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2拠点生活のススメ|第26回|禁煙という果たせぬ命題

タバコを吸い始めたのは17歳の頃。当時世の中のカッコイイ大人達は、みんなタバコを吸っていた。ところが今はどうだろう、多額の税金を納めているにもかかわらず、街の嫌われ者に成り下がってしまった。何度か禁煙したこともあったが、その度に復帰を促す出来事が起きる。まあ、吸わない人から見れば、ただの言い訳に聞こえるだろうが、案外そこには面白い物語があるのだ。

初めての挫折

もう今から20年ほど前のことだろうか、どういうキッカケで禁煙を始めたのか覚えていないが、順調に3ヶ月ほどが過ぎた頃、仕事でシンガポールに行くことになった。海外ということもあり、すでにタバコを吸える場所も少なく同行した撮影スタッフも苦労をしていた。

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渡航の目的は、ある企業の国際会議を撮影するというモノだった。開始時間も近づいて撮影準備を進めていると、カメラ機材が動かないというトラブルが発生。慌てて現地コーディネーターに代替機材を探してもらうことに。あちこち連絡を取り、届けてもらえることになったのだが、果たして間に合うのか、会場となったホテルの玄関先で、スタッフ全員イライラしながら機材の到着を待ちわびていた。

そんな最中である、ふと横を見るとクライアントの方々が玄関横の喫煙所に集まっていた。監督という立場上、事情を説明して謝罪しようと近付くと、皆さんもう事情は察しておられたようで、優しい言葉を掛けてくださった。

「監督、すこし落ち着いたら? 成るようにしか成らないよ。まあそうイライラせず一服どう?」とタバコを差し出す。「お気遣いありがとうございます」そう言った私は、知らぬ間に気が付くと差し出されたタバコを受け取り、燻らしていた。

そうして短い禁煙生活は解けてしまったのだが、驚くほど素直に何の違和感も無くタバコを吸ってしまっていた。しかも咳き込むことも無く、ごく自然に。


節約のための禁煙は成功しない

禁煙の理由は、人ぞれぞれだが、同年代では病気を理由に禁煙する人も多い。確かにある種強制的に止めることになるし、吸うと辛いのでは続けられる訳も無い。穿った言い方をすると、私の場合タバコが吸えるほど健康だとも言える。(笑)

海外ロケでの禁煙挫折を経験してからも、幾度か禁煙に挑んでいる。一度は欲しかった車(ビートル)に乗り換えるに当たって、ローンを打ち消すアピールで禁煙をした。月に浮くお金がざっと12,000円。ほぼ月のローン額と同等だったので、車をタダで乗り換えるんだと妻に豪語した記憶がある。しかし、またしても仕事のトラブルでイライラがマックスに達し、断念してしまった。

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さらに徳島に拠点を開いた時にも、家賃の足しにと禁煙を始めた。しかしながら、介護と仕事の負担が増えて、徳島に行くこともままならなくなった時期に、またまた禁煙の誓いを破ってしまった。介護と仕事さらに禁煙という3つのストレスで体調不全になるくらいなら、タバコを吸った方がまし。そんな訳の分からない理由をでっち上げ、自分を納得させたような気がする。


タバコとの理想の距離感

タバコには、旨いタバコとそうでないタバコがある。例えば、朝の珈琲タイムや食事の後、サーフィンして海上がりの一服、また仕事終わりの達成感と共にあるタバコ。そんなタバコだけで一日が終えられるなら、吸い続けて何も問題無いと思う。

ただ、イライラ解消のためのチェーンスモークや、酔っ払って無意識に吸い続けてしまうタバコもある。これがまさに中毒と言われる所以。こうしたタバコを吸わないようにする努力は、実は禁煙するよりずっと難しい。吸うなら旨いタバコだけ、それが理想のカタチなんだけどな。


海の見える家で、タバコを燻らす夢を見た

本当は、今の世の中タバコなんて吸わない方がいいのは分かっているし、タバコを吸いながらどこかで罪の意識を感じる部分を持ち合わせていたのだが、ある日街を散歩していて、ふとあるイメージが浮かんできた。海岸沿いの渋い平屋、屋根の付いた素敵なウッドデッキで、一人波チェックしながらタバコを吸っている、そんな映像だ。

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なんとも言えない理想的な風景、そしてそこに立つのは紛れもなく未来の自分。これは予知夢、いや現実の未来を見ているんだ。その時から、もう無理して禁煙しようなんて考えるのはよそうと思った。いつかそんな時が現実になるまで。細々とタバコを続けよう。ただ、いい距離感で旨いタバコだけを吸えるような努力はこの先も続けていきたいな。

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