見出し画像

4月/出会い

 私、花崎一華!夏猫高校に通う高校一年生!特にやりたいこともないけど、普通に学生生活送って、普通に大学行って、普通に就職して、普通に結婚して、普通に子供産んで、普通に暮らすんだ〜!
 って、普通ってなんじゃコラァ!


……はぁ、
 こんなの普通一人でやるノリじゃないよ……。ていうかいつもの私こんなんじゃないよ、どうしちゃったの私……。
 とまあ、高一の春、私は登校初日からかつてない謎パワーで教室に脳内お花畑を展開していた。高校生って響きだけでもカッコ良いもんね。舞い上がっちゃうのも仕方ないよね。
 中学と違い、地元を離れての通学だったので(地元の高校偏差値高すぎ!)、友達はおろか、知り合いすらまともにいない。

「まじて、どうしよ……」

 私は、まだ馴染まない机に突っ伏しそうになるが、現実を見るために謎パワーの一部を使って教室内を見回す。
 周りの人はもともと友達!というのが多いみたいで既に話に花が咲いている。(一方、私は一人で花を咲かせている。クソっ!)同中同士でくっつき、そのグループ同士で別中のグループとくっつく。圧倒的マジョリティー。

「マイノリティーに居場所は無いのですか!」

 心の中の一華市民達がデモをしている。しかし、マジョリティー代表の花崎市長は動じない!これは市民による市長への転覆計画なのだ!


「……花摘みにいってこよ」

 席を立つと、不意に背中を軽く叩かれる。

「……ちょっと、待って。私もついてって良い?」

「は?」

---

「いやー、まじでアリガト!私方向音痴で、トイレの場所わかんなかったんだよねー」

 そういって彼女は、今私の少し後ろを歩いている。いや、なんだコレ。どんな状況?
 中学ではみんなでトイレ行くってのはあったが、(私は嫌いだったが)高校でもやるか?ていうかここまでの方向音痴って本当にいるんだな……。

「そう言えばまだ名前言ってなかったよね、私、皆月春香!よろしくね!」
「よ、よろしく皆月さん」

「春香でいいよっ!」

 ウザ。

「次、あなたの名前!」
「え?あーと、花崎一華です」

「いちかってどう書くの?」
「数字の『一』に華やかの『華』」

「なるほどねー。めっちゃいい名前じゃん!」
「そ、そう?」

「そうだよ!苗字と名前で二つもはなが付いてる!綺麗でいいじゃん!」
「ありがとう。春香の名前も今の季節にピッタリでいいよね」

「いや、名前はそうだけど、苗字の『みなづき』ってもともと六月のことだよ?もしかして知らなかった?」

 知っとるわボケ。雰囲気で言ったんだよ。いいじゃん「春香のとこだけ春っぽいね」で。もう。

「はぁ〜……」

 私達はなかなかウマが合いそうに無かった。
 でもこれが、私達の出会い。そして、春香は後に私の人生でも一番の親友となる事を、この時の私はまだ知らない。今は「私の後ろの席のちょっとウルサイ人」。今はね。

---
4月7日

高校の初登校日だった。教室のみんなは既に輪ができていて話しかけづらかったけど、皆月春香という子が話しかけてくれた。ちょっとウザいけど嬉しかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?