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【博士のこと。】国が博士向けSNSをつくる?! JGRADの説明会に参加してみた。

9月のある日、文科省の方からメールが届きました。

……ん?
文科省???

頭の中に?がいっぱい浮かびつつも、メールを読み進めてみると、「博士人材データベースJGRAD登録者向けのSNSグループの構築について説明会をします」という内容が書かれていました。

そういえば登録したような、してないような……。

私と同じく博士課程を修了した旦那さんに聞いたところ、「そんなメール来てないよ。迷惑メールじゃないの?!怪しすぎる……。」と言われる始末(メール開けちゃったよ)。

なんだか不安になったので、調べてみたら、確かにJGRADは文科省が運営している博士人材データベースであることが分かりました(怪しいとか言ってごめんなさい)。

国が運営する博士向けのデータベースで、SNS構築かぁ。
登録者も多くなりそうだし、おもしろそうだなぁ。

と思い、10月某日、説明会に参加してみました。

博士人材データベース JGRAD とは?

私と同じように、登録したけど存在を忘れている方も多いと思われるJGRAD。

JGRADのHP https://jgrad.nistep.go.jp/

JGRAD(Japan Graduates database、博士人材データベース)は、文部科学省の国立試験研究機関が運営している情報基盤プラットフォームです。

2022年4月現在、博士人材データベースへのご登録は、博士人材データベースの参加大学における2014年度以降の博士課程在籍者のみとなっております。

JGRADのHP "JGRADに登録するには"より引用(2022.10.14)

現在のところ参加大学は52大学で、博士課程在籍時に初期登録しておくと、博士課程修了後も継続利用できるようになるみたいです。

登録者がJGRADでできることは、以下の通りです。

・登録者の方の専門分野にマッチした最新の求人公募情報を配信
・博士人材のロールモデルや社会での活躍に関する情報を提供
・他の博士課程修了者の職業動向等の情報を紹介
・研究人材双方向コミュニケーションサービスresearchmapとの連携

JGRADのHP "JGRADで何ができる?"より抜粋(2022.10.14)

民間企業に就職した私としては、博士人材のロールモデルが興味深かったです。
登録者が思いの外多いのと、キャリアに関するインタビュー記事を読めるので、博士人材がどんなキャリアを歩んでいるのかを知ることができます。
博士人材のキャリアパス情報はなかなか手に入らないので、貴重な情報源です。

JGRADのHP "JGRADで何ができる?"より引用(2022.10.14)

説明会に参加してみた!

JGRADについて理解を深めたところで、「博士人材データベースJGRAD登録者向けのSNSグループの構築についての説明会」に参加しました。

説明会のURLにアクセスしてみると、既に200人以上の方が参加していました。100人もいたらいいんじゃない?って個人的に思っていたので、正直びっくり。海外の方も多く参加されており、チャット欄では英語が飛び交っていました。

説明会では、JGRADに関わる文科省の方が、「JGRADの目的と課題、そしてそれを解決するためにSNS構築を行う」ということを1時間ほどで述べていました。ここではその内容すべてを紹介できないので、内容をぎゅっと要約したものが下記になります。

JGRADの目的

科学技術に関する国の施策では、博士人材について次の2つを重視。

・社会のイノベーションを期待される博士課程の学生を支援したい
・博士課程を終えた後のキャリアパスを透明化したい

そこで、博士人材の現状を理解するために、博士人材データベースJGRADを構築。登録者がJGRADにキャリアパスや研究内容などの情報を入力したり、また博士人材に関する調査アンケートに記入したりすることで、不透明な博士人材の現状を明らかにしたい。

JGRADの課題

博士人材の現状を把握するため、登録者数を増やしたい、また登録内容を随時更新してもらいたい。しかし次の2つの課題があり、博士人材の現状を捉えきれていない。

・博士課程在籍時から登録できるが、登録者数が少ない
・登録してもキャリアパスを更新しない人が多い

課題の解決策

登録者数の増加と継続的な情報入力を促すためのメリットとして、博士人材が利用できるSNSを構築したい。登録者が「博士人材同士が繋がれること」にメリットを感じ、JGRADを継続利用する博士人材が増えると考える。

それって、SNS構築で解決する問題なの?

ここに書くことは、あくまで私個人の意見です。

SNSを構築したい理由を聞いたとき、「登録者数を増やしたい・継続的な入力を促したい」という課題に対して、解決策が飛躍していると感じました。

博士人材のSNSを構築する、というのは魅力的です。
JGRADは大学と直接コンタクトして作られているため、SNS構築が実現すれば、これまでにない巨大な博士コミュニティを構築できるはず。
なかなか面白い試みと思います。

ですが、JGRADへの登録とキャリアパスなどのデータ更新は、毎日行うものではないはずです。

JGRADを知ったときに登録。
所属機関や企業に就職または退職する際にデータ更新。
研究者であれば、研究論文の発表など、研究が進んだ際にデータ更新。

これら一時的な行為のために、日々運営が必要となるSNSを構築するというのは、労力が見合っていないと思いました。


「登録者数を増やしたい・継続的な入力を促したい」という課題があるのなら、「なぜ登録しないのか?なぜ更新しないのか?」を深堀した方が良いと思います(既に取り組まれていたらごめんなさい)。

情報収集をするために、情報の登録・更新を促すシステムなので、登録者からすると確かにメリットを感じにくいです。ただ、SNS構築に踏み切る前に、まずは外部への働きかけを行っても良いと思います。

「JGRADの説明会をする」というだけでも、私のようにJGRADの存在を思い出し、データを更新してみようと思う人もいます。外部にJGRADのことをアピールするだけでも、一定の効果はあるのではないでしょうか。


また、大学や企業に博士人材への入力を働きかけるという手段もあるはずです。

・博士課程進学時に、大学側から学生にJGRADへの登録を促し、大学もしくはJGRAD側で登録したか確認する。
・博士課程卒業時に、大学側から学生に卒業後のキャリア情報の入力を促し、大学もしくはJGRAD側で確認する。
・就職先変更時に、所属先からキャリア情報の更新を促すよう、人事に気にかけてもらう。

これらは私の思いつきですが、現状でもできることはあると思います。

関係各所への負担が増えてしまいますが、大学などの所属先単位であれば、博士人材は多くないので対応できる気がします。また民間企業についても、博士人材を積極採用する企業に博士人材が就職する傾向が強いので、企業側もJGRADの趣旨には一定の理解を示してくれるのではないでしょうか。


他にも、JGRADはリアルタイムな情報を必要とするものではないので、年に一度、一定期間で業務職員を雇って情報収集を任せる、という方法も考えられます。

SNS運営のために業務職員を雇うような案が出ていましたが、その予算があるのなら、登録・更新を促すために職員を雇うこともできるんじゃないかと思いました。

JGRADの今後に期待

辛口な意見を載せましたが、「博士人材の現状を把握することは重要である」ということには賛同します。博士人材SNSも面白い試みと思います。

ただ、課題に対する解決策としてのSNS構築には、う~ん……と思った次第です。

この記事を書くにあたり「まずは自分が情報更新しないとダメでは!?」と思い、JGRADに4、5年ぶりにログインして、キャリア情報を入力しました。
初めてまじまじと見ましたが、インタビューなど思いのほか閲覧できる情報が多く、意外と面白いです。

博士人材のみなさん、一度JGRADを覗いてみてはいかがでしょうか!?
そして、将来の博士人材のためにも、登録・更新しましょう!

JGRADのHP https://jgrad.nistep.go.jp/


博士人材がもっと活躍できる社会となりますように!

Dr.りけ子(Tsugumi)

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