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「原点回帰」に見る混沌と秩序

今回のテーマは「原点回帰」。

パッと思いついたのは、この言葉が持つ力強い響きが、時間が繰り返される中で、私たちがどのようにして自らの根源に戻っていくのかという問いです。
過去と現在、そして未来をつなぐ一つの「回帰の瞬間」。
そんな感じをイメージして描きました。

カラーパレットの象徴と構成の力学

まず、色彩について触れたいと思います。
この作品では、鮮やかな黄色やターコイズの大胆なストロークが、白黒のベースに対して強烈なコントラストを作り出しています。
黄色の線は、まるで制御不能なエネルギーの象徴であり、歴史や過去から解放され、自由な未来へと向かう道筋を示しているように思います。
一方、ターコイズのストロークは、私自身が「回帰」と呼ぶものを象徴しています。
この色は穏やかでありながら、しっかりとした意志を持って進んでいく再生の過程を表現しています。

具象と抽象の対話

作品の中心には時計台が描かれています。
この象徴的な存在は、私たちが時間の中で自分自身を見失いがちなことを示しています。
時計は常に進み続けますが、どこかで立ち止まり、自分の「原点」に立ち戻る必要があると感じさせることを伝えたいと思いました。
その周囲を取り巻く抽象的な線や色は、現代社会の混沌とした状況を反映しており、私たちが進むべき道を見失ったときの不安定さを表しています。

私が描いた混乱した線や大胆な筆致は、表面的には無秩序に見えるかもしれませんが、内面では私自身が直面している混沌を整理しようとする試みです。
時計台はこの秩序を示す具象的な存在であり、他のすべてがそこに回帰していく様子を描いています。

「原点回帰」の深層的な意味

「原点回帰」というテーマは、過去に戻ることだけを意味するのではなく、現代の私たちが再び見つけるべき根源的な価値観や感覚を指しています。
この絵の中では、時間が象徴的に使われています。
時計台は、進むべき時間を指し示しているかのように見えますが、実際には何も教えてくれません。
私たちが本当に戻るべき「原点」は、時計の針では計ることのできない、もっと深い場所にあるのです。

時計台がある風景は、具体的な場所というよりも、私たち全員が持つ「原点」を象徴しています。
そこには、時間や空間を超えた私たち自身のルーツや、本来の姿が隠されています。
そして、そこへ戻ることで、現代社会の喧騒や混乱の中でも、再び自分を見つけることができると信じて描きました。

筆致と視覚的リズムの表現

私がこの作品で強く意識したのは、視覚的なリズムと動きです。
混沌とした線が作り出すリズムは、人生そのものを象徴しています。
一見無秩序に見える道筋も、よく見ればある種の秩序が見えてくる。
そのリズムの中で、私たちは自分のペースで進んでいくしかありません。
筆致の粗さや力強さは、現代社会のスピード感を表し、同時にその中で立ち止まることの重要性も示唆しています。

メッセージ

この作品は、私にとって「原点回帰」というテーマを表現する一つの挑戦でした。
過去に縛られすぎることなく、それでも自分のルーツを忘れずに歩むこと。
現代の美術は、しばしば混沌とした表現に偏りがちですが、その中にこそ本当の意味での「秩序」が隠されているのです。
この作品が、観る人にとっても「自分の原点」を考え直すきっかけとなれば幸いです。

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