「またね。」　曖昧な約束に込めた想い。

「またね」
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普段、普通に交わす言葉に多くの思いを馳せた。
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旅は、
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ある人にとっては短くて、
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ある人にとってはとても長くて、
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ある人には狭く、
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ある人には広い。
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偶然、居合わせたその時、
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多くを語り合う関係になることもあれば、
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伝わらない言語で紡いでいく関係もある。
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誰かが次の土地に向かうとき、
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「またね」って
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少しつよめの握手をする。
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そのとき、
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文字通り、「また」を願う。
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当時SNSアカウントを持っている人はそれほど居なくて、
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稀に更新されるブログで彼らの生存や旅のペースが知れる程度。
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なんとなく、
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決まっていない予定と、
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少ない知識と情報の中で、
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何月ごろに、たぶんその辺に居ると思う・・。

約束はいつも曖昧だった。
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旅をしていれば、
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予定も変わり、
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熱かった気持ちにも温度差が生じ、
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果たされない約束も少なくはない。
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けれど僕はその曖昧な約束、
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「またね」にどれだけ救われて、
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どれだけ「希望」を抱いただろうか。
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別れ、というのはいちいちセンチメンタルな気持ちになるのだけれど、
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それよりも、それぞれが自分の気持ちを優先して旅に向かっていくが姿はかっこよかった。
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ヒマラヤ山脈をチャリで越えてくる友人をインドで待ったり、
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世界地図を広げてダーツで旅先を決める友人を違う大陸で待っていたり、
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再会を果たしたときには、
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数ヶ月前にたった数日、一緒に過ごした程度の関係でも、
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なんだか昔からよく知っている人に会えたような気持ちになり、
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自分が行ったわけでもない土地での体験聞き、
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自分の目で見て体験しているような、そんな気持ちになる。
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「そんな気持ち」になれないから旅をしているわけだから、
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「自分の目で見て体験しているような、そんな気持ち」になれること自体がとてつもなく嬉しかった。
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お互いが得意としているわけでもないこと、
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知らない世界に一緒に向き合うこと、
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夜な夜な目的もない会話を永遠とすること、
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時間がありすぎて「しりとり」の進化が加速して「独自の遊び」の発明をする・・
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そんな関係。
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一人で出た旅とはいえ、
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出会いがあり、チームで旅する期間がある。
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だれかを知る、自分を晒す、
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そこにはもちろんチームビルディングがある。
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個人の“人柄(クセ)”が連動しているチームはやっぱり魅力的で、
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そんなことも旅で向き合える大きなテーマだったと感じる。
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結局のところ、
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情報や景観、文化、というよりも、
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感情の旅だったなと。
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