映画感想⑨『総統の顔』

こんチワワ・・・・・・。

めちゃくちゃ映画感想サボってましたわ。しかも課題やってない。(やれよ。最悪かよ)

今日も短編です・・・・・・。短編に頼りすぎじゃない??ダメじゃない??

しかも、ディズニーです。またディズニーなの??絶対ダメじゃない??せめて他のスタジオの短編映画も見ろよ。

まぁいいや。今日感想を書くのは『総統の顔』です。これ、ディズニー映画としてはすごい面白い映画で、なんとディズニーキャラがヒトラーをからかうっていう作品なんですよ。しかも作られたのは1943年。世界大戦真っ只中でヒトラーがバリバリ現役の時です。

まぁ当時アメリカとドイツは敵国同士ですから別におかしなことでもないんですけどね。面白いのはそこじゃなくてストレートにヒトラー基ナチス・ドイツを煽ってるところです。

当時のディズニーは、基本的に時代を感じさせない娯楽色が強いアニメーションを作っていました。長編でも、短編でもです。(まぁ時代背景もありアニメーションに戦時色が濃く反映されたシーンとかもあるっちゃあったんですけど。)だから、誰が見ても不快に感じないような、寧ろ笑いが起こって感動するような映画作りをするのがディズニーでした。

ですが、この『総統の顔』はガッチガチのプロパガンダ映画になっています。ナチス・ドイツの支配下で無理矢理労働させられるドナルド・ダック、精神崩壊の末見る悪夢、全ての悪夢から覚め「アメリカ人で良かったわ~」と安堵する夢オチ展開等々・・・・・・。

この映画を初めて見た時、確か中1でした。当時は、「正直ディズニーとかクソかよ。なぁ~にが夢と魔法じゃ!!あほくさ。ジブリ一択よ?俺は。」とウォルト・ディズニーに一族滅ぼされた?ってぐらいディズニーそのものをめちゃくちゃ馬鹿にしてたんですが、『総統の顔』を見てその気持ちが一変。そこには一般的なディズニーのキラキラした世界観とはかけ離れた、泥臭い人間同士が皮肉り合った負の歴史がしっかりと描写されていました。

「これは本当にディズニーか?」

嫌に誇張されて描かれたヒトラーや昭和天皇の似顔絵。耳を支配するヒトラー称賛の声、バッドトリップのような悪夢。これらを見て私は興奮しました。何故なら、「ディズニーは綺麗事だけでできた胡散臭い作品だけでない」と分かったから。この映画から私のディズニーオタクは始まったとしても過言ではありません。ちなみにこの作品は43年度のアカデミー賞アニメ部門も受賞しています。今なら「天下のディズニーがこんな映画!ユルサン!」どころの話ではないと思いますが、時代が時代ですからね。

最高なのは今までのこと全てが夢だと気づき「僕はアメリカ人でよかった」と発言するドナルド・ダック。これってこの作品の中で最大の皮肉だし最大の不謹慎だと思うんですよね。

だって「アメリカ人でよかった」ですよ?これをもし当時のドイツの人や、ドイツに支配されていた国の人々が聞いたらショックじゃありません?この発言の中に「アメリカ人である=最高」という傲慢が見え、他国を否定しているように感じるんですよね。アメリカの文化を押しつけるような、大きなプロパガンダに見えません?いかにも帝国主義っぽい。(あくまで個人の感想)

ただ、これっていうのは現代の考え方で、当時の人からすると「アメリカ人でよかった」は「当たり前じゃん」と納得する材料にしかならないんですよ。だって当時は皆自分の国が1番だって疑わなかったから。

私は、こういう皮肉とか社会性に基づいてこの映画を好きになったんですけど、ちゃんとアニメーションとして見てもすごく面白いんですよね。

例えば、背景。ナチス・ドイツをテーマにしてるのでもちろんヒトラーは出てくるんですけど、それ以上に出るのが鉤十字マーク。鉤十字と言えば当時のナチスのシンボルマークで、今じゃ描くことすら禁止されているような代物ですよね。『総統の顔』では、それが至る所に登場します。壁紙の模様、木や塀の形、時計の針までもが鉤十字です。この辺はしっかりアニメーションですよね。リアルにはないものを描き、あたかも空間全体がナチスに支配されているかのように見せる。普通の形の木を描いてもいいとは思うんですが、あえて鉤十字にすることで恐怖や存在感を与えることに成功してるんですよね-。

また、この映画は音楽もかなり特徴的ですね。冒頭から飛び込んでくるリズムの良い「ハイル!ハイル!」というかけ声。一度聞けば耳に残るキャッチーな音楽。これはオリヴァー・ウォーレンス作詞作曲の「総統の顔」です。映画と曲のタイトルが一緒ですね。これは前紹介した『ラテン・アメリカの旅』の中の「ブラジルの水彩」も同じ用法で使われてました。

この「総統の顔」という音楽、まぁバカ売れしまして。実は元々この映画の題名は「ナチランドのドナルド」というものでしたが、「総統の顔」がバカ売れしているのを見て制作側が急遽変更したんです。ここもすごくディズニーっぽいなー。売れてるから変更する。まぁ、この映画が国に財政支援してもらって作った映画だからっていうのもあると思いますが。

で、この映画でドナルド・ダックは一躍アメリカのヒーロー的存在になりました。国のアニメーションを作るときはドナルドに任せろ!となったわけですね。ですので、ドナルドの短編はこれ以外にも政治色は強く反映されているものが沢山あります。『ラテン・アメリカの旅』もそうですし。(短編ではないが)

あぁ、後、『総統の顔』以外にもお馴染みのディズニーキャラは出てこない反ナチス映画をディズニーは3作品ぐらい作ってます。掘ってみたら案外ディズニーも黒い部分ばっかッスよ。そういうとこでハマったんだけどね。


終わり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?