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【あか】緑の旗を振りながら深紅に魅せられた男子の話

長すぎる前置き


鹿島アントラーズが好きです。

1993年のJリーグ開幕以来、国内タイトル最多19冠獲得。発足当時からJ2への降格経験がないのは横浜F・マリノスと並び2チームのみ。最終順位も2012年の11位以外2桁順位経験なし。まさに日本サッカー界の王者。

褒め言葉を挙げればキリはないのですが、私が好きなのはその勝ちにこだわる姿勢。

「いいサッカーだったけど勝てなかった」
なんて本気か慰めかわからないような言葉に唾を吐きつけるかのような「勝利」にこだわった姿勢。30年経っても変わらないクラブとしての意識の高さとその無骨な態度に、「負けたら殺せ」とでも言っているかのような自らを追い込む男らしさ。

クラブとしての姿勢を維持するのと、チームとしての姿勢を維持するのでは、難易度が異次元に違う。どちらも難しいけど、クラブ全体で意思が統一され続けるのは(勝ち続けるのは)とんでもなく難しい。

どれだけ難しいのか想像してみてください。
今あなたが考えたよりも遥かに難しいです。

惚気が過ぎましたが、ここまでは前置きです。
驚きましたか?私もです。

惚れ直した瞬間をあげるとキリがないので、今回は始まりだけかいつまんでお話しします。

”強い”ってカッコいい

小学校1年生の”サッカーごっこ”が好きだった少年時代、親に連れられて両親と3つ上の兄と共に初めてのサッカー観戦に行きました。
Jリーグの情勢もわからず、ただ近くのお祭りに参加するつもりで足を運んだ味の素スタジアム。対戦カードは東京ヴェルディ対鹿島アントラーズ。

サッカーに詳しいわけでもない両親は、良かれと思ってホームチームのゴール裏に私たちを案内しました。ワケのわからないまま座った席で、何やら興奮気味だった兄の横で、広すぎるピッチを眺めながらジュースを啜る私。

しばらくすると、何やら印字されている小さめの紙が配られ、それを眺めている途中で頭の遥か上を緑色の大きな布が覆いかぶさってきました。配られたのはチャントの歌詞カード。布は不勉強でなんと呼ぶのかわかりませんが、コレオのような、繋げると一つの絵になる的なやつでした。

「なんだコレはサッカー見れないじゃないか」などと思っていると次第に布は回収され、気づけば選手がピッチ内に均等に散らばっていました。

そうして始まった試合。私は緑の旗にまみれ、飛び跳ねている兄と見知らぬおっさんを真似てチャントを歌いました。(ここまで丁寧に読んでいただいたならわかるかと思いますが、)義務感に従って。

試合が進んでいくと、どうやら敵チームは真っ赤なユニフォーム姿で、反対側にはそれを応援する集団が。義務感とはいえ、緑にまみれていると赤は敵以外の何物にも見えませんでした。「勝て勝て緑。押せ押せ緑。」そんな気持ちで試合を眺めていました。

気付いた時には試合終了。結果は0−3。鹿島アントラーズの完勝。肩を落とす大人たち。結果などどうでも良かったらしい兄の笑顔。そして勝った選手の「当たり前」という表情。

残酷なまでに自チームを引き裂いたチームは鹿島アントラーズ。”強い”。ただただ地力の差で”強い”。そして何より容赦がない。ここまで込み入った感情が当時あったわけではないと思いますが、とにかく強そうな色のチームが、本当に圧倒的に強かった。これだけで少年は疑いようもなく”敵チーム”を好きになってしまいました。

結んでみました

これが”出会い”でした。この後数年後に、上記したように11位で終わったシーズンがあり、一度は「鹿島の応援は辞めた」と言い張った時期もありました。全然無理でした。そんな起伏もありましたが、その深紅のチームは今もかっこいいままです。

グーグルで「鹿島アントラーズ」と検索すると、「鹿島アントラーズ やばい」と出てきてしまう今は、低迷期なのかもしれません。好きです。最早理由は必要なくて、家族同然なので。

今年も1年、”家族”の本気を目の当たりにできることが、どれだけ幸せか。そんな幸せと出会った、少年の話でした。

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