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P&Gの研究開発の採用プロセスが凄かった話

P&Gの採用プロセス

10年ほど前に新卒就活していた時の話だが、P&Gの採用プロセスが強く印象に残っている。ちなみに面接で落ちているので、負け犬の遠吠えの側面はある。

消費財メーカーにとって、採用プロセスは将来の顧客を作ることにもなるので、落ちても嫌な気分にさせないのは重要である。

そういう意味では、最終的に競合他社に入社したものの、今でもP&Gのファンとなっているので、マーケティング戦略としても成功しているのだろう。

採用プロセスは
①書類選考 → ②web試験 → ③グループディスカッション → ④面接→ ⑤最終面接
だったと記憶している。

中でもグループディスカッションと面接が、他の国内企業の採用とは全く違うものであり、強烈に印象に残っている。

グループディスカッション

グループディスカッションというと、ネットではタイムキーパーがどうとか進行役がどうとか、しょうもない役割分担の話がある。

実際、あのしょうもないグループディスカッションで人事は何を見てるんだろうか。正直なところ、社会性のかけらもない人を落とすくらいの効果しか無さそうだが、それなら集団面接で十分ではないか?話が逸れてしまった。

P&Gのグループディスカッションは、オリジナル?のシミュレーションゲームをチームで行うというものであった。

参加者はその場でルールを教えてもらう。初見で理解するには結構難しく、???となりながらもスタートした。

やりながら考えて進めるしかない。今振り返ると、実際のビジネスにおいても完全に情報が揃い、理解するまで待ってもらえることはない。今ある情報を基に、判断する。このことが問われていたのかもしれない。

ルールはざっくりこんな感じ。10年前、かつ選考プロセスで緊張していたので、間違ってるかもしれないが、雰囲気を感じ取ってもらえればと思う。

・ チームごとに制限時間終了時の所持金を競う
・ 最初はグループごとに色んな特徴のある商品を持っている
・ たまにカードが配られて、他社技術を買ったり、新技術の開発したりして新商品ができてくる
・ その中から、どの商品をいつ市場に投入するかを決める
・ ゲーム開始直後から全チームの売り上げとシェアがリアルタイムでモニターに映される
・ 売り上げが手元のキャッシュに反映される

これを初対面の5人のチームで意思決定しながら、進めることが求められる。

ハッキリ言ってP&Gの志望者はクセが強く、意見を押し通そうとする人が多い。大変なゲームをやりながら、自分のアピールをしなければならないので尚更だ。かなり大変だった記憶がある。

自分達のチームは1番最初に市場に商品を投入する戦略をとった。どんな商品が売れるかわからないので、まずは様子を見ようとする戦略だ。

待ってても埒が開かないのでとりあえずゲームを進めようと思い、提案したらみんなノーアイデアで通ったのだ。リーダーシップ!?

結果、商品の売り上げは伸びず、固定費?のようなもので、キャッシュは減っていき、開発も進められないため新商品の投入も出来ず、後手後手に回ってゲームとしては完敗に終わった。

他のチームは、ある程度の売り上げがあり、さらに改良商品を投入していたり、シェアNo. 1の商品と同じようなものを出して、キャッシュを貯めてから別の商品を投入していたり、と中々面白いゲームだったと思う。どこかの人事研修とかで使われているんだろうか?

ゲーム終了後、各チーム代表者が総括を話し、採用担当者と個人面談を実施して、終了した。

結果は合格で、次の面接選考に進むことができた。

P&Gの選考では圧倒的にリーダーシップが求められていると考えていたので、そのアピールを十分にできたことが勝因だったんだろう。

複雑なルールを聞いて半ば放心状態にあるチームメンバーの思考を揃えるように議論を促した。

ゆっくり商品開発するか、早く市場導入するか。

どちらもリスクがあるが、限られたゲーム時間を考慮し、戦略として素早く市場導入しようと、チームで合意形成したことが評価されたと聞いた。

今思い返しても、色んなことがわかる秀逸なグループディスカッションだったと思う。

そして、重要なのが研究開発職の選考プロセスなのに、マーケットを意識させていることである。

時には二番煎じでビジネスを進めてキャッシュを獲得することもあると知った。

今の自分の会社でもみんなでワイワイやってみたいくらいだ。

半日かけて5人と面接

外資系では割と普通なのかもしれないが、面接は人事部とではなく、採用部署で実施される。人事は最終確認のみである。

ミスマッチな人に来られても困るのだから極めて合理的だと思うのだが、なぜ日本企業では出来ないんだろうか。希望者多すぎ?誰が来ても大して変わらない?また話が逸れてしまった。

面接ではシャンプーを開発する研究室に呼ばれた。有機合成をしていた大学の研究室とは異なり、ガラス張りのラボとオフィスを見学させてもらう。所狭しと髪の毛のサンプルがある異様な光景であった。

それでもなんて素敵な輝いている世界なんだ!と学生ながらにドキドキしたのを覚えている。

面接は部署のメンバー4人と部署のリーダー1人とそれぞれ1対1で行う形式だった。一人当たり30分くらいだった気がする。見学とか含めて合計3時間くらいだったか。

インド人、中国人、日本人とまさに多様性の高い構成で、全て英語での会話であった。

英語は不得意だが、必死にホワイトボードとかを活用して、食らいついた気がする。なによりもやる気だと。

例えば、用意されていたお茶のペットボトルを見せられて、この商品に異物混入の問題が発生した。どうする?みたいな質問もあり、課題解決のプロセス自体を見られている気がした。

一方で、有機化学的な自分の研究に投資できるように、全く専門の違う自分に英語で説明してというリクエストもあった。

採用基準はおそらく自分達のチームに入れて一緒に働けるか?ということに尽きるんだろうが、こんなにしっかりと採用選考されたのは生涯一回だけである。合否に関わらず、ここまで時間をかけてもらえれば納得である。

「P&Gからは何を持っていってもらってもかまわない。人とブランドさえ残れば、いつでもP&Gは復活できるだろう」(P&G元会長であるR・デュプリー氏の1948年の言葉)

この言葉に端的に表れている同社の人材獲得戦略を身に染みて実感した経験である。人材がいないと嘆く企業はここまで出来ているだろうか。

結局、この面接で落ちてしまった。専門違いx英語の壁を突破できなかった。最初の選考ということで、就活慣れもできておらず、喋る内容も陳腐だったに違いない。

かなり凹んだ記憶がある。それでもなんとか立ち上がり、同業の会社に入社した。その話はまた別の機会にしたい。

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