『木綿のハンカチーフ』で先に愛が尽きたのは女性の方だと思った話
『木綿のハンカチーフ』という曲は、タイトルだけ知っていて、実際にちゃんとフルコーラスで聴いたことは今までありませんでした。
お世話になっているスナックのお姉さんの十八番がこの曲で、歌っている姿と声にすっかり惚れ込んでこの曲自体も大好きになりました。
改めて、この曲の歌詞を考えてみると色々と思うことがあったので、ここに書いていきたいと思います。
この曲を聴いた最初の感想
都会に出た男がどんどん都会に染まっていって、最終的に地元に残った彼女と別れを切り出した失恋ソング。と思ってました。
地元に彼女を残しているのに、この男はなんて身勝手なんだろう、それに比べて女は今も変わらずに男を待ち続けていて健気だなあ、と感じていました。
でも、改めて歌詞を眺めると、愛が冷めたのは彼女の方ではないか?とモヤモヤしてきた最近です。
では、歌詞を引用しつつ、整理していきたいと思います。
1番
彼氏→彼女で交互に繰り返されるのが特徴のこの曲、当時は斬新な歌詞だったそうですね。
【考察】
都会へ出る彼氏は、地元の彼女へのプレゼントを探そうとする。
きっと、地元には無いような都会のオシャレな街中にあるお店で素敵なプレゼントを探そうとしているんですね。
一方、地元に残った彼女が一番求めたものは、自分へのプレゼントよりも都会に出ても変わらない今まで通りの彼氏だったのでしょう。
夢見る都会に彼女への素敵な“モノ”を探そうとする彼氏と都会に行っても彼氏が変わらない“コト”を求める彼女、絶妙な対比ですね。
2番
【考察】
都会に染まりつつある彼氏、多忙なのか地元に帰ることもできずにいるけど、彼女の事は想い続けている。だからこそ、都会で流行りの指輪をプレゼントしようとしている。
一方で、彼女はずっと地元に残っているわけで、この曲の中では彼女にとって変わったことといえば地元に彼氏がいないことくらいなのでしょう。
ダイヤよりも真珠よりも輝いている大切な思い出として、彼氏とのキスが彼女の心に残っているのですね。
ここでも、都会で流行りの指輪や星のダイヤそして海に眠る真珠という“モノ”と彼氏とキスした“コト”という対比。
3番
【考察】
都会に染まりつつある彼氏、今までは彼女の容姿について何も言っていなかったのに、ここで初めて彼女が未だにすっぴんで口紅もつけないままなのか、と聞いています。
きっと、華やいだ都会で多くの女性と出会って、思い出の中の彼女の顔を思い出したのでしょう。そして、彼女は相変わらず昔のままなのだろうかと思ったのですかね。
彼女にも化粧をするように求めているわけでは無いけれど、スーツ姿の自分の写真を見せることで、彼女も少しは変わってくれないかと遠回しに言っている気がしますが。
そして、彼女はそんなスーツ姿の彼氏よりも、昔2人でいた時の寝転んだ彼氏を思い出し、スーツ姿の彼氏もいいけれど、その当時の彼氏が好きだったと言います。
ここで気になったのが、
「草にねころぶ あなたが好きだったの」
というフレーズです。
きっと、彼女はもう彼氏が都会に染まったことを感じたのでしょう。そして、もう地元にいた彼氏には戻らないことも。
つまり、ここで実は彼女の方が彼氏への愛が尽きたのではないか、と思いました。自分が好きだった彼氏はもういない事を知りつつも、彼氏の身体を労っているところに、彼女の人としての優しさを感じます。
都会に染まったスーツ姿の彼氏と草に寝ころぶ彼氏という対比ですね。
大豆田とわ子と三人の元夫
本題とは少しズレますが、少し前に放送されたドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」にて、このセリフが出てきます。このセリフって深いですよね。
このセリフの前までは、色々と蟠りがあった(男性陣が一方的に悪い)男女6人でしたが女性陣から男性陣に対して、「どこが好きだったのか?」を切り出しました。
そして、会もお開きになった帰り道で、一見すると蟠りも無くなったように男女で仲良さそうに帰る姿を見て、残された男性が「他の二人がそれぞれ相手と向き合うみたいです」と言うと、同じく残された女性が上記の台詞を言います。
このセリフを聞いて、「木綿のハンカチーフ」の歌詞を思い出しました。
「草にねころぶ あなたが好きだったの」
3番の歌詞のところでも書きましたが、ここで上記の大豆田とわ子のセリフと絡めてみると、“草にねころぶ”姿が“好きだったの”とは、彼女が昔からの恋を片付けようとしているのかなと思えますよね。
4番
【考察】
都会で過ごす時間が増えていくたびに、薄れつつある彼女との思い出。そして、都会の楽しさに離れられずに彼女のいる地元へは帰れないと告げる。地元に帰らずに都会で生きる事を選んだ彼氏。
そんな彼氏へ彼女が最後に求めた“モノ”は、「木綿のハンカチーフ」。ハンカチは漢字で書くと“手巾(てぎれ)”、つまり別れを連想させるものですね。この曲では、別れるという単語を出さずに木綿のハンカチーフでそれを表しているんですね。
結局、都会に染まって彼女を忘れてつつも帰ろうとしない“コト”を許してほしい彼氏と許す代わりに最後にお別れのプレゼントとして木綿のハンカチーフという“モノ”を求めた彼女。
最後の最後に、お互いに求めていた“コト”と“モノ”が逆転し、都会に染まった彼氏と昔と変わらない彼女という対比。
この曲で彼女が彼氏に求めたのは、「彼氏が都会に染まらないこと」と「木綿のハンカチーフ」だけです。でも、この二つだけで、離れ離れになってしまった二人が最後には別れてしまう、というストーリーが凝縮されています。
最後に
いかがだったでしょうか。こんな素敵な曲を作り上げた松本隆先生と筒美京平先生そして太田裕美さんに改めて敬意を表したいと思います。
橋本愛さんは女優として大好きなので一緒に載せちゃいました。
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