:もちろんです。私が活動し始めてからずっとそれは変わっていませんね。まず、協力してくれる方を見つけなければなりませんでした。最初に確保したのはレーベルでした。最初から、私を必要とするレーベルがたくさんありました。ミュージシャンを確保したい思いもありましたし、誰もが見知らぬ人物でした。こうした人々をどう信頼するか模索せねばなりませんでした。その途端、人に対する信頼をすっかり失くしました。神経が参ってしまいました。自分を信頼できるかどうかも分からなくなりました。ですが、ふさわしい道を見出して、自分の望む声を得ました。簡単なことではありませんが。ここ数年ずっと素敵な方々とコラボレーションを私の音楽だけでなく、その方々の音楽においても果たすのは見事な学びのプロセスとなっています。大いにやる気を起こさせるプロセスです。仕事をともにしているミュージシャンの皆さんに、自分が思っている、そして感じているこのことを声高に話します――なかには、15年も一緒に作業をしている方もいます。こうした方々は私の音楽に大きな役割を果たしてくれています。私の音楽において自分らしい演奏ができるよう、自由に演奏してもらうようにしています。あのような方々がいなければ、事態は違っているでしょう。何もかもが変わっているでしょう。

Blabbermouth:再び他人に信頼を置けるようになった瞬間はいつだったのですか。

Tarja:何度も私は泣きました。他の人たちと感情を共有できるので、私は感情的になります。そうしたことは私が仲間と一緒に話せることです。素敵なことです。直近のツアーでも、私たちはライブの後にワインを分かち合って仲間といっしょに演奏のことを振り返りました。私たちは思い出を語り、共有するのです。過去を振り返って笑い合うのは素晴らしいことですが、何があろうともこうした仲間がいっしょにいてくれるというあの感覚を持てるのが嬉しい限りです。2018年になると、私は発作に見舞われました。その経験のせいで、1年間ほどは怖気ついたままの生活になりました。このことを話さないといけなくなった際、公には明かしたくありませんでした。とはいえ、仕事をともにする方々に伝えたい思いがありました。彼らも私の状況を知る必要がありました。それから、自分の身の安全のために、ツアーのさなかに私が奇妙な挙動をしていたら、どう対処すればいいかが彼らに分かるでしょう。仲間に発作のことを話した私は泣いていました。それを聞いた皆さんは完全に呆気にとられていました。彼らが私のことを、常に現場にいて物事に全力を尽くす「スーパーウーマン」だといつでも思ってくれるからでした。そうした瞬間に、私も普通の人間だと彼らは把握しました。私も普通の人間の一員なのです。

Blabbermouth:90年代にキャリアをスタートさせた際、メタル音楽に没頭していませんでしたね。最初は場違いな感じを覚えたという話をたびたび耳にします。メタル音楽を受け入れるようになった経緯を話していただけますか。

Tarja:メタル音楽シーンにおいて変わり者でした。かつての私の音楽といえばクラシック音楽でしたから。1日8時間、ピアノを弾いたり歌ったりばかりで、すっかり打ち込んでいました。生活といえるものなんてありませんでしたよ(笑)。それから、まったく聞き慣れないジャンルの新しい音楽への関心を高めるに至りました。Metallicaや他のバンドのハードロックのアルバムを聴くようになりましたが、メタル音楽にすこぶる美しい音楽があると知ったのはあの時が初めてでした。発見をするようになった私ですが、そのような発見が私のファンにもたらされています。シンフォニーのオーケストラを前にして歌ってはクラシック音楽を作る私に気付いたファンの皆さんは、「違うジャンルの音楽をやろうとしているのか?」というような面持ちです。それから、私がメタル音楽を演るのを見ると「えっ!」という反応をされるものです。逆の順番で起きることもあります。同じことは私のキャリアの初めにも起きました。協力して仕上げる音楽が素晴らしいものだったので、私は難題にすすんで立ち向かいました。難題に対する心づもりもできていました。そうした私の一面は今日にいたるまでずっと残っています。難題が私にできると思われるものでもあり、自分にとってぜひやりたいと思うことであれば、積極的に取り組みます。そうするように努めています。それは不変です。素敵な音楽がたくさんあるのですから。メタル音楽のオーディエンスとメディアは私のことを最初から受け入れてくれています。このような私の見方が私の原点と成長に対して常に誠実であり続けるということだと、私が思っているからです。誠実であり続けています。私の声には十分な力があると考えています。勤勉な女性がどのような存在であるか分かってきたでしょう。私は絶えず、懸命に物事に取り組んでボーカリストとして良くなれるよう、進歩できるように努めています。メタル音楽シーンは、他の活動も含めた私を受け入れてくれました。総体的に私を見てくれるのです。素晴らしいことではないですか? 本当に素敵です。

Blabbermouth:最近のインタビューで、メタル音楽シーンに身を置いていた頃は孤独感に苛まれていたと発言しています。今では、女性ボーカリストをメインにはる人気のバンドが数多く存在します。そうしたバンドに対してある面で貢献をしたと感じていますか。

Tarja:いい質問ですね。そうだと思います。90年代後半の初めはひどい孤独感を覚えていました。つい最近、数年前に、音楽フェスティバルのためにジャカルタに行ったのですが、女性ボーカリストは私だけでしたし、あの頃の記憶がよみがえりました。女性が私以外にいない状況だったのですよ。一体どこに隠れているのだろうと思いましたよ(笑)。面白かったですが。近頃は同じような方が多くなりました。この業界に多くの知り合いがいますし、メタル音楽シーンにも仲間がいます。実に立派なことです。私の作品が影響を与えたことを耳にすることもあります――著名な歌手から、そのような話がなされもします。素晴らしいです。

度胸をつけなくても良かったのです。私は異色の存在であり続けています。キャリア当初から持っているこの声を信じて、それに磨きをかけ続けます。私が女性であるという理由だけで大変な思いをしたというのは皆無です。自分にとって正しい道を見つけました。自分なりの方法で頑張らなければなりませんが、楽なものではありません。けれども、さらに仲間に恵まれるようになっているのは素晴らしいことです。歌を歌ってアルバムを出すと、そして女性の方々が私にアプローチすると毎回、そうした方々の力になりたいと思いますし、力が私以外の女性にも宿っているのを見届けて、「ねえ、あなたにも力があるのです。頑張れ!」と言いたくなります。そのような方々の思い描く母親像に近づきたいです(笑)。変な感じがしますが、一方で素晴らしいことなのです。

Blabbermouth:(Nightwishの現シンガーで;癌から完治したと最近になって明かした)フロール・ヤンセンが癌の診断を受けましたが、と今も連絡をとっていますか。

Tarja:その悲報に触れてからも連絡をとっています。その件でメッセージをすでに送りました。連絡をとりあっている仲です。応援のメッセージを送り続けますよ。楽な行程ではありませんが、無事に治るのを願っています。私の発作は数年、誰にも言っていませんでしたが、自分の音楽で治しました。発作が出た後の最新アルバムの'In The Raw'の一環で、ツアーを実施して、今回のアルバム向けの歌詞の執筆と制作作業に取りかかりました。やはり大変な作業でした(笑)。フロールが近いうちに治療するのが頭に浮かびます。健康を取り戻すのを願います。

Blabbermouth:発作は完治しましたか。

Tarja:100パーセントの体調です。かなり長い間に恐怖にさらされてから助けを求めました。すぐに助けを得られましたが、実は数秒違えば私はここにいなかったかもしれません。おぞましいことです。「一人で何とかできない。自分のことも、こう感じているわけも、もっとしっかり理解しないと」と口にしました。相談相手であるアルゼンチン出身の夫と話をしました。夫には、セラピーにたよらずメンターとして数多くの実業家の方々を助けた実績があります。夫に言われて、細大漏らさず話しました。夫のせいで泣きました。夫のことが嫌いになりましたね(笑)。夫は私のことならお見通しなので、私たちはとことんまで話をしました。何度も話し合って、上手くいきました。そうして変化を経て、体調がずいぶんと良くなりました。ゼロ・ストレスです。

Blabbermouth:体調面の自分のケアにずっと勤しんでいますよね。

Tarja:ずっとそうですね。身体的に強い人間なので、発作はショッキングなことでした。自分のことは自分で何とかできます。パーティー好きな人間ではありません。自分の声を常日頃からケアしなければなりません。前触れもなく発症しました。発症した理由をまったく特定できなかったので、ストレスがたまりました。私たちは過去と未来にストレスを感じる一方で、今のこの瞬間を生きているのではありません。クレイジーでしょう? 本当なんです。過去に起こったことに対しては何であろうともストレスを感じますし、将来に対しても同様です。最初に私は「生きている実感を持てるようにならないと」と言いました。それから良い方法を見つけました――瞑想です。効果覿面てきめんです。

Blabbermouth:過去に過度なストレスを感じていたと考えているのですね? それから、15年前に何があったのでしょうか。

Tarja:過度なストレスのことだと未来の方ですね。ツアーに出るのは――ツアー中に「赤ん坊たち」の世話にあたることと同じです。我が家には夫と娘という二人の「赤ん坊」がいます。ツアーに出ると、50人も「赤ん坊」がいますね(笑)。私が世話担当です。そしてアーティストでもあります。そうした世界に飛び込むのは気が乗りません。音楽に集中したく思います。すべての厄介事が私にのしかかってほしくないのです。バンドメンバーと歌いたいだけですし、その面倒を見たいのです。残りの色んな問題はいつでも生じてきますし、私がその対応に立ち会わなければなりません。そうしたことを放棄する方法を学ぶ必要がありました。

Blabbermouth:あなたの夫(マルセロ・カブリ;ターヤ・トゥルネンのマネージャーも務める)がこうしたことを何でも大いに助けてくれているのですよね。

Tarja:その通りです。20年間ずっと一緒に力を合わせてきた関係です。この年末で結婚して20年になります。「一緒にいる人と、どうやって仕事と愛情を共有できるのですか。どうやって上手くそうしているのですか」と思われているでしょう。あるやり方を見出しました。もちろん、私たちには決まったスケジュールがありません。私は気になりません。私たちは二人とも自分の仕事を楽しんでいます。夫が自分の仕事を大いに楽しんでいます。もしも夫が仕事で苦労しているのを目にしたら、私は困るでしょうね。私たちは今の仕事が本当に好きなのです。



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