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聖子ちゃんの歌声に、「質」なるものの正体を思う

このご時世、テレビからは再放送的なものが流れてくることが多いわけですが。

先日、ある歌番組をつけていたら、2年程前に松田聖子さんがその番組に出演して披露した「あなたに逢いたくて」の歌唱シーンが流れてきまして。

ほほう、と目を向け耳を傾けてみて思ったのが、歌い方が非常に独特なんですね。

歌声は若い頃の聖子ちゃんと変わらず、でも歌自体は当時よりうまくなっていて、かといってめちゃめちゃ上手なわけでもなく、なんだかクセのある節回しをしたりしている。

ふむ。

虚実は定かではありませんが、一緒にテレビを観ていた家人(職業:ミュージシャン)の話では、「聖子ちゃんは聖子ちゃんらしさを保つためのボーカルレッスンをしているらしい」とのこと。

▼わたしが観た歌番組とは違いますが、公式YouTubeより

キャラクターの質を保つには工夫が必要

聖子ちゃんは「松田聖子」というキャラクターです。
ここでは、聖子ちゃんは50代になった今でも、ブレることなく「松田聖子」というキャラクターの質を保ち続けている、という見方ができます。

長年活躍している人気歌手の多くは、年を重ねるにつれ、若かった頃のフレッシュな輝きが薄れていくかわりに、新たな魅力として、堂々とした佇まいや説得力を放つようになります。
存在感を見せつけるためには、それなりの歌唱力が求められる。
それは聖子ちゃんにもあてはまることだと思います。

かといって、ボイトレを頑張りまくった挙げ句、歌唱力が上がりすぎて、「松田聖子」というキャラが変容してしまったかのように見えてはいけない。
質はそのままに、自然なかたちで、経年変化していく必要があるのです。

その結果が、今回わたしが観た非常に独特な歌い方だったのだと思います。
たしかに、あの感じは聖子ちゃんらしかった。

質とは、必ずしも高めなくてはならないものではない

広辞苑無料検索というサイトで「質」という言葉を調べてみると、こうありました。

わたしたちはよく、「質を高める」「質を上げる」という言い方をします。
ためしに今、「質を高める」とGoogle検索してみたら、「仕事の質を高めるコツ」みたいな記事がバンバン上位に出てきました。

そういう場合の「質」という言葉が表すものは、広辞苑に載っている2番目の意味、つまり、内容、中味、価値、に相当します。

ですが、「質」には広辞苑の1番目の意味(生まれつき、天性)や3番目の意味(物がそれとして存在するあり方、性質)もあります。
いずれも、そのものらしさ、ってことですよね。

自分や誰かの「質」をもっと尊重する

わたしたちは日頃、前者の「質」を追い求めがちですが、後者の「質」をもっと尊重する、ということをしていったほうがいいように思います。
つまり、自分自身や他の誰かの「その人らしさ」を尊重するということです。

なぜなら、前者の「質」には、上がる、下がるといった外側からのジャッジがつきものだけれど、後者の「質」(=その人らしさ)には、本来、上も下も、高いも低いもないから。もちろん、いいも悪いもありません。

ひとつだけシンプルにあるのは、その「質」が好きか嫌いか、ということ。
わたしたちは「その人らしさ」に理由もなく惹かれることもあれば、生理的に受け付けない、なんてこともある。

それってすごく個人的かつ一方的な感覚で、他の誰かからいいとか悪いとかジャッジされるものでもないし、反対に、他人様の好き嫌いに口を出すものでもない。

だって、誰かの「質」に対して好きとか嫌いとか感じるのもまた、その人の「質」なのだから。

「その人らしさ」を否定する権利はない

では、自分や相手の「質」をもっと尊重するとはどういうことか。
簡単に言うと、自分や相手がその人らしくあることを、邪魔しないということです。

例えば、あなたの「質」が誰かの「質」を気に入らないなら、相手からそっと離れればいい。
あるいは、あなたの「質」が誰かから否定されるようなことが起こったならば、ときには周りの力も借りて、あなたはあなたの「質」を安全に守ったほうがいい。

もちろん、誰かの言動(doing)があなたに明らかに害を与えたならば、相手に抗議する権利はあります。
でも「その人らしさ」(being)が気に入らないからといって、相手に直接文句を言ったり、周りに悪口をばらまいたりする権利はないのです。

そういう線引きの大前提を、きちんとわかっておきたいなと思ったのでした。







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