遠くで貴女の幸せを祈ってます。

拝啓 

貴女からは多くのことを教わりました。皆さんからすれば当たり前のような常識やマナーも沢山教えてもらいました。本当にありがとうございました。

貴女と出会っていなければ、きっと大学に行く事も無ければ正社員として働いている今もなかったでしょう。

…今から数年前。碌でもない毎日を送っていた学生時代。ただただ怠惰な毎日を消化していくだけの落伍者でした。というのも僕は少し前までお付き合いをしていた女性と相手方の家族の理由で一方的に別れさせられた事をずっと引きずっていました。今でも宗教に対して好意的ではないのはそれが原因です。

そんな時に紹介されたのが、貴女でした。その頃の貴女は、その美貌と気の強さから周りから孤立していて両親が共働きだった事も相まって、毎日日替わりで男性を家に連れ込んでいたそうですね。そんな貴女を見兼ねた知人から「2人にフツーの恋愛をしてほしい」って紹介されて2人は出会いましたね。

貴女と過ごした時間はとても心地良く楽しかったものでした。その日々の中でも助け合った事もあったかと思いますが、どちらかというと僕の方が貴女に救われていました。人を好きになる事の楽しさや大切さ、多くのギフトをもらいました。

貴女は、高校卒業後は就職という選択肢を決めていましたね。そして、それは将来の夢のために早く資金を貯めたいという理由もしっかりとありましたね。僕はというと将来の夢も希望も具体的に無かったし、生きることにも固執していませんでした。だから、貴女のようにしっかりと夢に向かって生きてみたいと思い、進学という選択肢を取りました。

春を迎え、2人は別々のステージへ進みました。貴女は仕事で毎日大変な思いをしていましたね。日々の電話で、貴女が”仕事は大変だけど、助けてくれる同僚がいる”という話を聞きながら、僕は歯痒さと同時に一つのことを決めました。

ある夜、そのまま朝まで貴女と電話していましたね。そして、2人で始発の横須賀線に乗って揺られること数十分。鎌倉駅に降りた時、まだ冬の寒さが春の朝を覆っていましたね。そして、2人でいつものように他愛無いことを話しながら由比ヶ浜まで歩きましたね。その道中で、貴女から仕事でいつも助けてくれる同僚の男性について僕から沢山質問したかと思います。そして、砂浜で朝陽を迎えていた時には、別れ話を切り出していたと記憶しています。

これからは貴女の幸せを遠くで祈ると。

僕も徐々に忙しくなってきた毎日を過ごしていて、お互いにすれ違うことも増えてきましたし、寂しい思いをさせてしまうことも増えていたこともあり、それだったら貴女が好意を持ちはじめた職場の同僚と付き合ったほうがいいという理由でした。

数日後に、貴女から無事に同僚と付き合えたという報告をいただきましたね。その報告を受けて、僕らはメールも電話も一切断つことにしましたね。

あれから数年。貴女が結婚するということを、貴女を紹介してくれた知人から聞きました。本当におめでとうございます。

僕は未だにロクでもない人間で、大切な誰か1人さえ幸せにできない男ですが、貴女に教えてもらった数々の事は忘れずに生きています。

人生のドン底にいた僕に差した一筋の光、そんな貴女に出会えて良かったです。

貴女の夢が叶ったあかつきには、僕は服装をバシッとキメて花束でも片手に会いに行きます。カウンター席の隅っこで貴女が入れたコーヒーを飲みながら、あの頃の思い出話そしてお互いの今までの事を話しましょう、夕陽が差し込んでいた店内にも夜の帳が下りるまで。

敬具

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